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INTERVIEW

【Jump UP☆20s】甲斐翔真さん「歌も芝居も 新しい挑戦」

明るいエンタメニュース満載の1年になってほしい。そんな期待を込めて、産経新聞文化部記者とマチ★ソワ編集部が、2021年注目の若手俳優を紹介していくEditorsシリーズ「Jump UP☆20s」を不定期連載していきます。

第2弾となる今回は、日本発のミュージカル『マリー・アントワネット』で、マリーと恋に落ちるスウェーデンの伯爵、フェルセンを演じている俳優の甲斐翔真さん(田代万里生さんとWキャスト)。日本で一番有名なフランス王妃、マリー・アントワネットと、同じイニシャルを持つ庶民の娘、マルグリット・アルノーの数奇な運命を描いたこの作品の大ファンでもある甲斐さんに、作品の魅力や今後の夢を聞きました。(2020年12月に取材)

新しいフェルセンを見つけて

――甲斐さんは、ミュージカル『マリー・アントワネット』の大ファンだとか。

そうなんです! 2018年の新演出版を観て、このような作品があるんだと大ファンになってしまい、翌年には韓国で韓国版を上演していると聞いて観に行ってしまったほどです。この作品に出演したい、と思って、歌唱の映像を(同作の作編曲を行った)シルヴェスター・リーヴァイさんにお送りしました。

合格と聞いたのは、帝国劇場へ『ダンス オブ ヴァンパイア』を観に行った日。東宝のプロデューサーの方から「出演が決まった」と聞いたときは、本当にびっくりしました。『マリー・アントワネット』のようなグランドミュージカルでは、クラシカルな歌い方が求められることが多いですが、自分はそういう歌い方を今までしてこなかったので。と同時に、いろいろな感情が一気にわいてきて…。好きな作品に出演できる喜び、多くのキャストが続投する中に自分が飛び込んでいくと知ったときの不安…。今は「とにかく、くらいついていこう」と思っていますが、当時は大好きな作品だからこそ、不安だらけでした。

――演じる「フェルセン伯爵」についてはどんなイメージを持っていますか

スウェーデンの名門の家に生まれ、敷かれたレールの上で教育を受けてきた伯爵ではありますが、本当のフェルセンは、普通の青年の心を持っていると思います。そしてその青年の心を奪ったのが、王妃ではなく、ひとりの女性であるマリー・アントワネット。そこにあるのは、身分も何も関係ないただの純粋な恋愛です。フェルセンはマナーや教養があって紳士的、高貴な立場ではあるけれど、悩みや葛藤を抱えるひとりの人間だということをちゃんと表現していきたいと思っています。

僕は比較的年齢も若く、経験値も少ないですが、逆にそこを使って、フェルセンの歩いてきた人生に自分を染めつつ、青年の心で純粋にひとりの少女を愛したいと思っています。今はどの作品に出ても「フレッシュ」と言われますが、10年後には言われていないでしょうから(笑)、今の自分にしかできないことを探したい。フェルセンとマリーの愛が輝けば輝くほど、この作品は悲劇の物語になる。互いにただ好きなだけなのに、ということを伝えて、「こういうあり方もあるんだ」と、お客さまにも新しいフェルセンを見つけてほしいです。

――お稽古場の雰囲気はどうですか?

万里生さんとご一緒するのは初めてでしたが、とても優しい方です。『マリー・アントワネット』の前に出演していたミュージカルは『RENT』でしたが、ファミリーのような賑やかな感じ。そのままの雰囲気で『マリー・アントワネット』のようなミュージカルに臨むと浮いちゃうんじゃないかと不安だったんですが、万里生さんの優しさで不安がなくなりました。もちろん、自分からもっと突っ込んでいっていいのか、まだ探り探りではありますが(笑)。

――歌の方はいかがでしょう

今までやってきたミュージカル作品(デスノート、RENT)はいずれも張り上げる感じというか、僕は吐き捨て系と言っているのですが、そういう歌が多かった中で、今回は丁寧に旋律をつむいでいかないといけない。歌詞の内容も伝えつつ、感情も乗せつつという新しい挑戦です。「こんな歌い方があるのか」と驚く瞬間もありました。模索しながら、しっくりするところを探したいと思います。

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いつか歌を使う仕事を

――ここのところミュージカルの出演が相次いでいますが、もともとミュージカルがお好きなんですか?

