こんにちは!小林唯です。そろそろ梅雨入り? すでに梅雨入りした地域もあるとか?!
皆さま、いかがお過ごしでしょうか。

4月に発表されましたが、この夏、ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』に出演することが決定しました。なんと!フランキー・ヴァリ役です。
プロデューサーの方に「オーディションを受けてみてほしい」と言っていただいた時は正直、どうしようと最初は悩みましたね。まさか自分がフランキー・ヴァリを演じるなんてまったく想定していなくて、あまりにも未知数だったので。
でも、チャンスがあるならそりゃ受けたほうがいいでしょ!と腹を括りました。そこから練習し始めて、もう途中からは「ここまで来たら外したくない、絶対に取る!」という熱い闘志がフツフツと。しかし、人生って本当に分からないものですね。初演の頃は、こんな凄い役を出来るのは中川晃教さん(アッキーさん)しかいないと思っていました。花村想太さんの時も僕はまだ劇団にいて、わぁ〜二人目がデビューしたんだ〜って、もう完全に他人事でした。まさか三人目のバトンが自分に回ってくるなんて……不思議な気持ちです。
そこで、今回はフランキー・ヴァリ役の大先輩である中川晃教さんに率直にお聞きしたいことをいろいろと質問させていただきました!
フランキー・ヴァリを演じるということ
小林 こんにちは! 今日はありがとうございます。僕、『小林唯のGood Vibes』というコラムをやっていまして……。
中川 うん、素敵なコラムですね〜。
小林 ありがとうございます(照)。今回はアッキーさんにいろいろ質問させていただきたいと思います。さっそくですが、フランキー・ヴァリさんご本人にお会いしたことがあると伺いましたが、どんなお話をされたんですか?
中川 僕が「ハ〜イ!」って会いにいったら、「おう! 君が日本のフランキー・ヴァリかい?」って英語で言われて。「じゃ、写真を撮ろうか」って。
小林 え、それはどういう機会だったんですか!?

中川 彼の来日コンサートを観に行って、終演後にお会いしたんです。とっても優しい人でしたよ。開口一番にそんなふうに言われて、僕のことをちゃんと知ってくださっているんだ、と嬉しい驚きでした。
小林 凄いなあ。では、アッキーさんがフランキー・ヴァリ役を演じる時に、一番意識していることは何でしょうか。
中川 う〜ん…、自分が持ち合わせているものすべてで合格した役なので、もう自分このまま!です。
小林 フフフフ。
中川 ある意味、自然体でね。でもやっぱり一番は、このチャンスを自分のものに出来た! (フォー・シーズンズのメンバーでもあり、音楽プロデューサーの)ボブ・ゴーディオさんに認められてこの役を手中に収めた!ということが何よりの自信になったので、それ以上のことはなかったですね。
小林 そうですよね、承認されたわけですから、もう自分の思うままに?
中川 僕の時は一曲歌うにもすごく細かく……小林くんもやったかもしれないけど、ここは地声、ここはファルセット、トワング、ミックス……と、この一曲をどの声をコントロールして歌い分けているか、そこを本国から審査されていると思ってトレーニングしたんですよ。ただ、それを一回歌うことは出来たとしても、毎日の本番の舞台で、感情が込み上げてくる芝居の流れの中で歌えるかというと、またそれは別物なので、やればやるほど深いな〜と思いますね。気持ちで歌うことは大事だけれど、それだけじゃない、コントロールする力という点も意識して演じているかな。
小林 なるほど。フランキー・ヴァリという実在の方を演じるには、やっぱり声質だったり、その再現性というのはある程度必要だと思うんですよね。でも物真似とは違うものだし……そこはどう考えていらっしゃいますか?
中川 それについては、初演の時に『グランドホテル』の演出家のトム・サザーランドさんがイギリスから舞台を観に来てくださって、たまたまその話題になったんですよ。僕が「フランキー・ヴァリさんの役を演じるために、トワングという発声を勉強した」と言ったら、トムさんが「フランキー・ヴァリさんの声質をトワングと表現することは、失礼にあたるよね」と。トワングという発声を用いて表現するんだけども、それは“発声の形”の呼び方に過ぎなくて。「フランキー・ヴァリさんの声は、形ではない」と。その一言によくよく考えさせられましたね。
小林 (大きくうなずく)
中川 本人を演じる場合、どこにリスペクトを持つかが自然と滲み出て来るんだと思っていて。フランキー・ヴァリさんと重なる自分を、どう見いだせるのかと。僕、フォー・シーズンズの音楽をそれまで全く聴いていなかったから、まずは自分の感性でこの音楽を捉えるところからスタートしました。
小林 そうなんですね。声の質感を似せていこう、とかは?
中川 そこはテクニックだった。コントロールすることから始めて、次第にそのコントロール・テクニックがいい塩梅に力が抜けてきて、今は、フランキー・ヴァリをやる時はこの声、っていうものがもう見つかってきている。それは、トワングという発声を一つ学んだことで自分の歌の表現の幅が広がったから、この声を習得出来たんですよね。僕は、真似することが悪いことだとは思わない。その選択もあると思う。
小林 勉強になります。
二人の共通点は水泳にあった!
小林 アッキーさんは、初演ではシングルキャストでやっていらしたので本当にハードだったと思いますが、喉のケアはどういうふうにされていたんですか?
中川 コレ(と、おもむろにスプレーを出したので一同爆笑)。プロポリススプレー。

