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INTERVIEW

紅ゆずるさん「カッコよく美しく、そして面白く」

元宝塚歌劇団星組トップスターの紅ゆずるさんがミュージカル・コメディの最高傑作に出演!
豪華客船を舞台に、個性豊かな乗客たちの恋の行方を描くミュージカル・コメディ『エニシング・ゴーズ』。トニー賞3部門を受賞し、コール・ポーターの名曲の数々で綴るミュージカル・コメディの傑作で、紅さんが演じるのはニューヨークで一番のナイトクラブの大スター、「リノ・スウィーニー」。紅さんが本作にかける意気込みをお聞きしました。

台詞はすべて関西弁に変換して、感情を自分に落とし込みます

――紅さんが2019年10月宝塚歌劇団を退団後、初のブロードウェイミュージカル出演となる『エニシング・ゴーズ』。出演の話を聞いたときはどう思われましたか?

「えっ、私でいいんですか?」と思いました。「どうして私なんですか?」とお聞きしたら、「リノの天真爛漫さが紅さん自身に近いから、自然体の紅さんで演じたらぴったりな作品になると思う」と言っていただきました。

実は私は宝塚歌劇団を退団するとき、先のことは何も考えていなかったんです。宝塚はトップになると必ず退団の時が来る。私は『スカーレット・ピンパーネル』で大劇場のトップお披露目公演をさせていただいたときに「大劇場5作品と決めて、やりきる」と心に決めました。自分では宝塚ですべてを出し尽くして退団したので、その先はどうするのかまったく考えていませんでした。でも、出演のお話をいただけるのはとてもありがたいことですし、コメディ作品のお話をいただいたことが何より嬉しかった。自分としては挑戦だなと思いますが、私にできる最大のことをさせていただきたいと思って、出演を決意しました。

――男役だった紅さんが、女性役を演じるのには決心が必要でしたか?

そうですね。でも、私は男役をやっていた時から、娘役さんのネイルや髪形の変化にすぐ気づくタイプで(笑)。退団した後は何を着たらよいのかわからないと思っていたんですが、いざスカートが履けるとなったら「ああ、これも着てみたい、これも」という気持ちが湧き上がってきました(笑)。スカートを履いて女性役を演じることにそれほど抵抗はありません。

実は自分の中では、女性役を演じることより標準語で演じることの方がハードルが高いです。私は関西人なので、標準語で話すときは頭の中で一つ一つイントネーションを考えないといけない。宝塚在団中は台本をいただいたら、まず台詞をすべて関西弁に直して感情を自分の中にリアルに落とし込んでから、標準語で話すようにしていました。

――関西弁に直すのですか! 面白いですね。

そうなんです。関西弁で「〇〇やんか」とか言葉を直して、台本を自分の感情の流れに変換していました。宝塚時代は関西弁に直した後に男性の感情を自分のものにする作業があるから、もう1段階変換しないといけない。女性役を演じるときは関西弁に直してから、その女性の特徴を生かした役作りをするという作業になります。宝塚時代との違いに早く慣れたいですね。

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――紅さんが演じるリノはナイトクラブの大スターという役どころ。今はどんなイメージを持っていらっしゃいますか?

宝塚の先輩でいらっしゃる大地真央さんと瀬奈じゅんさんが演じられた大作ミュージカルで再演ですが、私にとっては新作という気持ちでいます。原田先生やキャストの方々とセッションして、一からすべて作っていきたい。自分が台本と音楽から感じ取ったリノを演じたいと思います。

――なるほど。

それから、『エニシング・ゴーズ』は豪華客船でニューヨークからロンドンに向かう話なのですが、実はタイタニック号とまったく同じ航路の逆向きだそうです。私はタイタニック号にとても興味があって映画を何度も観て、タイタニック号についてたくさん調べた時期がありました。タイタニックはロンドンからニューヨークに向かう悲劇の船で目的地には着けなかったのですが、『エニシング・ゴーズ』の船はニューヨークから目的地のロンドンにちゃんと着いて、ハッピーエンドで終わる。同じ航路でもまったく違う人生があるんだなと思います。リノの役作りをするにあたっては、こういうところもヒントにできたらと思いますね。

