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COLUMN

【#26】正反対の2人で響かせる「終わらない」(ザ・ビューティフル・ゲーム)|東啓介と聴活♪

ミュージカル界の巨匠、アンドリュー・ロイド=ウェバー作曲のミュージカル『ザ・ビューティフル・ゲーム』も、大阪公演がまもなく終わります。シングルキャストで、動いて歌ってアクションする舞台は久しぶり。同世代の共演者とチームワークを高めていくのも楽しかったですし、皆でいろいろ試しながら新しい挑戦ができました。

この作品は日本でもこれまで何度か上演されていて、長く上演されてきたことで時がたつことによる作家の解釈や曲の編成も変わったりしたそうです。ぼくが演じるトーマスは、主人公ジョン(小瀧望さん)のサッカーのチームメートで、後にIRA(アイルランド共和軍)の兵士となる役。演出の瀬戸山美咲さんから「ただの嫌な奴にはなってほしくない」と言われ、ぼくも同じように思っていたので、その塩梅に気をつけました。あと、次のシーンまでに時間が飛んでいることが多いので、その間を埋められるようにというのも心がけました。

瀬戸山さんはすごく優しくて、最初の通し稽古で不安を感じたときも、「それで大丈夫ですよ」と言ってくださった。物語が進むにつれ、心身ともにしんどくなる役ですが、役者としてはやりがいがあります。自分の中にひとつ正義があって、それを貫き通しているわけですから、例えその正義が間違っていたとしてもすごい生き方だと思います。

ロイド=ウェバー氏の作品には、宗教をモチーフにした作品が多いですが、日本にいる自分たちにはアイルランドの独立問題も、カトリックとプロテスタントの宗教的な対立も、特殊部隊といった軍の話題も、なじみが薄いですよね。ぼくたち(『ザ・ビューティフル・ゲーム』出演者)も大学教授に作品の背景等を教えていただきましたが、理解するのは難しかった。お客様もそうだと思います。なので、作品の中で難しい事情を説明するより、お客様の感じ方にゆだねるしかないと思っています。観劇をきっかけにアイルランドに興味を持ったり、背景を調べたくなったり、はたまた物語は難しかったけど音楽は良かったと感じたり、感想はそれぞれでいいと思うんです。


トーマス役/東啓介 (写真提供/東宝演劇部)

本作のロイド=ウェバー氏の楽曲、最初は「どんな曲だろう?」とドキドキしていたんですが、どの曲にも特殊な力があって、聞けば聞くほど好きになっていく……。その中から今回選んだのは、最後にジョンとトーマスが歌う「終わらない」という曲です。

この曲では、正反対の2人が同じ旋律を歌います。短い曲ですけど、言いたいことが詰まっていてとても響いてくる。静かに始まって、不協和音のような緊張感ある音が、物語の状況にすごく合っています。稽古が進むにつれて作品を深く理解できるようになったのか、この楽曲が最後のシーンにある意味も分かるような気がしてきました。トーマスは高音パート、ジョンは低音パートを歌うんですけど、キャラクターのイメージ的には逆ですよね。そこにも意味があるのかな、なんて考えるのも楽しかったです。


ジョン役/小瀧 望(ジャニーズWEST) (写真提供/東宝演劇部)

『ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド』に続き、ぼくにとって2作目のロイド=ウェバー作品。『CATS』『オペラ座の怪人』といった作品しか知らなかった人には、ロイド=ウェバー氏にはこういうタイプの作品もあるのかと知っていただけたんじゃないかと思います。ただ、もし次にロイド=ウェバー作品に出演させていただける機会があれば、美しい旋律の王道のミュージカル曲も歌ってみたいです。ファンの方から、「今回はソロ曲がなくて残念」という感想もいただいたんですが、トーマスを演じられたことがうれしくて、実はソロ曲がないことに気づいていませんでした(笑)。

瀬戸山さん始め、出演者も初めましての方が多く、こういう風に歌うのか、とか、こういう風にお芝居をするのか、と新鮮に思うことがいっぱいありました。一方で、前作の『ジャージー・ボーイズ』の仲間にも助けられたんです。楽屋の鏡前に、差し入れについていたアッキーさん(中川晃教さん)の名前の熨斗(のし)を貼って、「今日も頑張ります」と挨拶したり、藤岡(正明)さんに教えていただいた発声方法もずっと試しています。またしっかり調整して、次にロイド=ウェバー作品を歌うときには、もっともっとうまくなりたいです。

聞き手/道丸摩耶(産経新聞)


今月の聴活SONG♪

The Beautiful Game


東啓介(Higashi_Keisuke)
1995年7月14日生まれ。2013年デビュー。『5DAYS 辺境のロミオとジュリエット』『命売ります』『Color of Life』などの作品で主演を務める。近年はミュージカル界の新星として頭角を現している。2020年11月にはファーストソロコンサートも開催。最近ではミュージカル『イン・ザ・ハイツ』(神奈川・大阪・名古屋・東京公演)やミュージカル『マタ・ハリ』に出演。映像作品でも、NTV「ウチの娘は、彼氏が出来ない‼︎」やTBS火曜ドラマ「ファイトソング」などに出演し話題に。最近では、TX木ドラ24「チェイサーゲーム」やMBS「闇金ウシジマくん外伝 闇金サイハラさん」に出演。2022年10月〜12月ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』にボブ・ゴーディオ役で出演。2023年1月〜2月ミュージカル『ザ・ビューティフル・ゲーム』にトーマス役で出演。4月〜5月には舞台『二次会のひとたち』に中内啓介役で出演する。
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Stage Information

『ザ・ビューティフル・ゲーム』

作曲:アンドリュー・ロイド=ウェバー
作詞:ベン・エルトン
上演台本・演出:瀬戸山美咲
振付:ケイティ・スペルマン

出演:小瀧望(ジャニーズWEST)、木下晴香、東啓介、豊原江理佳、加藤梨里香
新里宏太、皇希、木暮真一郎、益岡徹  ほか

■東京公演:2023年1月7日(土)~26日(木) 日生劇場
■大阪公演:2023年2月4日(土)~13日(月) 梅田芸術劇場 メインホール

公演公式サイトはこちら

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