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INTERVIEW

spiさんインタビュー「派手で楽しいエンタメに徹する」▷『シュレック・ザ・ミュージカル』

緑の怪物シュレックがお姫様と恋に落ちて結ばれる愉快な冒険を描く、大ヒットアニメ映画を原作にした『シュレック・ザ・ミュージカル』。日本に初上陸した昨年のトライアウト公演で90分短縮バージョンが大好評を博したことから、今夏は満を持してオーケストラによる生演奏でのフルバージョン公演が実現。顔は怖いけれど、心は優しいシュレックを演じるspiさんに、作品の見どころなどを聞きました。

――フルバージョン公演ということで、上演時間は2時間30分(20分の休憩を含む)になりました。キャラクターそれぞれの曲が増え、より内面を掘り下げていく作品へと生まれ変わります。昨年の大好評があってこその展開ですが、意気込みをお聞かせください

その大好評というのは、本当にありがたいことです。フルバージョンをやらせてもらえるからには、期待に応えられるよう、期待を上回れるよう、頑張りたいと思います。『シュレック・ザ・ミュージカル』を日本で初めて上演されたときのオリジナルキャストとして、これから僕の名前が何十年も語り継がれていくわけですから! ただ、上演時間が長くなる分、どれくらい疲れるのかな、という心配はあります(笑)。

――シュレックは人に恐れられ、沼のほとりで孤独に暮らす全身緑色の怪物です。特殊メイクでシュレックに変身するのは、負担が大きいのですか

いいえ、緑色の部分は顔と手だけなので、そこは大丈夫。ちなみにマスクは、柔らかくて弾力があって、破れないシフォンケーキという感じです。だから、心配は、長丁場で声が持つかな、大丈夫かなという点です。あとは、子どもたちが飽きないようにしないと、とも思います。

――子どもたちを飽きさせない、惹きつける工夫について教えてください

とにかく派手なこと。そして、分かりやすく。例えばミッキーマウスのように、キャラクターっぽく動くことです。あとは、あまり難しいことやよくわからない状態を長く続けないこと。動きのない会話劇が続いてしまうと、大人は楽しいかもしれないけれど、子どもはつまらないし、ついていけなくなってしまうでしょう? 緩急をつけるということですね。長く落ち込まず、盛り上がってノリよく。トライアウト公演で一番反応が良かったのは、客席に降りたときでしたから。ずっと子どもたちから『キャーッ』と悲鳴が上がっていました。見た目が怖いからね、シュレックの顔(笑)。

――子どもたちから『シュレック・ザ・ミュージカル』は圧倒的に支持されています

子どもだけでなく、お父さんお母さん、おじいちゃんおばあちゃん、3世代みんなが楽しめるはずです。ヒロインのフィオナ姫とシュレックが、ゲップとオナラをするシーンなんか、みんな、年齢関係なく笑っています。全員、我々のマーケットです。それに、『シュレック・ザ・ミュージカル』は誰の心にも刺さる作品だと思っています。舞台を見たことがない人が、いちばん見るべき作品だと思います。

――どういうところが作品の魅力なのでしょうか

世の中の普遍的なラブロマンスと違って、この作品では、怪物は怪物のまま終わるんです。王道ではないですよね。でも、『現実はそうじゃん!』って思いませんか? 世の中の多くの人は、物語に出てくるような美男美女ではない。『それの何が悪いんだ』というメッセージもある。そういう、ちょっと斜めに世の中を見ている人にすごく共感してもらえる作品だと思います。王道に沿いつつ、王道を揶揄するというのが『シュレック』の世界観にあるので、『舞台ってちょっとわからないかも』という大人に、ぜひ見てほしいです。

――王道に沿いつつ、王道を揶揄する…。確かに『シュレック』の登場人物は、お姫様、領主、怪物、ドラゴン、お供のロバというようにおとぎばなしそのままのキャラクターですが、全員があべこべな個性と生い立ちを持っています。主人公のシュレックは、spiさんから見て、どんな生き物ですか?

外面と内面がマッチしていない。顔が怖いけれど心が優しい。あと、自分の好きなものがすごくマイノリティという人。みんなシュレックみたいなところがあると思います。人に言えない自分だけテンションが上がるものだったり、あまり分かってもらえない趣味だったり、誰だってそういう一面があるでしょう。もちろん僕にもあります。だからシュレックに、ものすごく共感します。演じる時は、そこのボリュームをあげるだけです!

――自分の好きなものがすごくマイノリティな人の気持ちを、もう少し説明してもらってもいいですか? spiさん自身は、どういうシチュエーションでその感情が生まれますか?

