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INTERVIEW

望海風斗さん「エネルギー感じて」▷オリジナルミュージカル『イザボー』

フランス史上最大の悪女ともいわれる王妃イザボーを描くオリジナルミュージカル『イザボー』が2024年1月15日に初演を迎えます。元宝塚歌劇団雪組トップスターの望海風斗さんが主演、舞台『刀剣乱舞』などの作品で知られる末満健一さんが作・演出する完全新作のエネルギッシュなエンターテインメント。ワタナベエンターテインメントと末満さんがタッグを組んで、国内クリエイターの才能を集め、世界レベルの作品の創造・発信を目指す「MOJOプロジェクト -Musicals of Japan Origin project-」の第一弾です。運命にあらがうイザボーを演じる望海さんに、作品への意気込みを聞きました。

――演じられるイザボーは、フランスとイングランドの100年戦争時代(14~15世紀)の悪徳王妃。同時代の救国の聖女ジャンヌ・ダルクと比して、「フランスはひとりの女によって滅ぼされ、ひとりの少女によって救われる」と言われるほど、私利私欲のために、国を破滅に導いた悪女として有名です。

このお話があってからイザボーを知り、まだ台本もなかったときに、どんな人だろうと思って調べました。何を読んでも悪く書かれているんですよね。今まで演じたことがあるロベスピエール(フランス革命期の恐怖政治で有名)やアル・カポネ(アメリカ禁酒法時代のギャング)とは違う。ロベスピエールは今でもフランス人に嫌われていますけれど、何かを成し遂げた人、という評価をされています。アル・カポネも悪人として知られていますが、それでも良いこともしたと書かれていました。イザボーは、本当に悪いことしか書かれていなくて、もう嫌いになってしまいそうだったので、途中で調べるのをやめました。

――そのイザボーを、どのような女性として演じようと考えていらっしゃいますか。

末満さんが書いてくださった本からすると、過酷な時代の状況が彼女を悪女にしたのだと思います。周囲からはとんでもない悪事を働いているように見えるのでしょうが、自分で生きていくと決めて、何としてでも生き抜こうとした結果であり、その強さはイザボーを演じるうえで大事にしたいです。悪い人ですが、ちゃんとイザボーの人生を描いてくださっているので、もう嫌いになれません。好き嫌いをこえて、どう自分が彼女と一緒に歩んでいこうかと考えています。今は、この人とならやっていけるかもという印象があります。

――その意志の強さはイザボーの魅力です。望海さんとイザボーには共通点がございますか

共通点といいますか、何かのためにとにかくやらなきゃ、という気持ちは共感できます。私は宝塚歌劇団に20年ほどいました。トップになってからは自分一人のことではなく、とにかく周囲や劇団のこと、今あるものをどれだけ前に進められるかということに心を砕いていました。ちょうどコロナ禍の時期だったこともあり、どうやってみんなの気持ちを保たせたらいいのか、どうしたら公演を続けられるのか、そういうことを考えるとき、みんなの先頭に立ってやらなきゃみたいな気持ちは、すごく働いてたなと思います。

――望海さんは宝塚歌劇団を退団した後、『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』や『DREAM GIRLS』など数々のミュージカルで活躍されており、強い女性を演じられることが多いように感じます。今回のイザボーも強い女性です。現代の日本社会には強い女性が求められているといっても過言ではないでのは。

難しいところです。『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』の(ヒロインで高級娼婦の)サティーンを演じたときのことです。海外で演じられているサティーンはとても生々しく強く女性で、演出の方にも「こういう前提があって、だから絶対にサティーンは強くなきゃいけない」といわれ、自分でも日本のヒロイン像が変わるかもしれないと意気込んでいました。でも、初日に舞台に出たときに「まだ日本では違うかも」と思ったんです。もちろん私の力不足はありますが、実際に皆さまがミュージカルの中で求めるヒロイン像とは、きっと違ったんですよね。あまりにも本当に強すぎると、どこかにファンタジー性がないと、日本のミュージカルの女性像としてはそぐわない。だから、イザボーでも強い女性を求められてはいるけど、難しいところだと思っています。彼女の全てに共感してほしいわけではありませんが、今作のイザボーが皆さまの心に何かを残すためには、ひとりで空回りするのは絶対に違いますので。