――原田先生は紅さんが主演された『ベルリン、わが愛』の作・演出を担当されているので、既に確かな信頼関係がおありなのでしょうね。

はい。原田先生は私が研究科2年(初舞台を踏んで2年目)のときに宝塚歌劇団に入団されたので、入団時期でいったら1期違い。私の方が1年上です(笑)しかも、地元もとても近くて、私が行った中学の隣の中学校に通っていたんですよ。原田先生がまだ演出助手をされていて、私も下級生の頃、何の根拠もないのに「私がトップになったら泣くやろ?」と先生に聞いたら「うん、泣く」とおっしゃっていました(笑)。今、原田先生は演出家として様々な賞も受賞されて、私も宝塚のトップから次の段階に行くというタイミングで、こうしてご一緒できるのはとてもありがたいご縁だなと思います。同じルーツがある二人だからこそ、お互いに遠慮しないでセッションできるのは強みかなと思います。

――共演の皆様はいかがでしょうか。

(元宝塚歌劇団雪組トップ娘役)愛加あゆちゃんは(元宝塚歌劇団星組トップ娘役)夢咲ねねちゃんの妹さんなので、自分の中では勝手な親近感がありますね。私が宝塚歌劇を初めてテレビで見たのが、一路真輝さんがトップスターだったとき。擦り切れるほど一路さんのビデオを観ていたので、まさかご一緒に舞台に立てる日が来ようとは思わなくてドキドキしますね。リノが首ったけになるビリー役の大野拓朗さんやオークリー卿の廣瀬友祐さん、平野綾さん、市川猿弥さん、陣内孝則さんとは初めて共演させていただきますので、ご一緒するのが楽しみです。

実は宝塚歌劇では、トップスターが先に役作りをしないと周りの人が役作りできないので、私は誰よりも早くキャラクターを決めるようにしていました。今回は私が先に役作りするというよりは、皆さんと一緒にコミュニケーションをとりながら役を作っていくことになると思うので、それもとても楽しみですね。公演期間も長いので皆さんと早く仲良くなって、千穐楽には「皆さんと一緒に共演できてよかった」と思える作品にしたいです。

アトラクション前のような高揚感を持てば、ミュージカルが3倍楽しめる

――出演を決められたときは、この作品がミュージカル・コメディであることも決め手の一つだったとのことですが、紅さんご自身の中では「笑い」が一つのキーワードになっている?

そうですね。宝塚の男役の基本は「カッコよく、美しく」。私が演じる男役にはそれに「面白く」が入ると良いのではないかと思って。以前、(宝塚歌劇団の先輩)大地真央さんや真矢ミキさんを観て「あんなにカッコいいのに、あんなに面白いことをされるんだ」と思って、「私もそうなりたい」と思いました。実際、男役の中には「コメディはあまりやりません」という方もいらっしゃったと思います。でも、私は自分が男役としての階段を上るためにはどうしたらいいかと考えたとき、「人にないものをやらなければいけない」「それは笑いだ」と思ったのです。

実際に舞台で面白いことを演じて、お客様から爆笑の声をいただいたときは本当に嬉しかった。私が今まで観てきた宝塚も大好きですが、宝塚大劇場がこんなに爆笑する空間になっていることに心から共感しました。違う組の上級生がわざわざ花道から舞台を観て大笑いしてくださったり、皆さんに「面白いね」と言っていただけることが本当に嬉しかったんですね。私は人を笑わせて、楽しい気持ちになっていただくことが大好き。皆さんが笑顔になって「ちょっと悩んでいたけど、それはもういいや」「明日も仕事を頑張ろう」と思っていただける舞台を務めたいなと思います。

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――最後に、お客様が『エニシング・ゴーズ』を楽しむコツを教えてください。