僕はジャワティーのミルクティー缶が大好きなんですよ。あれを売っている自動販売機を見つけると買ってしまう。でも、どんどん街角から消えているんですよ!
そういうことです。なくなった時の怒り、分かってもらえない感じ、その鬱憤です。世界で自分だけが『これ』を好きなんじゃないかと感じるあの瞬間。シュレックは『(マイノリティなものが好きで)何が悪いんだよ!』という強さを持っているというか、そっちにめくれちゃっているキャラクターですね。

――昨年に続き、シュレックを演じるのは2回目ですが、役をより深く理解できたと感じることはありますか

これは僕の演技の作り方なのかもしれないんですが、キャラクターが何を考えているのかとかは重視しないんです。言ってしまえば、(舞台は)そのお客さんの投影、時代の投影です。だから、登場人物が何を考えているかというより、その人物が作品の中でどの立ち位置なのか、お客さんがどこに共感するか、そういう投げかけというか、お客さんとリンクする部分が重要です。『逆にみんなはどう思う?』みたいな。おこがましいかもしれませんが、もし、僕のシュレックの演じ方が変わったように見えたなら、それはお客さん自体が変わったのではないかと思います。シュレックだけでなく、他のお芝居に関しても、同じ演じ方をしています。

――舞台は時代の投影ということですが、『シュレック』の物語には「仲間との絆」や「人は見た目ではない」「真実の愛」「困難に立ち向かう」といった普遍的なテーマが詰まっています。どのあたりが特に重要なメッセージだと思いますか

確かにいろんな要素があるんですけど、一番大事なのはめちゃくちゃ派手であることですね。『見ていて楽しい!』、それに尽きます。『シュレック・ザ・ミュージカル』には、難しい芸術的なアート作品としての昇華は求められていません。エンターテインメントに特化していて、派手で見ていて楽しいことが第一です。その中に、実は何かいろいろなメッセージを持っている、というのが大事なことなんじゃないでしょうか。領主であるファークアード卿の国なんか、民衆に向かって身長や服装まで指図する、現実にあるどこかの国みたいと思わせる瞬間がありますけど、そういうのは感じ取れる人が感じればいいんです。まずはエンタメに徹すること! お客さんには、めいっぱい楽しんでほしいです。

取材・文/三宅令(産経新聞社)
撮影/吉原朱美


spi

1987年10月30日生まれ、神奈川県出身。幼少期から横須賀米海軍基地内の演劇部に所属し、1998年ミュージカル『ミュージックマン』で初舞台を踏む。
主なミュージカル・舞台出演作品は、ミュージカル『RENT』(2010年・2012年・2015年)、舞台『Take Me Out』(2016年)、ミュージカル『刀剣乱舞』(2017年~、蜻蛉切役)、ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』(2018年・2022年)、ミュージカル『VIOLET』(2020年)、ミュージカル『手紙』(2022年)、『信長の野暮』(2023年)など。
今年2月に上演したブロードウェイ・ミュージカル『ドリームガールズ』でカーティス・テイラー・ジュニア役で更なる注目を集めた。

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Stage Information

『シュレック・ザ・ミュージカル』

シュレック・ザ・ミュージカル

原作:ドリームワークスアニメーション『シュレック』、ウィリアム・スタイグ『みにくいシュレック』
脚本・作詞:デヴィッド・リンゼイ=アベアー
作曲:ジニーン・テソーリ
翻訳・訳詞・音楽監督:小島 良太
演出:岸本 功喜
主催・企画・製作:フジテレビジョン、アークスインターナショナル、サンライズプロモーション東京

出演:spi、福田えり、吉田純也、泉見洋平、岡村さやか、須藤香菜、新里宏太 ほか

公演期間:2023年7月8日(土)~16(日)、7月22日(土)~7月30日(日) 日本青年館ホール

公演公式サイト

Story

物語の主人公は、人里離れた森の沼のほとりに住む、怪物・シュレック。
彼にまつわる恐ろしい伝説とは裏腹に、気ままな生活を送っていました。
そんなある日、領主・ファークアード卿によって国を追放されたおとぎ話の住人たちが、シュレックの住む森に押し寄せてきます。

静かな生活を取り戻したいシュレックは、追放令を取り消すよう交渉。
真の王になるためにプリンセスとの結婚を目論んでいたファークアード卿は、「自分の代わりにドラゴンと戦って、囚われの姫・フィオナを救い出せ」という交換条件を出します。
仕方なくシュレックは、お調子者の喋るロバ・ドンキーを道連れに、沼を取り戻すため冒険の旅に出たのですが・・

※公式HPより引用

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