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COLUMN

【#13】影を感じる「僕こそ音楽」(モーツァルト!)|東啓介と聴活♪

2022年が始まりました。新しい年の最初にご紹介するのは、ずっとずっと話そうと思っていたミュージカル『モーツァルト!』の代表曲「僕こそ音楽(ミュージック)」です!

ウィーン発の有名な作品ですからご存じの方も多いと思いますが、このミュージカルは本当に名曲ぞろいです。「影を逃がれて」と迷ったのですが、今回は「僕こそ音楽」を選びました。1曲を選ぶのは、本当に難しいです!

もちろん、ストーリーもとてもおもしろいです。「5歳のときに神童と言われ、10歳のときに才子と言われて、20歳のときにはただの人」というヴォルフガング(モーツァルト)のたどった道は、胸に突き刺さります。父親の意志で大司教のところに連れていかれ、独占されるのを拒んだら、仕事もできなくなってしまう。人としてただ自分の思うように生きたいだけなのに、人に左右されてしまうなんてかわいそうだし、そんなために生まれてきたわけじゃないだろう、と見ていて辛くなります。勝手に「天才」とはやしたてておきながら、勝手に去っていく周囲の人たちを、ヴォルフガングはどういうメンタルで耐えたのか。彼は人間として不完全なわけではなく、もし周囲から何か足りないように見えるなら、それをなくさせたのはその周囲のせいじゃないかと思ってしまうんです。

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舞台には、天才と呼ばれた幼い頃の自分が、「影」としてずっと存在しているのですが、その理由についてもすごく考えさせられます。あの頃に戻りたいのか、戻りたくないのか。付きまとわれ、その影からも逃げたいけれど、やはり過去の自分のすごさや受けた喝采を完全に切り離すことはできない。臆せず何でもできた過去の自分へのジェラシーもあっただろうと思います。小さい頃は何も考えずにできたからこそ「すごい」と言われていたものが、できなくなったことへのフラストレーションは相当だったでしょう。

ぼくは海外の偉人の物語が好きで、ベートーヴェン、画家のゴッホとか、そういう偉人について調べちゃうことがあるんです。モーツァルトについても調べたことがあるのですが、モーツァルトはミュージカルになっているのに、なんでベートーヴェンはないのかと思ったら、『モーツァルト!』を制作したミヒャエル・クンツェ氏とシルヴェスター・リーヴァイ氏が、ベートーヴェンを描いた新作を準備中らしいです。

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話がそれましたが、ミュージカル『モーツァルト!』は、ぼくがずっと「挑戦したい」と願い続けている作品です。ヴォルフガングは難役ではあるけれど、どうやったら皆さんに認めてもらえるように演じられるか、つい考えてしまいます。

俳優も他人と比較されたり、旬じゃなくなったら仕事がなくなるような、ヴォルフガングの境遇と似ているところがあります。といっても、俳優の場合は、もがいているときに手を差し伸べてくれる人がいる。でも、ヴォルフガングには誰もいなかったんです。「音楽だけが生きがいで、ぼくこそが音楽。だからこのままの自分を愛してほしい」と歌う「僕こそ音楽」は2幕の最後でも歌われるのですが、1幕のときと全然違って、とても切ない。あの悲痛さを舞台の上で感じてみたいです。

1幕でこの曲を歌うとき、ヴォルフガングは自分を解放して楽しそうに歌っていますが、どこかに影を感じてしまいます。「僕こそ音楽」になりたいけど、なれない。影から逃れたい気持ち、ひとりでやっていくと誓いながらも本当にひとりになったら落ち込むだろうという予感。そんな「影」の部分を背負っているからこそ、最後の「僕こそ音楽」が生きてくる。やっぱりなれなかったのか、と。

とはいえ、ヴォルフガングはかわいそうだね、では終わらせたくない。なんでこうなってしまったのか、誰がそうさせてしまったのか。偉人の人生を今から変えることはできないけど、舞台では周囲の人物にも目を配ってほしいです。そのときに、「僕こそ音楽」は、ヴォルフガングを理解する一番の助けになるんじゃないかと思います。

聞き手/道丸摩耶(産経新聞)
撮影/黒澤義教

♪今月のミュージカルソング

「僕こそ音楽(ミュージック)」|モーツァルト!

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東啓介(Higashi_Keisuke)

1995年7月14日生まれ、東京都出身。2013年デビュー。舞台『剣乱舞』など気舞台で活躍し、『5DAYS 辺境のロミオとジュリエット』『命売ります』『Color of Life』などの作品で主演を務める。近年はミュージカル界の新星として頭角を現している。2020年11月にはファーストソロコンサートも開催。2021年1月〜3月、NTV「ウチの娘は、彼氏が出来ない‼︎」にイケメン整体師・渉周一役で出演し話題に。 2021年3月〜4月ミュージカル『イン・ザ・ハイツ』(神奈川・大阪・名古屋・東京公演)に出演、6月〜7月ミュージカル『マタ・ハリ』でアルマン役に再び挑み好評を博した。2022年秋に開幕するミュージカル『ジャージー・ボーイズ』にボブ・ゴーディオ役で出演が決定した。

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Information

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TBS火曜ドラマ「ファイトソング」

毎週火曜日22時放送
烏丸 薫役で東啓介さん出演!

出演:清原果耶、間宮祥太朗、菊池風磨(Sexy Zone)、東 啓介、藤原さくら、若林時英、窪塚愛流、莉子 ほか

Stage Information

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ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』

脚本:マーシャル・ブリックマン&リック・エリス
音楽:ボブ・ゴーディオ
詞:ボブ・クルー
演出:藤田俊太郎

出演:中川晃教、花村想太、藤岡正明、尾上右近、東 啓介、有澤樟太郎、spi、大山真志 ほか

会場:日生劇場(東京)
製作:東宝/WOWOW

公演公式サイトはこちら

【Story】

はじまりはニュージャージー州の貧しい片田舎。
“天使の歌声”を持つフランキーは、成功を夢見る兄貴分のトミーと ニックのバンドグループ に 迎え入れられる。 早速3人での音楽活動をスタートさせるが、フランキーの歌声をもってしてもグループには未だ何かが欠けていた。
鳴かず飛ばずの日々が続く中、作曲の才能溢れるボブが加入する。フランキーの歌声に魅了されたボブは、その声のために曲を書きたいと思うのだった。しかし金もコネもない彼らを待っていたのは 過酷な下積み生活。そんな中でも彼らは自分たちの音楽を磨き、それぞれの才能を開花させていく。そしてついにボブの楽曲と4人のハーモニーが大物プロデューサーの目に留まった。彼らは「ザ・フォー・シーズンズ」としてレコード会社と契約し、《Sherry》をはじめとする全米ナンバー1の楽曲を次々と生み出していく。ヒット曲につぐヒット曲、長期にわたるツアーで、家族を顧みずに酒と遊びを繰り返す日々が続く。富も名声も手にしたはずの4人だったが、輝かしい活躍の裏では、莫大な借金やグループ内の確執、家族の不仲など、様々な問題が勃発し、彼らの固い絆を蝕んでいった。それらはやがて取り返しのつかない大きな軋轢となり、グループを引き裂くのだった。
成功と挫折。あまりに劇的な春夏秋冬を駆け抜けていく4人がその先で見たものとは―。

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