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INTERVIEW

愛希れいかさんインタビュー「全てを受け入れる強さを表せたら」▷NHKドラマ10『大奥 Season2』

宝塚退団後、舞台にドラマに大活躍の愛希れいかさんが、NHKで放送中のドラマ『大奥 Season2』第16回からスタートした幕末編で13代将軍・徳川家定役で出演し、注目を集めています。来年1月には日本初演ミュージカル『トッツィー』の出演も控える愛希さんに、ドラマの見どころや『トッツィー』への意気込みを聞きました。

――『大奥 Season2』への出演が決まった時のご感想を

以前にもドラマ化されていますし、有名な作品なので、原作もドラマも知っていて、あの時代を男女逆転の世界で描くなんて、おもしろいなと思っていました。出演が決まって改めて原作を読ませていただき、今の時代だからこそ、作品に込められたメッセージがより響くなと感じました。男女逆転の世界が生まれるきっかけとなった「赤面疱瘡」という疫病も、コロナ禍を経験した今だからこそ響くものがありますし、ジェンダーを超えた友情も今の時代にとても合っています。ただ、映像作品でこのような大きな役をいただけることには驚きましたし、どうやって演じようか不安もありました。

写真提供:NHK

――演じるに当たって苦労した点はありましたか

漫画の家定の顔と私自身はかけ離れていると感じたので、内面でどう表現していくか、心を開いていく過程をどれくらい表現できるかを心がけました。私はもともと舞台人で、舞台ではどんな役にもエネルギーがあって、そのエネルギーを発散していきます。でも、家定は生きることを諦めているので、エネルギーを削っていくというか、特に父親が生きていたときは、これでもかというくらい生気をなくすよう心がけました。そこからいろんな出会いを得て、エネルギーをもらっていく。家定の強さは、全てを受け入れて生きていく強さ。発散するというより、秘めている何かが出ていたらいいなと思います。原作ファンやSeason1のファンにも楽しんでいただけたらいいな、と台本と原作を照らし合わせながら、自分の感覚を信じて挑みました。

――男女逆転の世界に混乱はなかったですか?

文字だけ見ると、歴史上の有名な人物の性別が逆転しているのでちょっと混乱するかもしれませんが、宝塚で男女の垣根を越えていろいろ演じてきましたので、私はすんなりと受け入れられました。本来なら男性が優位に立つ世界で、女性が言うから説得力がある場面をはしばしで感じましたし、女性が後継者を産む道具とされている時代に、さらに政治をやり、国を治めているわけですから、責任もプレッシャーも大きいですよね。ただの道具とされるのもつらいけれど、責任が伴うのは、それはそれでつらいんだなと感じました。どの将軍も皆、すごく悲しいんです。

――家定も悲しい将軍のひとりですね

はい。父から性的虐待を受けた上、母からは毒をもられた過去があり、他人、特に男性に対して恐怖心やトラウマを持っています。繊細な表現をしなければいけないし、どれほど辛かっただろうか、と想像するだけでも難しい役でした。

彼女の人生を大きく変えたのは、(後に老中となる阿部)正弘(瀧内公美)との出会いです。側にいてくれて、家定との女性同士の友情、友情を超えた愛というものがすごく描かれています。「そなたのために将軍になったんだぞ」というせりふもありますが、その存在はとても大きかったと思います。瀧内さんと共演させていただくのは初めてでしたが、すごく仲良くしてくださって…。正弘と一緒にお菓子作りをするシーンは、明るいシーンがなかなかない中、とても幸せでした。楽しさが出ているといいなと思います。

――もうひとり、家定を支えたのが古川雄大さん演じる大奥総取締の瀧山です

瀧山も、正弘と同じく苦しいときに側にいてくれる存在です。勉強と読み物だけが友達で、人を信じてこなかった家定が、親身になって守ってくれる自分の分身のような存在ができることによって、人と会話し、心を通わせられるようになっていく。瀧山の扱いがどんどん雑になっていくんですが、それも2人の関係性を表していて面白かったです。古川さんとは共演させていただく機会も多く、何も話さなくても心が通わせられたと思います。

