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COLUMN

【 SPECIAL(#32)】音楽から迫るミュージカル『ラグタイム』|東啓介と聴活♪

東京・日比谷の日生劇場で9月9日に開幕する日本初演のミュージカル『ラグタイム』のお稽古が始まりました。タイトルにもなっているラグタイムは、19世紀末から20世紀初頭にアメリカで流行した黒人音楽の一ジャンルのことですが、この作品に携わるまで、ぼくはラグタイムを知りませんでした。今回の聴活はSPECIAL編として、演出の藤田俊太郎さんに、ミュージカル『ラグタイム』の音楽や演出プラン、ぼくが演じるヤンガーブラザー役についてお聞きしました。


ミュージカル『ラグタイム』製作会見より。(左から)演出/藤田俊太郎さん、コールハウス・ウォーカー・Jr./井上芳雄さん、ターテ/石丸幹二さん、マザー/安蘭けいさん(撮影/吉原朱美)
製作会見記事はコチラから

東(敬称略) 今回の作品では、ユダヤ人、黒人、白人と3つの人種が登場して、それぞれで歌の感じが違っていますよね?

藤田(同) ここ20年くらい、音楽で人種を表現するミュージカルの試みは多く行われています。登場人物や作品のルーツとは何かを表現者が追い求める中で、ルーツを音楽で表現するのはミュージカルのひとつの形といってもいいでしょう。今回は、とんちゃん(東さん)が言ったみたいに、3つの人種がそれぞれの音楽を持っているのが特徴で、19世紀末から20世紀初頭のアメリカに夢のように現れたラグタイムがベースになっています。これまでも音楽のひとつの表現としてあった拍の強弱を変える「シンコペーション」の表現を、より新しい形で作り出したのがラグタイムです。

 ぼくが演じるヤンガーブラザーは白人ですが、ラグタイムを生み出した黒人からも、別の音楽を持つユダヤ人からも影響を受ける役です。

藤田 影のキーマンですね!

 (笑)

藤田 この作品では、白人だけが役に名前がないんです。これは、20世紀初頭の白人の価値観でできている人物の集合体という意味と、匿名の人物を表現しているというメタファーが込められているからといわれています。

 確かに、ひとつの役じゃない感じがします。歌でいうと、白人ではあるのですが、途中から黒人のコールハウス(井上芳雄さん)に寄っていく。それに伴って歌の感じも変わっていき、音楽が混合していったりするんですよね。

藤田 3つの音楽や人種が音楽で融和する瞬間があって、それがすごく魅力的です。ヤンガーブラザーは市民代表で、20世紀を生きる名もない青年の代表でもあります。ヤンガーブラザーが夢を見つけたり目標を定めたりする姿に、お客さまは自分を投影できると思います。そういう意味でもキーパーソンです。ちなみに、小説では無口で神経質な青年という感じに描かれていますが、舞台では俳優が登場人物に人格を与えますから、とんちゃんによって、柔らかさ、おおらかさ、優しさを持つヤンガーブラザーが、稽古場で少しずつ生まれつつあります。

ヤンガーブラザー/東啓介さん(写真提供/東宝演劇部)

 ありがとうございます!

藤田 皆の思いを背負っている役ですからね。稽古では役者がどんどん役を掘り下げていくものですが、とんちゃんは今回、違うアプローチだね?

 急に行動に移したり、急にやめたり、急な気持ちの変化がある役なので。集合体という話も聞いて、ひとりの人間を掘り下げていくのは違うかなと。ヤンガーブラザーは人種を超えていくひとりの人物ですが、白人でありながら、分断を暴力で突き進んでしまうコールハウスと、言葉による共感を広げるユダヤ人のエマ・ゴールドマン(土井ケイトさん)の両方と関わりがあり、二面性も持っています。でも、世の中には分からないことがいっぱいあって、それが当たり前。だから、理由や答えを探すだけでなく、そういうものなんだと受け入れるのもありだと思うんです。