小林 やっぱり! アッキーさんと言えばコレですよね。僕も今、プロポリススプレーを使っています。
中川 あとは生姜茶。スライスした生姜を煮出して、そこにマヌカハニーを入れて、紅茶みたいにして飲んでいます。出来合いのものじゃなくてちゃんと煮出すところから作ると、やっぱり辛味が違うんですよ。
小林 吸入もされますか?
中川 します。でもね、僕の声の、最終的な調整は絶対に水泳だと思います。いろんなボイストレーナーの先生からいろんなレシピをいっぱいもらうけど、何が自分らしいレシピなのか探っていって、声に水泳のマリアージュに行きつきました。
小林 そう、そこも伺いたかったんです! 僕も水泳を結構バリバリにやっていたんですよ。小中と、選手コースに入っていました。
中川 うわ〜すごい! フォームが綺麗そうだよね、教えてほしい〜。僕は18歳くらいから自己流でやり始めて。
小林 独学で、ですか?
中川 うん、小林くんのやっていた種目はクロールですか?
小林 僕は平泳ぎと、バタフライを。
中川 なるほど〜、このしっかりした体はそこから来てたんだ。
小林 アッキーさんは稽古の前に泳ぎに行かれるとか言ってましたよね?
中川 稽古の前と、本番前と本番の後にも行っています。
小林 疲れませんか!? 僕、泳いだ後はすごく疲れちゃうんですよ。
中川 疲れるよね。最近はほどほどになりました(笑)。
小林 それはウォーミングアップとして? あ、それで声にも影響が?
中川 そう、呼吸が通るようになるんです。泳いでから発声するのと、泳がないで発声するのでは息の通る道がまったく違う気がする。体も、筋肉が柔らかくなるんですよね?
小林 そうなんですよね。では、次の質問です。よく「NO MUSIC NO LIFE」とか言うじゃないですか。アッキーさんにとっての「NO〇〇 NO LIFE」は……?
中川 最近僕ね……お米が大好きなんです。(一同笑)「NO RICE NO LIFE」。炭水化物はあんまり摂らないほうが〜とか聞くけど、お米を食べたほうが調子がいいことがわかったの。肌質とか改善された気がするんです。そうなるとご飯に合うおかずが必要で、小魚のふりかけとか明太子とか、ああいうおかずがなければ生きていけない。
小林 ハハハ、意外な答えでした。僕は今、「NO筋トレ、NO LIFE」です。
中川 そうなんだ! 筋トレで、重い筋肉はつけないほうがいいって言うよね。
小林 本当にそうなんです。やり過ぎるのはダメですよね。
知れば知るほど相思相愛!?
小林 面と向かって伺うのも恥ずかしいですが、今回僕が新たに参加して、一緒にフランキー・ヴァリを演じていくことについて、率直にどう思われているのかなと……。
中川 本当に今の僕たち、雪原のように真っ白な気がします。
小林 雪原!?
中川 そう、小林くんを知れば知るほど、惹きつけられていくんですよ。今おいくつですか?
小林 32歳です。
中川 若いですね!
小林 若いですか!?
中川 30代に入ると、「20代のそれまでとは違う」といった決心みたいなものを持たざるを得ないと思うんだけど、あまりそういうことに惑わされていない感じがして。だから若く見えるけど、32歳と言われれば、やっぱりそれだけの年数のキャリアを感じさせてくれるし。それはたぶん、一年間に立つステージ数が僕よりも断然多かったからだろうなと。毎日ステージに立ち続けるってタフじゃないと出来ないことだよね。
小林 ああ〜、劇団にいた頃はそうでしたね。
中川 そういうタフなところを、僕はどんどん好きになっていってるんだと思う。今回の作品では一緒に舞台に立つことはないかもしれないけど、舞台袖で見続けることは出来るからね。
小林 ありがとうございます! では、最後に、いつもコラムで【Good Vibes★Song】を紹介しているんですが、アッキーさんにもぜひ、フォー・シーズンズ(The Four Seasons)の楽曲の中からGood Vibesを感じる曲を選んでいただけたらと思います。
中川 了解! 僕のGood Vives Songは『Beggin’』ですね。最近いろんな人が、若い人も「カッコいい!」とカヴァーしているんですよ。『Beggin’』って許しを乞う曲ですよね。前に進むために自分の弱さとしっかり向き合い、それを許す。今の自分を乗り越えるんだ!という力をくれるのが『Beggin’』という曲です。
■AKINORI’S Selection― Good Vibes★SONG―
小林 僕がフォー・シーズンズから選んだGood Vives Songは『Sherry』です。実は子供の頃から家の中でかかっていて、ずっと聴いていた曲だったんです。あのサウンドが耳に染み付いているので、今回ひさびさに聴いた時は昔の小林家の記憶が蘇りました(笑)。フランキー・ヴァリさんご本人特有の「シェ〜!」の、ちょっと喉頭が下がっているような不思議な音の深み、そこが最高にカッコいいと思うし、あれが再現できれば……!と思うんですよね。
■YUI’S Selection― Good Vibes★SONG―
……ということで、アッキーさんと貴重な対談をさせていただきました!
僕、わりと人見知りなほうなんですけど、アッキーさんは気さくに話しかけてくださるので、安心しておしゃべりが出来ました。そのお人柄が素敵ですし、何より我々演者にとっては一つの道標を作ってくれている方でもあると思います。どんどん好きになる、と言ってくださったのが嬉しかったです! アッキーさんからGood Vibesをたくさんいただけたので、『ジャージー・ボーイズ』、頑張っていきます!
取材・文/上野紀子(演劇ライター)
撮影/齋藤佳憲(産経新聞社)
中川晃教(Nakagawa Akinori)