はい、好きでした。初めて観たミュージカルは5歳か6歳の頃、劇団四季の『ライオンキング』です。観劇後、子ライオン(ヤングシンバ)の真似をして、「王様になりたい」を歌っていたのをうっすらと覚えています。
本格的に歌いたいと思ったのは、もっと後です。高校にサッカーのスポーツ推薦で入ったので皆より先に進路が決まっていたのですが、時間があったのもあり、ひとりでカラオケによく行っていたんです。そのときに歌に目覚め、いつか歌を使う仕事をしたいと思いました。その後、役者になって、役者の力も歌の力も必要な仕事といえばミュージカルだな、と気づいて…。いつかやりたいと色々な作品に触れていくうちに、どんどん魅力にはまりました。そこからオーディションを受けて、自分のミュージカル人生が始まったんです。

――サッカー少年だった頃の甲斐さんは、今の自分を想像できますか?

できません! そもそも芸能界にいるなんて思ってもいなかったですから。中学3年でスカウトされ、その後、この世界に入ったわけですが、そのときも、まさかグランドミュージカルで自分がこのような大きな役をいただけるなんて、想像もしていませんでした。
それでも、言霊って存在するんだ、とつくづく思います。「バンドをやりたい」と言ったら、事務所の仲間たちとバンドを結成して活動することもできましたし……。

――好きなミュージカルの作品は?

たくさんあります! 『マリー・アントワネット』はその中のひとつですが、僕のミュージカル好きを決定的にした作品は、『ジキル&ハイド』。韓国で観て好きになり、動画も探してはまり、「いつか出演したい!」と目標のひとつになりました。リーヴァイさんの作品も好きです。『モーツァルト!』や『エリザベート』も。『エリザベート』のトート役にもあこがれますね。でもまずは、フェルセンに向き合っていくことからです。

フェルセンを演じていると、こんな昔から人間は同じことで悩んでいるんだな、と気づかされます。登場人物の思い、過ち、運命、教訓は今の時代にもぴったり合うわけですから。さまざまなミュージカルの中でも、ぼくは人間の過ち、解決しない課題を突き付けられる『マリー・アントワネット』のような作品が好きです。報われないと分かっていても、マリーをどれだけ愛したかを表現することが、フェルセンなりの突き付け方。そこをしっかり表現したいです。

――甲斐さんご自身もフェルセンのような情熱的なタイプですか?

全然です(笑)。一歩引いて考えるタイプなので。サッカーでもキーパーでしたから、一歩引いているんです、全体的に(笑)。でも、フェルセンの気持ちは分かります。マリーというひとりの女性を愛して、レールが交わらないと分かっていても会いに行ってしまったり衝突して帰ったりする。シンプルに、マリーのことが好きなんだな、と理解できます。フェルセンだったら、マリーがマルグリットの立場にいても好きになっていたでしょうね。フェルセンという人物は、地位も名声も関係なく、人に対して分け隔てなく向き合うことができる人。地位や権力がすべての時代に、人の本質を忘れなかった人だなと思い知らされます。

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――今後の目標を教えてください

もちろん、これからもミュージカルに出演させていただき経験を積んでいきたいですし、様々な事にも挑戦していきたいです。まずは、歌が歌えて、芝居ができて、そして他にも何かできる、そんな無敵人間になりたいです。

取材・文/道丸摩耶(産経新聞)
写真/松井英幸(産経新聞)

【編集後記】初めて観劇したときから『マリー・アントワネット』の大ファンという甲斐さん。お客さんに見てもらいたいシーンを聞くと、「マリーが処刑されてマルグリットがオルレアン公とジャック・エベールの作戦を裁判で言っちゃうところで、後ろにかかっているフランス国旗が曲が始まるとバンと落ちる! そこがとても好…マニアックですかね?」。(※このシーンにフェルセン伯爵は出ていません)



甲斐翔真(Kai Shouma)
1997年11月14日、東京都出身
2016年「仮面ライダーエグゼイド」パラド役で注目を浴び、その後、映画やテレビドラマに出演。舞台の主な出演作は、ミュージカル『デスノート THE MUSICAL』、『RENT』。

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Stage Information

ミュージカル『マリー・アントワネット』

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【脚本・歌詞】ミヒャエル・クンツェ
【音楽・編曲】シルヴェスター・リーヴァイ
【演出】ロバート・ヨハンソン

【出演】マリー・アントワネット:花總まり / 笹本玲奈(Wキャスト)
マルグリット・アルノー:ソニン / 昆 夏美(Wキャスト)
フェルセン伯爵:田代万里生 / 甲斐翔真(Wキャスト)ほか

■東京公演:1月28日(木)〜2月21日(日)東急シアターオーブ
■大阪公演:3月2日(火)〜11日(木)梅田芸術劇場 メインホール

公演公式サイトはこちら

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