藤田 今回、出演者によって、役の考え方や作り方が全然違って、それがとてもおもしろいです。ヤンガーブラザーの歌では、2幕の歌に「He wanted to say」(彼は言いたかった)というナンバーがありますね。ユダヤ人活動家のエマの演説に影響を受けて、ずっと言えなかったこと、言いたかったことを歌にしています。伝えるすべがないまま心の中にあった豊かなことばが、歌で表現できる。エマの価値観を理解し、共鳴している、そんな想いを吐露するすごく素敵な曲です。

 他の方が歌う曲も、素敵なものばかりです。特に、最初の曲は10分くらいある大ナンバーで、これがなかなかに難しいんですよね。歌もですが、振付が計算し尽くされていて、あんなにも分かれている振付は初めて見ました。分かれたり合わさったり、全体的にはグレーな感じもあって…。

藤田 グレーという表現はおもしろいね。3つの人種を表現するのに、今回はビジュアル的には衣裳の色を分ける選択肢を採りましたが、振付のエイマン・フォーリーさんの力を借りて、民族を身体的にも表現しているんです。スタートとラストは民族の違いが明確なんですが、ストーリーの中では色を探している状態。まさにグレーです。特にヤンガーブラザーは、白人だけれど、そうではない価値観を手に入れている。まさに激動の時間が始まっていく価値観や華やかさの代表です。

 ぼくは白人役だけですが、アンサンブルさんは3つの人種をやるんですよね。大変だと思いますけど、表現としてはすごくおもしろい。なんだか、渋谷の街みたいです。

藤田 まさにその通り。渋谷みたいなお話なんですよ。現代の日本はどこに行っても価値観がせめぎ合っていて、皆が自分のルーツが何かを考えながら生きていると思います。『ラグタイム』は遠い過去のお話ではない。人は他者と分断と融和を繰り返しながら、ヤンガーブラザーのようにどんどん変わっていく。まさに、今起きている物語だと感じます。葛藤する場面の多い、難しい作品のように思うかもしれませんが、楽しく華やかに踊る場面も多く、未来や夢といったものがテーマです。裏拍が多用されるラグタイムのように、物事には表と裏がある。この作品を通じて、人生は明るいんだ、喜びにあふれているんだ、と伝えられればうれしいです。

構成・文/道丸摩耶(産経新聞社)



東啓介(Higashi_Keisuke)
1995年7月14日生まれ。2013年デビュー。『5DAYS 辺境のロミオとジュリエット』『命売ります』『Color of Life』などの作品で主演を務める。近年はミュージカル界の新星として頭角を現している。2020年11月にはファーストソロコンサートも開催。最近ではミュージカル『イン・ザ・ハイツ』(神奈川・大阪・名古屋・東京公演)やミュージカル『マタ・ハリ』に出演。映像作品でも、NTV「ウチの娘は、彼氏が出来ない‼︎」やTBS火曜ドラマ「ファイトソング」などに出演し話題に。最近では、TX木ドラ24「チェイサーゲーム」やMBS「闇金ウシジマくん外伝 闇金サイハラさん」に出演。2022年10月〜12月ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』にボブ・ゴーディオ役で出演。2023年1月〜2月ミュージカル『ザ・ビューティフル・ゲーム』、4月〜5月舞台『二次会のひとたち』に出演。9月~10月ミュージカル『ラグタイム』に出演する。
8月20日(日)からスタートするABCテレビ(関西)ドラマ『●●ちゃん』に高橋彰吾役で出演!
東啓介がセルフプロデュースした写真集「何色」発売中! 詳細はAmazon

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Stage Information

ミュージカル『ラグタイム』

脚本:テレンス・マクナリー
歌詞:リン・アレンズ
音楽:スティーヴン・フラハティ
演出:藤田俊太郎

出演:石丸幹二、井上芳雄、安蘭けい
遥海、川口竜也、東 啓介、土井ケイト、綺咲愛里、舘形比呂一、畠中 洋、EXILE NESMITH ほか

公演期間:2023年9月9日(土)〜30日(土)
会場:日生劇場
席種・料金:S席15,000円、A席10,000円、B席5,000円
※未就学児入場不可

※10月大阪、愛知公演あり

公演公式サイトはこちら

2023年9月12日(火) 産経新聞社 半館貸切公演
A席販売中!(残席わずか)

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