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COLUMN

#6『伝説のリトル・バスケット団』|ソウルからミュージカル・ラブレター

大学路で今一番輝いている青春ミュージカル
『伝説のリトル・バスケット団』

韓国のオフ・ブロードウェイと呼ばれる大学路:テハンノ(4号線・恵化駅周辺)には、150以上の劇場が集まっていて、その規模は100席程度の小劇場から300〜600席の中劇場まで様々。受け皿になる劇場のサイズも数も多様にあるために、近年の韓国ミュージカルは成長を続け、大学路に行きさえすれば、当日チケットを買って気軽にミュージカルを堪能できるという‘Welcome(ようこそ)!大学路へ’の雰囲気いっぱいの環境が整っています。

大学路に興味を持ったものの、外国人である我々にはたくさんある作品の中から、一体どれを選んで観るのか?が最大の難関なのですが、そんな時に役立つようお伝えしたいのが、下記のTIP(ヒント)。

【大学路でこれさえ押さえれば間違いなし!作品選びTIP】

  1. 再演を繰り返している作品
  2. 作家と作曲家が実績のあるクリエーター
  3. 予習・復習のためのYou Tube映像が揃っている

2022年夏、大学路で上記三点を全てクリアしているのが『伝説のリトル・バスケット団』という韓国オリジナル・ミュージカルです。この作品の解説を通して、大学路での作品選びについてお話していきたいと思います。この『伝説のリトル・バスケット団』は2016年に韓国の地方都市・安山(アンサン)市の文化芸術事業で開発され、それから二年後の2018年と2020年に大学路で上演、ファンがどんどん増えていった作品です。ライセンス作品とは異なり、観客の反応を見ながら変化させることができる韓国オリジナル・ミュージカルは、上演を重ねる度に演出も台本も音楽も、そして俳優たちの演技もどんどんブラッシュアップしていきます。そのため、この『伝説のリトル・バスケット団』のように、再演を重ねている作品は、韓国の観客の支持はもちろん、作品自体の精度が高くなっているために、満足できるものが多いのです。


写真提供:Im Culture

17歳のいじめられっ子、キム・スヒョンは学校でも家庭でも存在感のない男の子。毎日遺書を書くほど追い詰められていた彼がある日、学校の屋上で些細な事故を通して、三人の高校生幽霊と出会うことからこのミュージカルの物語は始まります。三人の幽霊がバスケット部出身だったことから、彼らの思いに応えるために、やる気のないコーチ、ジョンウ率いる地元の弱小バスケットチームに入ることになったスヒョンは、自分の人生を変えるような一夏を過ごす……。

17歳の少年の夏を生き生きと描いたのは、韓国ミュージカル界ではすでに『僕とナターシャと白いロバ』『ナビレラ』等の名作を生みだしている作家、パク・ヘリム。不器用でも人間味あふれ、人生を正直に生きている人々を暖かい眼差しで描くことに定評がある彼女は、今作でも主人公のスヒョンを始め、幽霊たち、コーチのジョンウ、そして主人公と不器用な友情を築いていくサンテを魅力いっぱいに描き、観客たちが必ず応援したくなるキャラクターを創り出しています。笑いに満ちあふれていた前半から一転、幽霊たちの背景が明らかになる物語のクライマックスは、号泣必須。何の前情報もなく作品を鑑賞した観客たちからは、「こんなに感動するなんて、聞いてない!マスクの替え持って来てないのに。」と賞賛にも似たクレームが出たりと、観た人を唸らす構図は、さすがの敏腕クリエーターの作品です。