日本のお客様は「客席に座って、さあ、観させてもらいます」という感覚でいらっしゃる方が多いと思いますが、「自分たちもこの作品を思い切り楽しむぞ!」という気持ちで来ていただけたら、舞台をより楽しめるのではないでしょうか。ディズニーランドのアトラクションに乗る前みたいな高揚感を持っていただくと、舞台が3倍4倍楽しくなると思うのです。「今日は客席で笑うか!」というテンションでいらっしゃったら、演じる私たちまでパフォーマンス力がより一層高まると思います。舞台と客席が一体となった、最高に楽しい一日を満喫していただきたいと思いますね。

取材・文/大原 薫(演劇ライター)
撮影/吉原朱美
衣裳/MSGM / アオイ



紅ゆずる(Kurenai Yuzuru)

8月17日生まれ。大阪府出身。2002年、宝塚歌劇団に第88期生として入団・初舞台を踏む。星組に配属。2016年 星組トップスターに就任。新人公演(2008年)初主演作である『THE SCARLET PIMPERNEL』で、2017年大劇場トップお披露目公演を行う。2019年 『GOD OF STARS-食聖-/clair Brillant(エクレールブリアン)』で退団。2021年6月新橋演舞場『熱海五郎一座』に出演、8月明治座にてブロードウェイ・ミュージカル『エニシング・ゴーズ』で主演、リノ役に挑む。

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ブロードウェイ・ミュージカル『エニシング・ゴーズ』

※予定枚数終了しました※

作詞・作曲:コール・ポーター
オリジナル脚本:P.G.ウドハウス&ガイ・ボルトン、ハワード・リンゼイ&ラッセル・クラウス
新脚本:ティモシー・クラウス&ジョン・ワイドマン
翻訳・訳詞:青井 陽治
演出・潤色:原田 諒(宝塚歌劇団)

出演:紅ゆずる / 大野拓朗 廣瀬友祐 愛加あゆ /
一路真輝 / 平野綾 市川猿弥 / 陣内孝則

会場:明治座(東京)
主催:ミュージカル『エニシング・ゴーズ』実行委員会
製作:東宝
>>>詳細は公式HP

【販売対象公演】
2021年8月4日(水)・13日(金)・15日(日)・25日(水)13時、19日(木)18時

販売枚数:各公演20枚

料金:

S席 定価13,500円特別価格 12,200円
※別途、送料・手数料が1件につき600円かかります 

※6歳以上有料/5歳以下のお子様のご入場はご遠慮ください 

※お一人様申し込み2枚まで 

※座席の指定はできません

【Story】

大恐慌からようやく落ち着きを取り戻した1930年代半ばのニューヨーク。
ナイトクラブの大スター、リノ・スウィーニー(紅ゆずる)はウォール街で働くビジネスマン、ビリー(大野拓朗)に首ったけ。彼女は折からのロンドン行きにビリーを誘うが、つれない返事しか返ってこない。それもそのはず、ビリーは社交界の華、ホープ(愛加あゆ)にゾッコンなのだ。
出航の日、ビリーは偶然にもリノと同じ船でロンドンへと旅立つ上司のホイットニー社長(市川猿弥)を見送るため港へやってくる。そして、あろうことか母親のイヴァンジェリン(一路真輝)に連れられたホープが、英国紳士オークリー卿(廣瀬友祐)と船上で結婚式を挙げることを知るのだった。なんとか阻止しようと慌てて船に飛び乗るビリー。そこへグラマラスなショーガールを連れたリノ一行と、神父に変装した指名手配中のギャング、ムーンフェイス(陣内孝則)が情婦のアーマ(平野綾)を連れて乗り込んできたから、さあ大変!それぞれの想いと思惑を乗せた豪華客船S・S・アメリカン号。リノをはじめ、個性豊かな乗客たちの恋の行方は……?

一筋縄ではいかない、何でもあり(エニシング・ゴーズ)な船旅が、今始まる!!

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