大人気オンラインゲームを歌舞伎化し、大きな話題となった歌舞伎『刀剣乱舞』が今年7~8月、『刀剣乱舞 東鑑雪魔縁(あずまかがみゆきのみだれ)』として東京・新橋演舞場と福岡、京都で上演されることが決定しました。松也さんにとっては初めて自身でプロデュース、演出、主演を勤めた思い入れのある作品。待望の第二弾についての意気込みをお伺いしました。
――第2弾が決まったときの感想を教えてください。
第1弾の企画を考えているときから、自ら新作歌舞伎を作るのならば、ずっと第2弾、第3弾と重ねていかれるような息の長いシリーズものにしたいと思っていました。その願い通り、こうして再びみなさまにご覧いただけることになって、とてもうれしいです。この『刀剣乱舞』という素晴らしいコンテンツが、私の役者人生にとってとても大きな存在になっていると感じています。
――「刀剣乱舞」は非常に愛されているコンテンツです。改めてこの題材と向き合うことの重みについてお聞かせいただけますか。
おっしゃる通り、熱い愛情をお持ちの方がたくさんいらっしゃいますので、最初は緊張感がありましたね。これまで2・5次元の舞台化など、様々な展開があったなかで、歌舞伎ならではの見せ方をしなければならない。ただ奇抜にするのではなくて、歌舞伎ファンの方からも、『しっかり歌舞伎をやっているな』と思っていただかなければならない。歌舞伎特有の表現にもチャレンジしましたが、どの様に受け入れていただけるのか、とても怖かったですね。
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――いざ上演を迎えると、原作ファンや歌舞伎ファンからもたくさんの感動の声が届きましたね。シネマ歌舞伎として全国の映画館で上映されるという展開もありました。
はい、受け入れていただいて、チャレンジしてよかったなと。そして、同時に、次にチャレンジするときの幅を広げていただいたとも感じました。
――今回、松也さんは三日月宗近に加え、羅刹微塵(らせつみじん)の二役を演じられます。羅刹微塵は原作には登場しないキャラクターで、気になるところなのですが…
二役を演じること自体は歌舞伎ではよくあることなのですが、羅刹というキャラクターは、みなさん想像できないですよね(笑)。おっしゃる通り、歌舞伎版のオリジナルキャラクターです。今回は新たなオリジナルストーリーとなりますが、三日月宗近がすべての話を進めて、物事を解決していく流れのままでは面白くないなと。歌舞伎の幅の広さをお見せしたくて。そういう存在を原作がある作品に対してぶつけてみるというのも、大きな挑戦のひとつだと思っています。
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――今回は舞踊もさらなる見せ場になると伺っています。
それもチャレンジですね。歌舞伎はとても懐が広くて、お芝居にくわえて、ショー的な要素も同時にみせることができる上演形態なんです。登場するキャラクターも増えますし、ショーアップしてさらに華やかになった舞踊もお楽しみいただけるのではないかと思います。
――前作にも登場した、髭切、膝丸、同田貫正国、小烏丸の五振りに加え、新たに鬼丸国綱(中村獅童さん)、陸奥守吉行(中村歌昇さん)、加州清光(尾上左近さん)の三振りが加わります。豪華な新キャストが話題を集めていますね。
本当に素晴らしい方々に参加していただき光栄です。歌昇さんは、新春浅草歌舞伎でご一緒させていただいていたときに僕の楽屋に遊びに来てくださって、ほんとうかウソかはわからないですが、『刀剣乱舞に出させてくださいよ!』と…(笑)。そういうことを言っているとほんとうに出てもらうからね!?と(笑)。左近さんは、出演したいととても真剣にご自身からおっしゃってくださって。ありがたいですよ。
獅童さんには、2015年の新作歌舞伎『あらしのよるに』のめい役に抜擢していただいたときから、ずっとご恩を感じていまして。当時はまだ、大役を任せていただけるような立場ではなかったのですが、そこを獅童さんが引っ張ってくださいました。刀剣乱舞の前回の公演ではお声でご出演してくださったのですが、今回こうした形でご登場いただけることになって、本当に嬉しいです。

