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【製作会見】ミュージカル『ラグタイム』▷「音楽にあふれたすばらしい作品を届けたい」

20世紀初頭の米ニューヨーク(NY)に生きるユダヤ人、黒人、白人の3つのルーツを持つ人物と家族を描いた日本初演のミュージカル『ラグタイム』が9月9日、東京・日生劇場で開幕します。7月24日に行われた製作会見では、娘の未来のためラトビアからNYにやってきたユダヤ系移民、ターテ役の石丸幹二さん、新しい音楽「ラグタイム」を奏で新時代の到来をめざす黒人ピアニスト、コールハウス・ウォーカー・Jr.役の井上芳雄さん、正義感にあふれ人種の偏見をもたない裕福な白人家庭の母親、マザー役の安蘭けいさん、演出の藤田俊太郎さんが作品への思いや意気込みを語りました。

冒頭、「この作品を(NYで)見た時から、いつか関わりたいと思い続けて四半世紀たちました。やっと日本で上演することがかないました」と作品に賭ける熱い思いを明かした石丸さん。1998年か99年ごろ、NYでさまざまな名作ミュージカルを見た中で唯一、「出てみたい」と感じたのが『ラグタイム』だったといいます。

その理由は作品の持つ音楽の力。「ミュージカルはやはり冒頭が勝負。冒頭でいろいろな民族が出てくるんですが、音楽と演技がマッチしていて、音楽にいろいろな答えがある。民族によって音楽がまったく違い、その融合や並びも非常に考えられています。ものすごいものを浴び、何とか加わりたいという思いが巻き起こったんです」と「震えが止まらなかった」という当時の観劇体験を振り返りました。

「この作品を日本で上演できるのは、一ミュージカルファンとしても幸せ」と語る井上さんは現在、帝国劇場で『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』の公演真っ最中。何とか『ラグタイム』に関わりたい思いから、「『ムーラン・ルージュ』を8月いっぱいやって、『ラグタイム』は9月の頭に開くという歌舞伎俳優並みのおかしなスケジュール」で本番と稽古の同時進行をこなします。

安蘭さんは「すばらしい音楽とお話のミュージカル。すばらしい共演者と一緒に藤田さんの演出を受けられることに期待でいっぱいです」と語ります。マザー役が「女優なら誰もがやりたいような役」であることに加え、「幹二さんや芳雄くんがいらっしゃる夢の共演。演出の藤田さんは、蜷川さん(故・蜷川幸雄氏)の作品に出させていただいたときは演出助手でしたが、立派な演出家になられて…」とキャスト、スタッフへの期待ものぞかせました。

その藤田さんは作品について、「とても美しくて楽しくて、心躍るような音楽にあふれた、そして胸を強く締め付けるような痛みを伴った素晴らしい作品」と語ります。これまでに、演出のオファーをもらったとき、すばらしいキャスト、スタッフによるカンパニーと知ったとき、始まったばかりの稽古でスタッフの熱量を感じたときの計3回、感動のため震えたといい、「初日には4つ目の震えがやってくるんじゃないかな」と予告していました。

役者の肌の色を変えるのではなく、衣装や歌、体の動きなどでそれぞれの民族の「らしさ」を表現するのが、今作の特徴のひとつ。特に「歌」は民族ごとに異なる印象になっていて、井上さんは、「ひとつの信念が貫かれて、作品として音楽がまとまっている。白人のリズムと黒人のリズムを合体させたものがラグタイムなのだと聞き、タイトルからして、とても音楽的な作品」と解説します。
ユダヤ人役の石丸さんは、「ぼくが歌うパートには、あちらの国の音楽的要素が組み込まれていて、難解で簡単には歌えない。自分の体に入ったらユダヤの人の魂の叫びも入れつつ表現できるかな」と語ります。音楽だけでなく、体の動きも使って、ユダヤ人らしさを表現するそうです。

白人役の安蘭さんは、「白人の音楽は三拍子で表されていて、私が歌う曲は優雅。最後のフレーズで突然、四拍子になって、そこからターテの曲になる。母親の気持ちが少しずつターテに向いていくことが音楽で表現されていて、音楽を読み解くとおもしろい発見がたくさんあります」と教えてくれました。
藤田さんによると、切り絵作家から映画監督になっていくターテのバックグラウンドから着想を得て、切り絵や写真を舞台上に浮かび上がらせる演出プランを検討しているといいます。

蜷川さんの演出作品で、初めて藤田さんと会ったという石丸さんと安蘭さん。石丸さんは、今回の藤田さんの演出に「蜷川イズム」を感じるといいます。藤田さんにとって、蜷川イズムとは「舞台をどう構成していくかという構成力。そして、どれだけ作品、役者を愛するか」だといいます。
また、石丸さんと井上さんはこれが初めてのミュージカル共演ですが、藤田さんに言わせると「3人の雰囲気は優しさにあふれている」。藤田さんは、「この作品は『分断』が大きなテーマとなっていますが、それ以上に音楽の喜びを描いている。映画監督のターテのように他者とものを作り、映画の向こうにいるお客さんが劇場のお客さんにシンクロしていくのが、この作品の最終着地点じゃないでしょうか」と分断の先に見えるものに期待を示しました。

出演する3人から最後に語られた抱負は次の通り。

安蘭さん「多様化とうたわれている時代ですが、まだまだ差別はあります。この作品を見て、差別とは何か、区別とは何か、ハラスメントとは何かについて、もう一度考え直せる機会になればいいなと思います。私は正義感が強い母性豊かな母親役で、愛がつまったお話なので、たくさんの愛を持って帰っていただきたいです」

井上さん「演劇の持つ使命のひとつに、過去に起きたこと、自分たちが知らなかったことを今のお客さんと共有する側面があると思いますが、今回はそれがミュージカルでお届けできます。ターテが最後に見る夢は理想郷かもしれないけれど、イメージを持ってここから進んでいかないと大変なことになる。意味のある素敵な作品です」

石丸さん「ターテという役はチャップリンにかぶるんです。ターテもチャップリンのように、映画を使いながら世の中に出ていく。新しいものに翻弄され、私たちはそれを乗り越えてきたのに、今またAI(人工知能)が世の中を席巻し、同じことが起きています。我々がどんな夢を持ち、どうやって戦い、乗り越えていくのかをこの作品が提示すると思います」

取材・文/道丸摩耶(産経新聞社)
撮影/吉原朱美

Stage Information

ミュージカル『ラグタイム』

脚本:テレンス・マクナリー
歌詞:リン・アレンズ
音楽:スティーヴン・フラハティ
演出:藤田俊太郎

出演:石丸幹二、井上芳雄、安蘭けい
遥海、川口竜也、東 啓介、土井ケイト、綺咲愛里、舘形比呂一、畠中 洋、EXILE NESMITH ほか

公演期間:2023年9月9日(土)〜30日(土)
会場:日生劇場
席種・料金:S席15,000円、A席10,000円、B席5,000円
※未就学児入場不可

※10月大阪、愛知公演あり

公演公式サイトはこちら

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