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COLUMN

【#36】勝手に涙が出てきた「自由を求めて」(『ウィキッド』)|東啓介と聴活♪

いよいよ、このコラムも最終回。今回は、10年ぶりに首都圏で再演となった劇団四季の『ウィキッド』を聴活してきました。以前、ニューヨークに行った時に見ようかなと思ったんですが、時間がなくて見られなくて…。それが今回、日本版で見られることになり、再演してくれた劇団四季にも、聴活にも感謝です。「オズの魔法使い」のもうひとつの物語とされるストーリーは今この時代に響きますし、観劇前から知っていた曲もたくさんありました。衣装や照明、そしてセットの中で物語が進んでいくと、知っていたはずの曲の印象がまた変わるのが不思議! 劇場に入った瞬間から、「オズの魔法使い」の世界に迷い込んだ気分になれるのもこの作品の見どころだと思います。

名曲ぞろいの『ウィキッド』ですが、今回は代表曲ともいえる「自由を求めて」を取り上げます。緑色の肌で生まれてきた魔女、エルファバが1幕最後に歌いあげる曲で、以前、ミュージカル俳優さんが歌っている動画を見て、男性が歌ってもすごいな、自分も歌ってみたいな、と思っていました。

撮影:荒井 健

僕が見に行った回でエルファバ役を務めたのは、これが初のプリンシパルという小林美沙希さん。透き通った声が美しく、本当にすばらしかったです。エルファバの曲はどれも難しいし、中でも「自由を求めて」は最後に向けて盛り上がっていく長い曲。あれを歌いきるのは本当にすごいし、うますぎて自然と涙が出てきました。

エルファバ役のひとり/小林美沙希。撮影:荒井 健

演じる方にはプレッシャーもあると思いますが、観客も「ああ、名曲が来た!」と震えながら聞いていて、終わった後の拍手の大きさはものすごかったです!! あの曲を堂々と歌いこなせるなんて、役者として本当に尊敬します。しかも、歌いながらフライングというんでしょうか、ほうきで飛ぶんですよ! 魔女らしくとても豪華ですし、キャストだけでなく、周りのスタッフも皆が一致団結している力を感じました。

自分がああいう歌を歌うとしたら…どうでしょう。プレッシャーは感じますが、歌いきったら皆さんに何か届くんじゃないかと思うし、何よりも聞けて良かったと思ってもらいたい一心で歌うかな。いつか挑戦してみたいです。

撮影:阿部章仁

ストーリーは、特に結末に涙しました。エルファバと愛するフィエロの2人はどこかで生きているけれど、それは誰も知らない。真実は言わずそのままでいい、というエルファバの覚悟と「グリンダには『いい魔女』でいてほしい」という願い、国のことを考えて真実が言えないグリンダの気持ちも、胸に刺さるものがありました。あえて噓をつかなくちゃいけなかったり、いい顔をしなきゃいけなかったりすることは僕らにもある。それを当たり前として生きていかなきゃいけない状況に置かれることもあるでしょう。すごく共感できるストーリーでした。

「あなたを忘れない」の歌ではお客さんのすすり泣く声が聞こえてきたけれど、もう会えないと思っていたグリンダとエルファバがカーテンコールで一緒に出てきたときには、僕もぶわっとこみ上げてくるものがありました。カーテンコールは本編とは別だと分かってはいますが(笑)。本当にいい聴活をさせてもらいました。

最終回に当たって、少しだけ連載を振り返ってみたいと思います。正直、終わってしまうのを残念に思うと同時に、3年もやっていたことにびっくりしました。『ウィキッド』もそうですが、「聴活」を通じて知らない作品にたくさん出会えましたし、視野が広がり、歌を歌う意欲も増しました。観劇したことをX(旧ツイッター)やインスタグラムで報告することはあるけれど、深い内容を投稿するのはあまり得意じゃないので、毎回、しゃべりながら深掘りしていける聴活は、やはりミュージカルって素敵だなと再確認できたぜいたくな時間でした。

この3年間で、ミュージカルの盛り上がりを肌で感じ、少しでも多くの人にミュージカルの魅力を伝えることができたなら良かったな、と思います。実際にファンの方から、「聴活を読んでその作品を見に行った」という声も聞けて嬉しかったです。

印象に残っている作品は、やはり『アナと雪の女王』でしょうか。ミュージカルが好きな人にも、初めてという人にもおすすめできる作品ですし、映画で知っている曲を、劇場で生の歌声で聞くと、ミュージカルの良さを感じてもらえると思うんです。ポップなもの、クラシカルなもの、ロックテイストなもの、とさまざまなミュージカルを聴活で紹介することで、今でもなお、「ミュージカルってこういう感じだよね」と固定的な見方をしていらっしゃる方に、ミュージカルのすそ野の広さを分かっていただければいいなとも思っていました。

もちろん、僕自身にも影響はすごくありました。見終わった後にカラオケに行ったこともありましたし、違う歌手の動画を見たり、自分が今後やる作品の歌を聞いたりして、音楽というものにすごく敏感になりました。俳優の方が歌っている姿や演じている姿を見て、もっと自分もミュージカルをやりたい、もっとうまく歌えるようになりたい、と向上心もわきました。

逆に「僕もこの作品をやりたかった!」と悔しく思うこともありましたが、そう思えるのも刺激を受けるということですよね。毎回、1曲を選ぶのも楽しくて、王道過ぎるのは嫌だなと思ったり、でもやはり王道の曲がいいなと思ったり…。いろいろな音楽に触れられて、いい影響しかなかった3年間でした。

月1回の連載はこれが最後になりますが、今後も音楽のすばらしさや、歌うことの喜びを皆さんと分かち合っていきたいし、ぼくが出ている作品で皆さまが聴活をしてくれたらうれしいです。これからも一緒に、もっともっとミュージカルを愛していきましょう! 3年間、ありがとうございました!

聞き手/道丸摩耶(産経新聞社)


今月の聴活SONGS♪

“Defying Gravity” – Wicked 20th Anniversary Edition | WICKED the Musical

Stage Information

劇団四季 ミュージカル『ウィキッド』

【東京公演】2024年1月27日(土)千穐楽
JR東日本四季劇場[秋](浜松町・竹芝)

【大阪公演】2024年8月15日(木)開幕
大阪四季劇場(大阪・梅田)

公演公式サイトはこちら


■劇団四季:ウィキッド:2023年東京公演プロモーションVTR



東啓介(Higashi_Keisuke)
1995年7月14日生まれ。2013年デビュー。『5DAYS 辺境のロミオとジュリエット』『命売ります』『Color of Life』などの作品で主演を務める。近年はミュージカル界の新星として頭角を現している。2020年11月にはファーストソロコンサートも開催。ミュージカル『マタ・ハリ』ではアルマン役、『ジャージー・ボーイズ』でボブ・ゴーディオ役で出演し注目を集めた。映像作品では、NTV「ウチの娘は、彼氏が出来ない‼︎」やTBS火曜ドラマ「ファイトソング」などに出演し話題に。最近では、TX木ドラ24「チェイサーゲーム」やMBS「闇金ウシジマくん外伝 闇金サイハラさん」に出演。2023年1月〜2月ミュージカル『ザ・ビューティフル・ゲーム』、4月〜5月舞台『二次会のひとたち』に出演、9月~10月ミュージカル『ラグタイム』に出演し好評を博した。来年4月には、ミュージカル『VIOLET』への出演が決定している。
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