――今作は完全新作ということで、参考にすべき前例がないオリジナルキャストになります。そのことが役作りの難しさに拍車をかけているのではないでしょうか

そういう難しさより、私は誰も演じたことがない役を演じられることに喜びを感じています。宝塚のときから、どんな役でも、誰もやったことがない役を演じたいと願ってきました。だから今回、オリジナルキャストということで、とてもうれしいです。いま何かを生み出して、そこからスタートするということに魅力を感じています。再演を重ねる素晴らしい公演もたくさんありますが、初演って絶対なんですよね。私は宝塚でファントムを何度も演じていますが、やっぱり初演にはかなわないと思っていました。その作品を作り出したということは本当にすごいことで、オリジナルキャストをリスペクトしています。だから、自分もオリジナルキャストを演じたいと思いますし、それが今後再演されるような作品になるのが一番うれしいです。

――今作で印象的なことはございますか

すごく…熱血ですね。あの真っ赤なビジュアルからは想像もつかないような、少年漫画のような、スポ根的な部分があって、そのギャップに慣れようとしています。無意識に、貴族だからこうあるべき、女性だからきれいに立たなきゃ、衣裳はこうだから、と先入観を抱いている部分に対し、「そうじゃない」と、もっと人間らしいものを要求されます。今回の演出は「みんな人間なんだ」みたいなものがすごく強いんじゃないかなと思います。心身ともにハードです。

――どのようにハードなのでしょうか。お稽古ではどのような感じですか。

精神的にも大変ではあるのですが、肉体的にも、体を張ってるんです。主役ですが、結構大変なことをさせられています(笑)。いや、嫌いじゃないんですけど、主役ってこんなに体を張るものだったっけと思うくらいには、体を張っています。(イザボーの夫である)シャルル6世役の上原理生さんが驚いて、「僕、望海さんのファンに怒られちゃうんじゃないかな…」と仰っていました。毎回そのシーンの稽古が終わるたびにすごく私に優しくしてくれます。

――劇中で何が起きるのでしょうか

それは言ってしまうとネタバレになるので、とにかく見ていただければ。今の私の願いは、イザボーを演じ切ることです。セットも衣裳も素晴らしく、いろいろなものがフル稼働している、この作品が持つエネルギーを、ぜひぜひ皆さまには劇場にお越しいただいて、肌で感じていただけたらと願っています。

取材・文/三宅 令(産経新聞社)
撮影/松井英幸(産経新聞社)
スタイリスト/為井真野(KIND)
ヘア&メイク/yuto
衣装/スヌード風ケープ&シャツワンピース(モガ)
イヤリング&リング(アビステ)



望海風斗(Nozomi Fūto)

神奈川県出身。2003年宝塚歌劇団に89期生として入団。2017年に雪組トップスターに就任。『ファントム』、『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』、『fff-フォルティッシッシモ-』に出演。退団後はミュージカル『ガイズ&ドールズ』(2022)や『ムーラン・ルージュ! ザ・ミュージカル』(2023)など。ドラマティックコンサート第2弾「Hello,」が来年3月20日~25日、東京・日本青年館ホール公演を皮切りに、福岡・愛知・大阪で開催が決定している。

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Stage Information

MOJOプロジェクト -Musicals of Japan Origin project-
ミュージカル『イザボー』

作・演出:末満健一
音楽:和田俊輔
主催・企画・製作:ワタナベエンターテインメント

【出演】
イザボー:望海風斗
シャルル七世:甲斐翔真
シャルル六世:上原理生
ジャン:中河内雅貴
ルイ:上川一哉
ヨランド:那須凜
フィリップ:石井一孝
ほか

【東京公演】
2024年1月15日(月)〜30日(火):東京建物Brillia HALL

【大阪公演】
2024年2月8日(木)~11日(日):オリックス劇場

【お問い合わせ】
ワタナベエンターテインメント TEL03-5410-1885(平日11時~18時)

公演公式サイトはこちら

Story

百年戦争の時代。バイエルン大公の娘として生まれた少女は、やがて隣国フランスの王妃イザボー・ド・バヴィエール(望海風斗)となる。夫であるシャルル6世(上原理生)はイザボーをこよなく愛したが、ある出来事を境に狂気に陥ってしまう。破綻した王政につけ入り、権力を掌握しようとするのはシャルル6世の叔父ブルゴーニュ公フィリップ(石井一孝)とその息子ジャン(中河内雅貴)。彼らと対立するシャルル6世の弟オルレアン公ルイ(上川一哉)は、イザボーと不貞の関係となり、彼女が権力を獲得するために助力していく。混沌の時代の中で、イザボーは愛と衝動のままに生き抜こうとする。のちにフランス・ヴァロア朝の第5代国王となるシャルル7世(甲斐翔真)は、義母ヨランド・ダラゴン(那須凜)と共に、実の母であるイザボーの生き様を辿っていくこととなる。フランスの歴史上でもっとも嫌われた最悪の王妃の生きた道を──。

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