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COLUMN

【MICHIMARU劇評】見せつけた「14人」の『コンボ・イ・ランド』

今村ねずみが主宰する「コンボイショウ」が35周年を記念して上演した「コンボ・イ・ランド」が約1年半の時を経て再演された。再演といっても、せりふや歌を見直し、後半のショーはほとんどが新作。まさに「シン・コンボ・イ・ランド」というパンフレットの紹介文がぴったりだ。メンバーが30年以上かけて構築してきたエンターテイメント性にあふれる独自の世界観で、2時間50分を「ノンストップ」で走り切った。

『コンボ・イ・ランド』
撮影/小境勝巳

設立初期から走り続けてきた今村ねずみ、瀬下尚人、石坂勇、舘形比呂一、徳永邦治の5人のベテランに、本田礼生、伊藤壮太郎を始めとする9人の若手が加わり、総勢14人のメンバーが、ステージを所狭しと動き回る。B‘zの『LOVE PHANTOM』に合わせて全員が踊る冒頭から、いきなりクライマックス。指先、足先まで神経が行き届いたダンスと、音楽の解釈、個の動きのバランスの良さに目を奪われる。

ベテランのみのシーン、若手のみのシーンもあるが、一番の見どころはベテランと若手が融合するシーンだ。フォーメーションの美しさ、14人それぞれを舞台のセンターに立たせたり、〝得意技〟を披露させたりと、全員に見せ場を作る構成のうまさが光る。

『コンボ・イ・ランド』
撮影/小境勝巳

クールなダンスシーンと、コミカルな芝居パートの緩急のつけ方もうまい。ベテランも若手も誰一人「出し惜しみ」せず全力でぶつかってくるからこそ、観客も3時間近いショーを飽きずに見られる。若手と共にタップを踏む還暦近い(一部、還暦過ぎの)役者たちの楽しそうな顔といったら。センターに集まったメンバーの周りをタップで1周する今村、90年代を代表する小沢健二の「ラブリー」を若手と一緒にハモるベテランの姿には、目頭が熱くなる。

『コンボ・イ・ランド』
撮影/小境勝巳

派手な技や敏捷性、絶対的な体力は若手が勝っているかもしれないが、それに対してベテランが見せつけるのは圧倒的な個性と華、そして安心感だ。一方の若手は、『ATOM』『asiapan』『星屑バンプ』といった過去のコンボイ作品のシーンを演じていく中で、だんだんとそれぞれの個性を立ち上らせていく。過去作ではベテランが演じていた役を若手が演じ、印象をがらりと変えてくるのもおもしろく、役の解釈は、役者の数だけあるのだと思い知らされる。

『コンボ・イ・ランド』
撮影/小境勝巳

いみじくも、若手メンバーの本田が千秋楽のカーテンコールで、「誰の背中を見てきたと思ってんだ!」と今村ら先輩に熱く敬意を表したが、これが若手メンバーたちの偽らざる本音だろう。厳しいオーディションと稽古で知られるコンボイだが、ライトを浴びて踊る若手の後ろで、舞台セットを整える先輩という図は、なかなか見られるものではない。若手を自分たちの色に染めていくのではなく、若手の色を入れることでさらに全体で輝こうとする姿勢は実社会にも応用でき、学ぶべきものが多い。コンボイの今とリンクする『Be Here Together Now』を最初5人で、そこから14人で歌い繋いでいくラストには、ひとつのゴールを見た思いだ。

『コンボ・イ・ランド』
撮影/小境勝巳

千秋楽、走り切った安堵からか、涙で声を詰まらせた今村は、最後に堂々と、コンボイ続行を宣言した。まだまだ止まらないコンボイ、早くも次回作への期待が高まる。

6月16日~20日、東京建物ブリリアホール、千秋楽を観劇。


道丸摩耶(みちまる まや)
産経新聞記者。文化部、SANKEI EXPRESSの演劇担当を経て、観劇がライフワークに。
幼少時代に劇団四季の「オペラ座の怪人」「CATS」を見て以来、ミュージカルを中心に観劇を続けてきたが、現在は社会派作品から2.5次元作品まで幅広く楽しむ。
舞台は総合芸術。「新たな才能」との出会いを求め、一度しかない瞬間を劇場で日々、体感中。


Stage Information

『コンボ・イ・ランド』

作・構成・演出:今村ねずみ

瀬下尚⼈ 石坂 勇 舘形⽐呂⼀ 徳永邦治 /
本⽥礼⽣ 伊藤壮太郎 ⾼橋駿⼀ 帯⾦遼太 古賀雄⼤ ⼭野 光 /
川原一馬 塩田康平 一条俊輝 /今村ねずみ

2023年6月16日(金)~6月20日(火) 東京建物 Brillia HALL

公演公式サイトはこちら

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