【伝説のリトル・バスケット団 ハイライト 前半】
【伝説のリトル・バスケット団 ハイライト 後半】

大学路ミュージカルのファン層は、大体20〜40代の女性達。そのため、各制作会社たちは彼女たちが‘キュン!’となるようなビジュアル作りに長けています。特に『伝説のリトル・バスケット団』チームは、作品をすでに知っている層、未だ観たことがない層両方にアピールする映像作りに長けており、公演後数週間後には今期バージョンのハイライト(上記YouTube リンク)のアップはもちろんのこと、稽古場のメイキング映像や、公演が始まる数か月前から‘作中描かれなかったビハインド・ストーリー’をYouTube上に投稿。公演前には期待を、公演後には余韻を観客に抱かせる素晴らしい広報戦略を取っています。

【伝説のリトル・バスケット団 ビハインド・ストーリー初めて優勝した日】

こうした映像を残している作品は、外国人である我々の強い味方。大学路で作品鑑賞後もゆっくりと歌詞を復習することもできますし、観る前までは分からなかった部分も映像をヒントに解き明かすこともできます。多くの大学路ミュージカルの場合、タイトル名が韓国語でYouTubeに登録されていますので、Global INTERPARKなどの韓国内のミュージカル作品のチケットを購入できるサイトでタイトル名や出演俳優のハングル名を調べ、You Tube上で検索すると、たくさんヒットしますので、ぜひぜひお試しあれ。

ミュージカル、劇場文化がお好きな方なら、ぜひ一度は訪れてほしい街・大学路。今年9月24日10月30日まで、政府機関である文化体育観光部と韓国観光公社などがタッグを組み、『ウェルカム大学路2022』が開催されます。

『ウェルカム大学路2022』公式ホームページ(日本語訳あり)

フェスティバル中は、今年の大学路を代表するミュージカル作品のアンコール上演や俳優達によるコンサート、そして公演をもっとよく知るためのプログラム各種が国家支援のもと、大々的に観客に届けられます。釜山では釜山国際映画祭が1996年に誕生しましたが、ソウルで行われるこういった試みを見ると、韓国政府は映画と同じくミュージカルを文化として認め、育てて行こうという姿勢であることを感じさせます。国家のサポートのもと、民間の制作会社たちが切磋琢磨し、今後どんな素晴らしい大学路オリジナル・ミュージカル作品が生まれていくのか、期間中に街を歩くだけでも、韓国公演界の未来が輝いていることを感じていただけるかと思います。

取材・文/日韓公演コーディネーター・高原陽子


高原陽子

東京都出身。青山学院大学英米文学部在学中に韓国・梨花女子大学に留学。その後韓国に渡り、日韓の公演コーディネーターとして、数々の韓国作品や俳優を日本に紹介、また近年では、日本の才能ある俳優達を韓国の観客達にも紹介している。韓国人パートナーとの間に一女を設け、現在はソウル在住。
主なコーディネート作品:『SMOKE』『BLUE RAIN』『僕とナターシャと白いロバ』他
日本:『レ・ミザラブル』ヤン・ジュンモ、『ミス・サイゴン』キム・スハ、『ミュージック・ミュージアム』パク・ウンテ 他
韓国:『Seoul Musical Festival』中川晃教、安蘭けいpresents日韓交流ミュージカルコンサート等多数

Stage Information

伝説のリトル・バスケット団

公演期間:2022年7月05日〜8月28日
劇場:同徳女大 公演芸術センター コットンホール (4号線・恵化駅)

出演:パパク・ウンソク、キム・デヒョン、イム・ギュヒョン、イム・ジンソプ、シン・チャンジュ、キム・スンヨン、シン・ユンチョル、イ・ジョンソク 他

【NEWS!!】
「ウェルカム大学路2022」のウェルカムシアターで『伝説のリトル・バスケット団』上演決定!!

日程:2022年9月16日(金)~10月3日(月)
時間:火・木・金 20時/水 16時・20時/土日祝 14時・18時 ※月曜日休み
会場:ソギョン大学校公演芸術センタースコーン1館
上演時間:100分(休憩なし)
料金:R席66,000ウォン/S席55,000ウォン
※未就学児童入場不可

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