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COLUMN

【#6】表現の幅を広げてくれた「96,000」(イン・ザ・ハイツ)|東啓介と聴活♪

緊急事態宣言の発令により千秋楽が早まってしまいましたが、ブロードウェイミュージカル『イン・ザ・ハイツ』が4月末に閉幕しました。作品に出てくる歌はどれも聞いているだけで気分が乗ってくる曲が多いんですが、中でも好きなのが、「96,000」です。いきなり、ベニーの「もし明日、俺が宝くじを当てたら」というラップから始まるので、お客さまは「何だ?」となるかもしれませんが、明るい曲調と盛り上がり方に、テンションがあがります。ステージにいるハイツの人々も、当たってもいない9万6千ドルの宝くじが当たったらどうしよう?と大騒ぎ。「IF」の話でこれだけ盛り上がれるハイツの人たちが愛おしく感じられるシーンです。

初めてこの曲に触れたのは、7年前の初演のときの映像。「かっこいい!」というのが第一印象でした。でも、内容をしっかり聞くと、「もし9万6千ドルが当たったら」という歌詞で、曲の格好良さと内容のギャップがおもしろくて!

9万6千ドルというのは日本円で約1,000万円らしいんですが、日本で暮らしていたら、例えばちょっと高級な車を買ったらそれで終わってしまうほどの価値。でも、ハイツの人たちはあんなに盛り上がるんです。ぼくが演じたベニーは、いつか自分でタクシー会社を興したいと思っている役ですが、果たしてそれは1,000万円でできるんでしょうか。ちなみに出演者の間では、もし1千万円が当たったら「貯める」という答えが一番支持を集めました(笑)。

カッコいい曲ではあるんですが、ラップは初挑戦でしたし、最初はかなり苦労しました。英語だと子音もきいていて、しゃべるように歌っているんですが、日本語にして歌詞を先行させると、歌というよりせりふになってしまう。ウスナビ役のひとり、平間(壮一)くんは、海外のラッパーの歌を聞いて研究していました。ぼくも、1幕3曲目の「Benny’s Dispatch」という歌で、交通状況を説明する早口のラップに特に苦しみました。TBS赤坂ACTシアターを始め、今回は大きい会場が多かったので、音が反響し過ぎて聞こえにくいこともあって…。普通のミュージカルなら、ちょっとつまっても追いつけるけれど、今回はぎちぎちに言葉が詰まっているので、止まったら、はい、さようなら(笑)。

オーケストラが前(オーケストラボックス)じゃなく後ろにいたのも、難しかった原因のひとつです。指揮者の方とコミュニケーションを取るのが難しいし、会場も広いので、後ろから聞こえるリアルな音とスピーカーで回ってくる音にタイムラグが出てしまう。ラップは一定のテンポで曲が刻まれていくので拍が重要になるんですけど、メロディーがないので、拍だけ聞いても、「今どこ?」みたいになることも多くて。すごく難しかったですね。

この曲の魅力は、宝くじが当たったらどうしよう、と夢の話で盛り上がりながらも、最終的には、周りの皆がいてこそ自分だということを教えてくれること。あんなに盛り上がっていたのに、ハイツの皆の9万6千ドルの最終的な使い道はすごく現実的。先のことを考えず今を楽しむこと、お金ではないものを大事にすること。そんなことを教えられました。

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『イン・ザ・ハイツ』はアメリカで映画化されていて、日本でも今年、公開される予定です。自分が出演した作品が海外で映画化されるなんてなかなかない経験なので、どんな映画になっているんだろうと楽しみにしています。新しい予告映像が解禁されるたびに、すぐチェックしているんです(笑)。このシーンはあそこだろうな、なんて想像しながら、公開を待っています。

コロナ禍でなかなか人に会えなかったり、直接顔を合わせずにしゃべらないといけなかったりする中で、『イン・ザ・ハイツ』は改めて大事なものを教えてくれました。作品自体も素敵でしたし、ラップに挑戦したことで歌の表現の幅が増えたかなと感じています。ベニーもちょっとネガティブな要素を持っていて、いい曲もたくさん歌えるし(笑)、自分と似ている部分が多く、感じたままに演じられました。今やって良かったと思える作品になりました。

とはいえ、コロナ禍の上演ということで、劇場で見ることができなかった人もいらっしゃるでしょう。映画をきっかけにこの作品を知ってくださる人もいらっしゃるでしょうし、またいつか、挑戦できたらいいですね!

聞き手・道丸摩耶=産経新聞
撮影・三尾郁恵=産経新聞

♪今月のミュージカルソング

「96,000 – In The Heights Motion Picture Soundtrack (Official Audio)」|『イン・ザ・ハイツ』

東啓介(Keisuke Higashi)

1995年7月14日生まれ、東京都出身。2013年デビュー。舞台『剣乱舞』など気舞台で活躍し、『5DAYS 辺境のロミオとジュリエット』『命売ります』『Color of Life』などの作品で主演を務める。近年はミュージカル界の新星として頭角を現している。2020年11月にはファーストソロコンサートも開催。NTV「ウチの娘は、彼氏が出来ない‼︎」にイケメン整体師・渉周一役で出演し話題に。ミュージカル『イン・ザ・ハイツ』(神奈川・大阪・名古屋・東京公演)に出演。6月〜7月、ミュージカル『マタ・ハリ』でアルマン役に再び挑む。

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Stage Information

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ミュージカル『マタ・ハリ』

劇作・脚本:アイヴァン・メンチェル
作曲:フランク・ワイルドホーン
歌詞 ジャック・マーフィー
オリジナル編曲・オーケストレーション ジェイソン・ホーランド
訳詞・翻訳・演出 石丸さち子

出演:マタ・ハリ(Wキャスト)/柚希礼音 愛希れいか
ラドゥー(Wキャスト)/加藤和樹 田代万里生
アルマン(Wキャスト)/三浦涼介 東啓介
アンナ/春風ひとみ
ヴォン・ビッシング/宮尾俊太郎、他

【愛知公演】2021年7月10日(土)〜11日(日)刈谷市総合文化センター アイリス 大ホール
【大阪公演】2021年7月16日(金)〜20日(火)梅田芸術劇場メインホール

公演公式サイトはこちら

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