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INTERVIEW

伊礼彼方さん「扉を開いて待っています」

今年、デビュー15年を迎えた俳優の伊礼彼方(いれい・かなた)さんが3月16〜28日、東京・下北沢の小劇場楽園で、英国の劇作家、ハロルド・ピンターの不条理劇『ダム・ウェイター』に出演します。河内大和(こうち・やまと)さんとの2人芝居、お稽古も大詰めの伊礼さんに、『ダム・ウェイター』の話や、5月から帝国劇場で再演される『レ・ミゼラブル』の意気込みなどを聞きました。

――2006年のデビューから15年、おめでとうございます。振り返っていかがですか?

ゴールを決めてやっているわけではないので、気づいたら15年でした。もともと周年にはこだわらないタイプなんですが、コロナ禍で世の中の気持ちが下を向いている時期ですから、それなら祝おう、と思いまして。まずはソロライブをやったり(緊急事態宣言で無観客配信に)、色々な偶然が重なった結果、2人芝居『ダム・ウェイター』を企画しました。悪いことが起きると、何か楽しいイベントや、良い思い出に変えてしまおうと。ピンチをチャンスに変えたくなる性格なんですよね。

――『ダム・ウェイター』上演までのいきさつを教えてください

コロナの影響で、この時期の作品が二転三転して飛んでしまい、小劇場楽園が3月に空いているという情報をもらったので、普段できないことをやりたいと思いました。ミュージカルのお仕事に入るとどうしても長丁場になるので、合間で違うチャレンジをしたいと思っていたんです。そこへちょうど、河内(大和)さんからかなり久しぶりに、実はミュージカルのオーディションについて相談を受けることがあり、河内さんもこの時期空いてしまったという話を聞き、「ふたりでやらない?」と声をかけました。せっかくやるなら普段の華やかな作品とは違うものを、と思ってこの作品に決まりました。

スタッフィングも自分たちで行い、演出家の小川絵梨子さんの紹介で、演出は大澤遊さんにお願いしました。一緒にお仕事をするのは初めてですが、とにかくハロルド・ピンターに詳しい!細かいところまでよく見てくれて、頼りになる演出家です。頭脳となる大澤さんがいて、ぼくらふたりがプレイヤーで、すごくいいバランスです。

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ガス/伊礼彼方(写真左)、ベン/河内大和

物語は、ガスとベンという2人の殺し屋が地下室に呼ばれて、仕事の指示を待つところから始まります。「楽園」は地下にあるので、お客様にも作品と重なる不穏な感覚を味わっていただけたらいいなと思います。座席も両サイド2方向に分かれているので、ぼくの役、ガスと河内さんの役、ベンの名前から、「ガスside」「ベンside」と名付けました。どちらかからしか見えないシーンもあるので、1度でなく別の席で2度見てくれたらうれしいです。観え方によって感情移入の仕方も変わると思います。明るくて派手な舞台ではありませんが、良かったら、一緒に地下室にいる気分になって頂き、今まで触れなかった新しい扉を開きましょう!

――2人芝居は初めてですか?

初めてです。昨年、新型コロナによる緊急事態宣言が解除されたときに、同じ下北沢の本多劇場で『DISTANCE』という企画で書き下ろしのコメディ一人芝居を無観客でやりました。歌も盛り込んだ30分の一人芝居でしたが、コロナがなかったらやることはなかったと思います。でも、1人芝居も初めてでしたが、やったことで確実に僕自身に力がついたのを感じました。その後に出演させていただいたミュージカルでも、今までとは違う、余裕が持てるというか、非常に楽になった部分があったんです。

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仮に3時間の作品だったとしても、出演者5、6人で振り分けると1人あたりの時間は30分くらいですよね。それを1人でこなすわけですから、体力の消耗も精神的な負担も全然違います。しかも今回は70分の2人芝居で、話のきっかけはほとんどぼくが演じるガスから。大げさに言うと、最初の30分は一人芝居みたいな感じなんです。自分が次の話題を忘れちゃったら、作品が終わってしまう。修練というか、修行というか、すごく怖い経験です。なんでわざわざこんな大変な作品を選んでしまったんだろう(笑)……と思いつつも、楽しくなってくるとたまらなく面白いですね。楽しめるまでは苦しいだけですけどね(笑)。

でも、こういう経験をすることによって、例えば歌やダンスがあるミュージカルでの表現の仕方も変わったりする。せっかくなら今後の作品でさらにいいパフォーマンスができるように、自分に大きなチャレンジを課したいと思いました。とはいえ、やはり2人芝居は負担が大きいので、せめてもうひとりいてくれたらいいな(笑)。次は、3人芝居がいいですね!

