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COLUMN

【#29】何を歌ってもいい「Sunday」(映画『tick,tick…BOOM!』)|東啓介と聴活♪

5月24日の『さよなら中野サンプラザ音楽祭』に、「JBB」の一員として出演させていただきます。『ジャージー・ボーイズ』のチームBLACKでの出演となりますが、ジャージー以外の曲、それこそJ-POPなんかも歌います。4人ならではのコーラスやハーモニーを楽しんでいただきたいですし、ぼくも4人の声がはまった時の喜びを再び感じられるのが楽しみです。

さて、昨年の「聴活」で『RENT』を取り上げた(第18回)ときにも少し触れましたが、今回は『RENT』の作者であるジョナサン・ラーソンをモデルにした映画「tick,tick…BOOM!(チック、チック…ブーン!)の聴活です。2021年にNetflixが制作した映画で、このコラムのために、昨年に続いて今回、2回目の鑑賞をしました。2回見てもやっぱり楽しかった。実在した人物の歴史を知れるのはおもしろいですね。


Netflix映画『tick, tick… BOOM! : チック、チック…ブーン!』 独占配信中

あるダイナーでウェイターとして働くジョナサンは、ミュージカルの作曲家を夢見ていて、もうすぐ30歳になるのを前に、オリジナルミュージカルの楽曲が作れなくてあせっています。友人や彼女も夢を諦めて定職に就く中、当時は不治の病だったHIV(エイズ)にかかった友人たちを見ながら、時間は有限なのだと気づく。そこで、当初計画していた宇宙人が出てくる壮大なSFでなく、身の回りのことを作品にしてみたいと思うようになって、それが『RENT』に繋がっていくわけです。


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物語は割と明るい感じで進んでいくんですが、最終的にハッピーなのかそうじゃないのか、あなたはどう思いましたか?と話しかけられそうなラストで、そういうちょっと考えさせられるところもすごく好きなパターンです。初めて見たときより、「友情」の比重が重いように感じられましたね。


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そして、今回選んだ1曲は、ジョナサンが、ダイナーで歌う「Sunday」という曲。すごくきれいなメロディーなんですが、実は歌詞がめちゃくちゃ。日曜日は店が繁盛しちゃうけど、そうならないことを祈って今日を乗り越えよう、みたいな。案の定、レジはめちゃくちゃ混んじゃって、お客さんが会計早くしろよ、と言ってくる中で、「家で食べればいいじゃん。わざわざ店に来なくてもいいのに」と本音を歌っちゃったり(笑)。本当にどうでもいいことしか歌っていないただの愚痴の歌詞が面白すぎました。


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この映画の監督はミュージカル『イン・ザ・ハイツ』を作ったリン=マニュエル・ミランダ。ダイナーがバタンと倒れてレジになる様子など、映像の描写からミュージカルらしさを感じます。『イン・ザ・ハイツ』にも通じる、舞台と映像の融合というか、舞台らしさが全面に出ている曲でした。

それにしても、この映画、舞台にできるんじゃないかな。『tick,tick…BOOM!』を見れば、『RENT』の見方も変わると思うし、病気のことや差別のこと、『RENT』で描かれていた家賃や電気代を払えない暮らしについても、ジョナサンがどういう思いだったかが分かって、解像度が上がります。『RENT』の解説をしてもらっているようなおもしろさがあって、改めて『RENT』が見たくなりました。でも、ジョナサンはその『RENT』の初日を見ることなく亡くなったんですよね。

ミュージカル界の巨匠、スティーヴン・ソンドハイムが一目置いていたくらいですから、ジョナサンにはもっと生きて作品を残してほしかったです。でも、『RENT』が売れたら、絶対にあの宇宙人のミュージカルを作っちゃうでしょうね。実はあるんだよ、昔書いた大作が、って(笑)。

映画全体を通じて感じるのは、ジョナサンの音楽への愛。もちろん曲が書けなくて切羽詰まったり、早く書かなきゃとあせったりする描写もありましたが、ミュージカルの作曲家になりたいという熱量をすごく感じました。僕も曲を作っていますが、ああいう風に書けたらいいな。世の中の、作曲されてる人ってすごいなと改めて思いました。自分ももっと曲を作りたいと創作意欲を刺激されましたし、作品を作っているいろんな人の秘話や裏話を知りたくなりました。でも一番勉強になったのは、どうでもいいようなことでも曲になるし、何を歌ってもいいんだと知れたことでした!

聞き手/道丸摩耶(産経新聞)


今月の聴活SONG♪

『tick, tick… BOOM!』“Sunday” Official Song Clip | Netflix


東啓介(Higashi_Keisuke)
1995年7月14日生まれ。2013年デビュー。『5DAYS 辺境のロミオとジュリエット』『命売ります』『Color of Life』などの作品で主演を務める。近年はミュージカル界の新星として頭角を現している。2020年11月にはファーストソロコンサートも開催。最近ではミュージカル『イン・ザ・ハイツ』(神奈川・大阪・名古屋・東京公演)やミュージカル『マタ・ハリ』に出演。映像作品でも、NTV「ウチの娘は、彼氏が出来ない‼︎」やTBS火曜ドラマ「ファイトソング」などに出演し話題に。最近では、TX木ドラ24「チェイサーゲーム」やMBS「闇金ウシジマくん外伝 闇金サイハラさん」に出演。2022年10月〜12月ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』にボブ・ゴーディオ役で出演。2023年1月〜2月ミュージカル『ザ・ビューティフル・ゲーム』、4月〜5月には舞台『二次会のひとたち』に出演。
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