――そして、家定は福士蒼汰さん演じる胤篤(天璋院)を正室に迎えます

胤篤に出会って、家定は初めて自分が女性であることに喜びを感じたと思います。彼の考え方に、国を治める将軍としても刺激を受けたと思いますし、その生き方を尊敬し、やはり好きだという気持ちを強くさせてくれた。福士さんは『Season1』では万里小路有功を演じていらっしゃり、そっくりという設定で胤篤を演じるのですが、あの時とは違う一面が見られるんじゃないかなと思います。福士さんとの共演も初めてでしたが、とても明るく、気さくな方でした。私は胤篤のちょっとおちゃめな部分がとても好きです(笑)。

――家定は周りに支えられ変わっていきますが、愛希さんにとって支えになる人は?

プライベートでは家族とにゃんこが何よりの支えですが、お仕事では、自分を見たいと言ってくださる人たちが、いつも支えになっています。見に来てくださる人がいないと舞台は成り立たないですし、お客さんがいるといないでは、自分たちのモチベーションも劇場の雰囲気も全然違います。見たいと言ってくださるファンのおかげで自分は舞台に立てる。今回は映像作品になりますが、見てくれる人がいるからがんばれるのは同じです。大奥への出演が発表されてから、ファンの方から「楽しみにしている」と聞き、うれしかったです。

――9月には、シアタークリエで『M.クンツェ & S.リーヴァイの世界~3rd Season~』に出演されました

クンツェさん、リーヴァイさんの作品は、大好きな作品、大好きな曲ばかりです。『エリザベート』にしか出演していないので、呼んでいただけたのは光栄でしたし、歌ったことのない曲に挑戦させてもらえて、勉強になりました。一路さん、和音さん、新妻さんという共演したことのない方とも共演させてもらえて、皆さんの歌に対する思いを聞けたのも刺激になりました。こういう風に歌えたらいいなと思える方たちばかりで、しかも、偶然ですが、皆さんお母さん! 母親としての強さや大きさも感じました。私は子供がいる役、しかも自分と年齢の近い子供がいる役をやることが多いんですが(笑)、母親って素敵だな、と感じられた得難い経験でした。

――来年1月には、東京・日比谷の日生劇場で『トッツィー』が始まります

ブロードウェイでの上演はコロナ禍ですぐクローズしてしまい、私も生で拝見できていないんですが、とても明るい、テンポの良いミュージカルだと聞いています。コメディーではありますが、テンポの良さの中にちゃんとメッセージがある。私もまだそこまで読みくだけていないのですが、作品の持つメッセージがきちんと伝わればいいなと思います。曲もすごく良いのですが、難しいので、どこまで挑戦できるかドキドキしています。何よりも、育さん(山崎育三郎さん)の演じるマイケルは素敵で、きっとおもしろくなるだろうなと思います。ぜひ、見にいらしてください!

取材・文/道丸摩耶(産経新聞社)
撮影/酒井真大(産経新聞社)
ヘアメイク/杉野智行(NICOLASHKA)
スタイリング/山本隆司(style)


愛希れいか(Manaki Reika)

元宝塚歌劇団月組トップ娘役。2018年、ミュージカル『エリザベート』のエリザベート役をもって宝塚歌劇団を退団。退団後、東宝版『エリザベート』(2019年)エリザベート役で活動を開始。同年11月、ミュージカル『ファントム』でクリスティーヌを演じた。2021年6~7月、『マタ・ハリ』でマタ・ハリ役に挑み好評を博す。2022年3~4月ミュージカル『マリー・キュリー』日本初演で、マリー・キュリーを演じ大きな注目を集めた。2024年1月~3月『トッツィー』に出演が決定している。

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Information

NHKドラマ10「大奥 Season2」幕末編

毎週火曜[総合・BS4K]22:00~22:45

■幕末編
瀧山(古川雄大) 徳川家定(愛希れいか) 阿部正弘(瀧内公美)
/和宮(岸井ゆきの) 徳川家茂(志田彩良)/胤篤・天璋院(福士蒼汰)

【原作】よしながふみ
【脚本】森下佳子
【音楽】KOHTA YAMAMOTO
【主題歌】Aimer 「白色蜉蝣」

公式サイト

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