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COLUMN

【#12】切なく歌い上げる「サンタフェ」(ニュージーズ)|東啓介と聴活♪

この連載も、早いもので間もなく1年となります。今回は、最近見に行って楽しかった作品の中から、ミュージカル「ニュージーズ」の楽曲を紹介したいと思います。「ノートルダムの鐘」や「アラジン」で有名なアラン・メンケンが作曲を担当したので、名曲ぞろいです。

「ニュージーズ」はブロードウェイで上演され、ミュージカル映画にもなっています。「ブロードウェイ公演も、映画も、すごく良かったよ」と所属事務所の社長から薦められ、10月に東京で行われた公演を見に行ったんです。ぼくは映画もブロードウェイ公演も見ておらず、完全に初見でしたが、とにかくダンスがすごいし、歌もいいし、最後まで楽しく見ることができました。本来は昨年、上演される予定だったそうですが、コロナ禍で中止に。それが満を持して上演できたわけで、出演者の皆さんからは、蓄えていたエネルギーを爆発させているような勢いを感じました。

物語の舞台は今から100年以上前のニューヨークで、新聞を売って生活している少年たちが主役。京本大我さん演じる主人公のジャックは、少年たちを束ねるリーダーのような立場で、歌もダンスも本当に上手でした。ジャックの友人で足の不自由な少年、クラッチーを演じた松岡広大くんは、ぼくがデビューしたミュージカル「テニスの王子様」で共演させていただいた仲。松葉杖を上手に使ってダンスを踊るので驚きました。そういえば、彼は昔から器用でした!

個々のダンスもですが、少年たちが並んで群舞をするのがすごい! 演じている役者さんたちは、役より年長だと思いますが、ダンスをしていると少年に見えてくるんです。新聞の卸値が値上げされたことをきっかけに彼らはストライキを起こすのですが、そのときの楽曲「ブルックリンがここにいる」も、すごく盛り上がります。

他にもいい曲があり迷いましたが、今回はジャックが、いつか行きたいと歌い上げる「サンタフェ」を選びました。ジャックは「今の暮らしを抜けだして、サンタフェに行く」という夢を見ていますが、彼が知っている「ここではない良いところ」は、行ったことのないサンタフェしかない。そう考えると切ないですよね。劇中、この歌は2回出てきますが、京本さんの歌の印象は違って聞こえました。本当にいい歌なので、ぼくもいつか歌ってみたいです。

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撮影/黒澤義教

この作品は、実話を元に作られたそうです。日本にも新聞配達のアルバイトはありますが、子供たちが新聞を売ることはまずありませんよね。でも、当時のニューヨークでは、親がいない子供たちが大変な思いをして新聞を売っていた。自分たちでお金を払って新聞を買い、それを街に出て売るんです。売れ残ったら自分が損するなんて、すごい過酷な環境です。そんな中で新聞が値上げされ、彼らは元に戻してほしいと交渉しただけなのに、それが通らずにストライキをするしかなくなってしまう。子供相手にそんなひどいことをしなくてもいいじゃないかって思います。途中で、足が不自由なクラッチーが捕まってしまうのも切ないです。

それでも、困難に負けずに前進していく少年たちの姿は素敵だし、重くなり過ぎないところがディズニーミュージカルらしいところです。小池修一郎先生の演出によるところも大きいと思いますが、歌とダンスでとにかく観客を元気にさせてしまう。そもそも、「元の値段に戻してほしい」という少年たちの戦いを、ミュージカル化して華やかに見せるのがすごいし、この物語をピックアップしたディズニーもすごい! 今度、映画をちゃんと見て、当時の社会や歴史についても学んでみたくなりました。

昨年はさまざまな作品が新型コロナの影響で中止になってしまいました。でも、「ニュージーズ」のように復活した作品もあります。ぼくがコンサート版に出させていただいた「ジャージー・ボーイズ」も、来年秋にミュージカル版として帰ってくることが決まりました。

「ニュージーズ」の全体の士気がすごく高く見えたのは、中止にも負けずに関係者全員がチャレンジし続けたからだと思いますし、そんな皆の姿はニュージーズの世界にぴったりでした。登場人物もそう多くないですし、テーマも分かりやすいので、ミュージカルを見たことがない人にもおすすめしたい作品です。

皆様、1年間僕の聴活をいつも読んで聴いて頂き、本当にありがとうございます。
僕も皆様と共有することでさらにミュージカルの魅力を知ることができました。
また来年からもぜひよろしくおねがい致します!!
良いお年を!

聞き手・道丸摩耶(産経新聞)
撮影・黒澤義教

♪今月のミュージカルソング

Disney’s NEWSIES – Santa Fe: Alan Menken and Jeremy Jordan

東啓介(Higashi_Keisuke)

1995年7月14日生まれ、東京都出身。2013年デビュー。舞台『剣乱舞』など気舞台で活躍し、『5DAYS 辺境のロミオとジュリエット』『命売ります』『Color of Life』などの作品で主演を務める。近年はミュージカル界の新星として頭角を現している。2020年11月にはファーストソロコンサートも開催。2021年1月〜3月、NTV「ウチの娘は、彼氏が出来ない‼︎」にイケメン整体師・渉周一役で出演し話題に。 2021年3月〜4月ミュージカル『イン・ザ・ハイツ』(神奈川・大阪・名古屋・東京公演)に出演、6月〜7月ミュージカル『マタ・ハリ』でアルマン役に再び挑み好評を博した。2022年秋に開幕するミュージカル『ジャージー・ボーイズ』にボブ・ゴーディオ役で出演が決定した。

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Stage Information

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ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』

脚本:マーシャル・ブリックマン&リック・エリス
音楽:ボブ・ゴーディオ
詞:ボブ・クルー
演出:藤田俊太郎

出演:中川晃教、花村想太、藤岡正明、尾上右近、東 啓介、有澤樟太郎、spi、大山真志 ほか

会場:日生劇場(東京)
製作:東宝/WOWOW

公演公式サイトはこちら

【Story】

はじまりはニュージャージー州の貧しい片田舎。
“天使の歌声”を持つフランキーは、成功を夢見る兄貴分のトミーとニックのバンドグループに迎え入れられる。早速3人での音楽活動をスタートさせるが、フランキーの歌声をもってしてもグループには未だ何かが欠けていた。
鳴かず飛ばずの日々が続く中、作曲の才能溢れるボブが加入する。フランキーの歌声に魅了されたボブは、その声のために曲を書きたいと思うのだった。しかし金もコネもない彼らを待っていたのは 過酷な下積み生活。そんな中でも彼らは自分たちの音楽を磨き、それぞれの才能を開花させていく。そしてついにボブの楽曲と4人のハーモニーが大物プロデューサーの目に留まった。彼らは「ザ・フォー・シーズンズ」としてレコード会社と契約し、《Sherry》をはじめとする全米ナンバー1の楽曲を次々と生み出していく。ヒット曲につぐヒット曲、長期にわたるツアーで、家族を顧みずに酒と遊びを繰り返す日々が続く。富も名声も手にしたはずの4人だったが、輝かしい活躍の裏では、莫大な借金やグループ内の確執、家族の不仲など、様々な問題が勃発し、彼らの固い絆を蝕んでいった。それらはやがて取り返しのつかない大きな軋轢となり、グループを引き裂くのだった。
成功と挫折。あまりに劇的な春夏秋冬を駆け抜けていく4人がその先で見たものとは―。

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