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【観劇コラム】マシュー・ボーンの『ロミオ+ジュリエット』▷若い力で創る等身大の物語

東京・渋谷の東急シアターオーブで、『マシュー・ボーンのロミオ+ジュリエット』が21日まで上演中だ。タイトルが示す通り、英国出身の世界的演出・振付家、マシュー・ボーンが古典の名作を大胆に解釈した舞踊作品だ。同作としては日本初、ボーン作品としては『白鳥の湖』以来、5年ぶりの日本での上演となる。

ウィリアム・シェイクスピアの手による、悲恋の代名詞ともいえるほどの題材。近年、あらゆる演出家が演劇やバレエ、映画などでさまざまな解釈を試みてきた。『白鳥の湖』や『くるみ割り人形』といったバレエの古典を斬新なアイデアで読み解き、大きな話題を呼んできた彼は、はたしてどうこの題材に挑んだのか。

©Johan Persson

完全な闇から一気に舞台に現れるのはシンプルな監獄のようなセット。そう、ボーンは14世紀のイタリアの都市ヴェローナを、近未来の反抗的な若者を収容する矯正施設「ヴェローナ・インスティテュート」にうつしてみせた。

©Johan Persson

衣裳もセットも、白を基調に、無駄をそぎ落としたデザイン。そっけないほどの印象を最初は与えるが、物語が進行するにつれ、若者たちのあふれる感情を引き立てる見事な器となっていく。20世紀を代表する大作曲家、セルゲイ・プロコフィエフによる音楽の芳醇さもシンプルな舞台美術により一層際立つ。

©Johan Persson

登場人物も設定がユニーク。自由を奪われ、徹底的な監視におかれる若者たち。ロミオは有力な政治家の両親に見捨てられた気弱な青年だし、ジュリエットはタフな少女に。物語を動かす存在となる乱暴者のティボルトは看守、ロミオの友人であるマキューシオとバルサザーは恋人同士といった具合だ。同性愛への差別やメンタルヘルスなど、現代的な問題が盛り込まれている。ダンサーは若手が中心。決して洗練された演技とはいえないかもしれないが、だからこそ、等身大のリアルさがある。若い力で創り上げた舞台だ。

©Johan Persson
©Johan Persson

この施設では、男女は徹底的に分けられ、互いの接触は禁じられている。唯一の機会としてダンスパーティーが〝与えられ〟ているが、ロミオとジュリエットがそこで出会い、恋に落ちるシーンが、ミラーボールの光のなか、魅惑的に美しく演出される。その先には悲劇が待ち受けているわけだが、単なる悲恋ドラマではなく、与えられた人生から踏み出して、自分自身が生をつかみとっていくことの強さを訴えるボーンのメッセージを感じた。

©Johan Persson

懐中電灯やベッド、椅子など、小道具の使い方も刺激的。「あの登場人物はこうなったのかな?これはこういう解釈かな?」と想像をめぐらす、知的な楽しみのある90分間だった。

取材・文/塩塚 夢(産経新聞社)

Stage Information

マシュー・ボーンの『ロミオ+ジュリエット』

原作:ウィリアム・シェイクスピア
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
演出・振付:マシュー・ボーン
美術・衣裳:レズ・ブラザーストン
企画制作:ホリプロ

【東京公演】
期間:2024年4月10日(水)~21日(日)
会場:東急シアターオーブ
上演時間:ACT1=1幕&2幕 60分/休憩:20分/ACT2=3幕 35分(計=1時間55分)

【キャスト】
ロミオ▷パリス・フィッツパトリック/ジャクソン・フィッシュ/ロリー・マクラウド
ジュリエット▷モニーク・ジョナス/ハンナ・クレマー/ブライオニー・ペニントン
ほか

公演公式サイトはこちら

【Story】

近未来、反抗的な若者を矯正する教育施設“ヴェローナ・インスティテュート”。そこでは厳しい監視下で自由を奪われた若者たちが男女の接触を禁じられて暮らしていた。暴力的な看守ティボルトのハラスメントにおびえるジュリエット、有力政治家の両親から見放されて施設に入れられたロミオ。施設で出会った2人は瞬く間に恋に落ち、看守の目を盗んで逢瀬を重ね、仲間たちに祝福されながら愛を誓いあうのだった。しかし幸せもつかの間、突如酒に酔ったティボルトが銃を振りかざして現れ、乱闘のあげく仲間の一人マキューシオが命を落としてしまう。怒りに燃えるロミオとジュリエットたちはティボルトに立ち向かうも、さらなる悲劇が彼らを待ち受けていた…。

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