――「あらしのよるに」が大きな転機だったのですね。
はい、当時、僕はまだまだ修行中の身でしたが、いつかは自分も先輩方のように新作歌舞伎をつくっていきたいと。大なり小なり新作歌舞伎に携わらせていただきながら、その難しさや重要性を感じていました。新作歌舞伎というのは、最近始まったことではなく、常に古典作品も大切にしながら新しい演目をつくることに取り組んできていました。ですが、新作歌舞伎をつくるには、まず自分自身がそれにふさわしい役者にならねばならない。とても大きな目標となりました。
――初演から2年。その間、ご自身の変化などはありましたか。
うーん…。どこが変わったなどは自分ではわからないですので、ただただ今の自分が感じていること、面白いと思ったことをぶつけていくしかないと思っています。その中で気を付けていることがありまして、『冷静に前のめりになる』こと。情熱をもって突き進んでいく一方で、道を見失わないように、何が必要なのか、周りの声に耳を傾ける冷静さ、俯瞰的な視点も常に保つようにしています。
――今回は新橋演舞場での東京公演にくわえ、福岡・博多座公演、京都・南座公演もあります。楽しみにされている全国の方々に向けて、メッセージをお願いします。
刀は、全国津々浦々に名刀があり、ゆかりがあるもの。今回登場する刀剣男士たちも、それぞれ九州や京都にゆかりがある刀がいます。そのゆかりの土地で上演する機会をいただけたというのは、とてもうれしいです。ぜひとも、それぞれの街まで足をお運びいただければと思います。また、この「歌舞伎 刀剣乱舞」自体も、第3弾、第4弾と重ねていく息の長いものになればと思います。
取材・文/塩塚 夢(産経新聞社)
撮影/黒澤義教
尾上松也(ONOE MATSUYA)
1985年1月30日生まれ、歌舞伎俳優。
1990年5月、『伽羅先代萩』の鶴千代役にて二代目尾上松也を名乗り初舞台。2015年からは若手が中心となる新春浅草歌舞伎において『魚屋宗五郎』魚屋宗五郎役等の多くの大役を勤め、一昨年は、新作歌舞伎『刀剣乱舞 月刀剣縁桐』にて主演と演出も手がけた。
歌舞伎のみならず蜷川幸雄演出の騒音歌舞伎(ロックミュージカル)『ボクの四谷怪談』(2012)お岩役、ミュージカル『エリザベート』(2015)ルイジ・ルキーニ役、劇団☆新感線『メタルマクベス disk2』(2018)ランダムスター/マクベス魔II夜役など舞台出演も多数。また映画『源氏物語』(2011)『すくってごらん』(2021)やNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(2022)、TBSドラマ『半沢直樹』(2020)、CXドラマ『ミステリと言う勿れ』(2022)、Netflix『Demon City 鬼ゴロシ』(2025)の演技も話題に。5月27日からの「五大浮世絵師展」の音声ナビゲーターも務める。他にもバラエティ番組など幅広く活躍。
Information

歌舞伎『刀剣乱舞 東鑑雪魔縁』
原案:「刀剣乱舞 ONLINE」より(DMM GAMES/NITRO PLUS)
脚本:松岡亮
演出:尾上菊之丞、尾上松也
出演: 尾上松也、中村歌昇、中村鷹之資、中村莟玉、尾上左近、澤村精四郎、上村吉太朗、市川蔦之助、河合雪之丞、
喜多村緑郎、大谷桂三、中村獅童 ほか
【東京】2025年7月5日(土)~27日(日) 新橋演舞場
【福岡】2025年8月5日(火)~11日(月・祝)博多座
【京都】2025年8月15日(金)~26日(火)南座
主催:歌舞伎『刀剣乱舞』製作委員会
製作:松竹株式会社
■一般発売:2025年5月25日(日)10:00〜
チケットホン松竹 WEB ほか各プレイガイド
TEL0570-000-489(10:00-18:00)
東京 03-6745-0888
大阪 06-6530-0333