――5月からは、『レ・ミゼラブル』も開幕します。前回に引き続き、ジャベール役ですが、意気込みをお願いします

前回は初めてでいっぱいいっぱいだったので、今回はもう少し余裕をもってやれたらなと思います。一度見た景色を、次はどう自分のものにできるか。のまれないようにしたいと思います。

ジャベール役にチャレンジしたのは、ひとつの役を掘り下げていきたいと思うようになったからです。これまで、多いときは年に6本のお芝居をやらせてもらいましたが、どんなに長くても1カ月、2カ月で終わってしまいます。せっかく築いたものがなくなり、また新しい役にチャレンジする。その繰り返しで、消耗していくばかりで何も残らない気がしたんです。役を手放すのが嫌になったんです。年齢とともに、自分の中に残していきたいという思いを感じるようになって、そのときに出会ったのがジャベール役でした。今後も自分が呼ばれるかどうかは分かりませんが、それもひとつのチャレンジ。継続的に同じ役を経験することで自分の幅も広がるでしょうし、役が深まると思います。まだうまくいかないかもしれませんが、前回よりいろんなチャレンジをしていけたらと思います。2021年版のジャベール(の魅力)をお見せできるよう、がんばります!

――コロナ禍は長期化し、まだ舞台が見に行けない人もいらっしゃいます。伊礼さんからファンの方にメッセージをお願いします。

ぼくはつらい時期だからこそ、楽しい企画をしたいという考えに傾きますが、それができない人もいらっしゃいます。ぼくからは何も言えませんが、演劇界はコロナ禍でも負けずに作品づくりをしています。

たまたま15年間、現場にも恵まれて、ぼくの今があります。もちろん『ダム・ウェイター』をご覧いただければうれしいですが、大声で観に来てください!って言えない現実でもあります。それでもぼくらは常に、扉を開けて待っています。そろそろ観劇の為に出られるな、というタイミングが来たら、明日でも1年後でも、いつでも劇場に気軽に会いにきてください。以前のように、皆が自由に行き来できる日を夢見ながら、ぼくはこれからも活動し続けていきます。皆さまの準備が整ったら、劇場でお会いしましょう! それが今、ぼくに言える言葉です。

取材・文/道丸摩耶(産経新聞)


伊礼彼方 (Irei kanata)

1982年、沖縄出身の父とチリ出身の母との間に生まれ、幼少期をアルゼンチンで過ごす。中学生の頃より音楽活動を始め、2006年『テニスの王子様』で舞台デビュー。08年『エリザベート』ルドルフ役に抜擢され、以降、ジャンルを問わず多数のミュージカル、ストレートプレイ等で多彩な役柄を演じ幅広く活躍中。主な出演作に、舞台『レ・ミゼラブル』 『ジャージー・ボーイズ』など。2019年には藤井隆プロデュースで初のミュージカル・カバー・アルバム「Elegante」をリリース。2021年5月より『レ・ミゼラブル』(ジャベール役)帝国劇場他出演予定。

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Stage Information

本多劇場グループnext
『ダム・ウェイター』
THE DUMB WAITER by Harold Pinter

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会場:下北沢・小劇場楽園
期間:2021年3月16日〜3月28日・全20公演

出演:伊礼彼方 河内大和

原作:ハロルド・ピンター
翻訳:喜志哲雄
演出:大澤遊 美術・衣裳:池宮城直美 照明:鷲崎淳一郎(ライティングユニオン) 音響:星知輝(本多企画) 舞台監督:村田明(クロスオーバー)

宣伝美術:魚住和伸(Spacenoid Company Inc.) 宣伝写真:BUN 票券:能崎純郎(BellaVita)
制作:筒井未来(本多企画) プロデューサー:I.K(KANATA LTD.) エグゼクティブ・プロデューサー:本多愼一郎
協力:株式会社本多企画 主催・製作:株式会社KANATA LTD.

チケット料金:全席指定6,500円(税込) 【ベンside】【ガスside】

チケットに関するお問い合わせ:Ticket.info@BellaVita33.com
お問合せ:【ダム・ウェイター事務局】dumb-waiter@kanata-ltd.com

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