宮城県仙台市出身。1982年11月5日生まれ。
シンガーソングライター、俳優。
2001年、⾃身が作詞作曲の「I Will Get Your Kiss」でデビュー。2002年ミュージカル『モーツァルト!』でタイトルロールを演じ、第57回⽂化庁芸術祭賞演技部⾨新⼈賞、第10回読売演劇⼤賞優秀男優賞、杉村春⼦賞を受賞。2016年にはミュージカル『ジャージー・ボーイズ』にて、フランキー・ヴァリ役を演じ、第24回読売演劇⼤賞最優秀男優賞を受賞。近年の出演作に【舞台】『フランケンシュタイン』、『SONG WRITERS』【TV】「青春ミュージカルコメディ oddboys」(テレビ東京系列)など。
2025年6月12日~19日に、中川晃教「MUSIC LAB & MUSICAL WEEK 2025 」八ヶ岳高原音楽堂が開催予定。2025年8月『ジャージー・ボーイズ』へフランキー・ヴァリ役での出演が決定している
小林 唯(Kobayashi Yui)

兵庫県出身。1993年2月27日生まれ。
大阪市立咲くやこの花高校演劇科卒業。在学中に『サウンド・オブ・ミュージック』を観てミュージカルに感銘を受ける。2013年劇団四季研究所入所。同年9月に『コーラスライン』で初舞台を踏み、その後『キャッツ』(スキンブルシャンクス役)、『アラジン』(アラジン役)、『パリのアメリカ人』(アンリ・ボーレル役)、『美女と野獣』(野獣役)など数々の作品で主要な役を務める。2023年に退団後、ミュージカル『この世界の片隅に』に水原哲役で出演、さらに帝国劇場クロージング公演『レ・ミゼラブル』アンジョルラス役に抜擢。幅広い音域での高い歌唱力を武器に、今もっとも活躍が期待される若手スターのひとり。2025年8月『ジャージー・ボーイズ』へフランキー・ヴァリ役で出演すること決定している。
Stage Information
ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』

脚本:マーシャル・ブリックマン / リック・エリス
音楽:ボブ・ゴーディオ
詞:ボブ・クルー
演出:藤田俊太郎
日程:2025年8月10日(日)〜9月30日(火)
会場:シアタークリエ(東京都千代田区有楽町)
出演:
【Team BLACK】
フランキー・ヴァリ:中川晃教
トミー・デヴィート:藤岡正明
ボブ・ゴーディオ:東啓介
ニック・マッシ:大山真志
【Team YELLOW】
フランキー・ヴァリ:小林唯
トミー・デヴィート:spi
ボブ・ゴーディオ:有澤樟太郎
ニック・マッシ:飯田洋輔
【Team GREEN】
フランキー・ヴァリ:花村想太
トミー・デヴィート:spi
ボブ・ゴーディオ:有澤樟太郎
ニック・マッシ:飯田洋輔
【New Generation Team】
フランキー・ヴァリ:大音智海
トミー・デヴィート:加藤潤一
ボブ・ゴーディオ:石川新太
ニック・マッシ:山野靖博
※その他、キャスト&スタッフは公式サイトへ