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INTERVIEW

早霧せいなさん《後編》「エンタメは絶対なくならない」

1937年、内戦のさなかに大規模爆撃による壊滅的な被害を受けたスペイン・バスク州の都市、ゲルニカ。画家、ピカソの筆をつき動かした悲劇に着想を得た舞台『ゲルニカ』が9〜10月、東京・PARCO劇場などで上演される。演出家、栗山民也さんが20年以上前にピカソの「ゲルニカ」と出会って以来あたためてきたという構想が、劇作家、長田育恵さんの脚本で実現。戦争の足音が迫るなか、ゲルニカに生きる人々の日常から、個人ではあらがえない大きな力を前にした人間の苦しみと強さ、未来への希望を描き出す意欲作だ。ゲルニカの人々を取材する女性特派員記者、レイチェルを演じる元宝塚歌劇団雪組トップスター、早霧(さぎり)せいなさんに意気込みなどを聞いた。

>前編はコチラから

チケットを買うところからが「観劇」

――新型コロナウイルスの影響で、エンタメ業界も自粛を余儀なくされました。早霧さんは自粛期間中、どんな生活をされていたのですか?

動画配信をよく見ていましたね。次はこれ、次はこれ、と忙しかったです。金曜、土曜、日曜の夜7時10時にやたら配信が多くて、テレビ、パソコン、携帯で全部違うのを見て、情報過多になっていました。眼精疲労からドライアイになり、眼科に駆け込んだほどでした(笑)。
タレントの渡辺直美さんがご飯を食べる配信が楽しくて、大笑いしながら見ていましたね。他人の生活をのぞき見ているような感覚もあって、一視聴者としてファンモードで楽しめました。人ってそこに存在するだけで元気をもらえるんだ、と思ったときに、自分にもできることがまだあるんじゃないかと可能性を知ることもできました。
私自身も自粛期間中のみファンクラブ限定の生ライブ配信を行い、目の前に人がいなくても、そこでつながっているという安心感に支えられました。皆さんを元気づけたいと始めたのに、皆さんのコメントの勢いや文字から得られるエネルギーにパワーをいただいて…。つくづく、持ちつ持たれつですね。

――ようやくエンタメも少しずつ再開しています。この期間を経て何か変化はありましたか

やっぱりお仕事は楽しいって思います(笑)。私は表現したいタイプの役者ではなく、作品の一部になりたいとか、誰かと何かを作ること自体が好きなタイプだと思っていたんです。でも、もしかしたら表現すること自体も好きなのかもしれません。
演劇界はまだ手探りの最中ですが、自粛期間を経て確信したのは、「エンターテインメントは絶対なくならない」ということです。エンタメから活力をもらい、人生の半分をエンタメ業界で生きてきた私にとって、エンタメは生きる上で欠かせないもの。水や食べ物と違ってなくても生きていけるのかもしれないけど、目に見えないものだからこそ、とても大きな支えになる。こういう状況下でも、人は工夫して、面白いものや楽しいもの、ワクワクするものを生み出すエネルギー、受け取ろうとするエネルギーがあるんだということを自粛期間中に実感しました。近距離で密にはなれないけれど、どうにか届けようとする人たち、受け取ろうとする人たちがいることはすばらしいことです。
もちろん、せっかく再開してもまた休演になる可能性もあり、お客さまにちゃんと届けられるか分からない緊張感はあります。でも、皆で最善策を練りながらベストを尽くしていくことも無駄にしたくないというか、こういう体験も、緊張感や不安感といった感情も、全部吸収して、役者、表現者として今後につなげていきたいと思うんです。

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――退団後、宝塚歌劇はご覧になっていますか

雪組は見ています。宝塚でしかできないことばかりなので、頑張っている後輩を見ると、懐かしくもなりつつ、無条件に応援したくなりますね。客席から、「がんばれよ!」って思いながら見ています。

――このサイト(マチ★ソワ)は「待ちきれなくてソワソワしちゃう」が正式名称です。早霧さんが今、待ちきれなくてソワソワしちゃうことはありますか

『ゲルニカ』の稽古に入る前、自粛期間が明けて初めて見たのが三谷幸喜さん作・演出の『大地』で、劇場に足を運ぶ尊さを実感しました。観劇って、チケットを買うところから始まり、作品をどう消化して自分の人生や生活の彩りに変えていくかまでが、ひとつの楽しみなんですよね。まだ客席が半分だったりして多くの人にご覧いただけないので、声を大きくして観劇を楽しんでとはなかなか言えないですけど、早く皆さんが安心して見に行ける時期が来てほしいですね。楽しみでそわそわしながら『ゲルニカ』を見に来てくださったらうれしいですし、皆さんがこの作品を受け取ってくださるのを、私もそわそわしながら待っています。

取材/文 道丸摩耶(産経新聞)
撮影/吉原朱美


早霧せいな(Seina Sagiri)
2001年宝塚歌劇団に入団。14年9月雪組トップスターに就任。在籍時には宝塚歌劇団史上初となる、主演大劇場公演5作すべて観客動員100%超という大記録を作る。17年に退団後は、ドラマ「科捜研の女」(EX)や舞台「まほろば」(19)、「脳内ポイズンベリー」(20)など映像から舞台まで幅広く活躍中。

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Stage Information

PARCO 劇場オープニング・シリーズ『ゲルニカ』

作:長田育恵
演出:栗山民也
出演:上白石萌歌 中山優馬 勝地 涼 早霧せいな 玉置玲央 松島庄汰
林田一高 後藤剛範 谷川昭一朗 石村みか 谷田 歩 キムラ緑子

【東京】9月4日(金)〜27日(日)PARCO 劇場
【京都】10月9 日(金)〜11日(日)京都劇場
【新潟】10月17日(土)〜18日(日)りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場
【豊橋公演】10月23日(金)〜25日(日)穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
【北九州公演】10月31日(土)〜11月1日(日)北九州芸術劇場 大ホール

公式サイト

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