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COLUMN

【#20】思いと裏腹な歌詞が心に響く「石になろう」(ノートルダムの鐘)|東啓介と聴活♪

KAAT神奈川芸術劇場で8月7日まで上演していた劇団四季の「ノートルダムの鐘」を見る機会に恵まれました。皆さんおなじみのディズニーミュージカルではあるのですが、ヴィクトル・ユゴーの原作の影響もあって、あまりディズニーっぽくない、気合を入れて見ないと自分がやられてしまうような、そんな力を持った作品です。

報われない恋、人種差別、身分格差、男女の差、人間の弱さや醜さ、とさまざまなテーマが内包されていて、ラストの捕え方もお客様にゆだねられている。それぞれの愛の形があって、どう解釈するかも自由。素敵な曲がいっぱい歌われるのに、ミュージカルというより、ストレートプレイを見ているような気持ちになります。シェイクスピアのような重厚感がありました。アンサンブルがト書きを読むように語るのもおもしろいし、何よりあのラストには、本当に心を打たれました。

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Disney

ディズニー作品といえば、主役とヒロインがいて、ヒロインを狙う男性がいて、という構図を思い浮かべますが、「ノートルダムの鐘」では四角関係。しかも、ヒロインのエスメラルダを好きになるのが、主人公のカジモドと、カジモドの育ての親でえらい神父様のフロローと、警備隊長のフィーバスという、年齢も立場も大きく違う人たち。障害を持ち、ずっとひとりだったカジモドは、王子様みたいな二枚目のフィーバスにも、絶対的権力者のフロローにも勝てるわけがないと思い悩みます。しかも、エスメラルダにとってカジモドは最後まで大切な「友達」のまま。それでも彼はそれを受け入れ、エスメラルダを大切にする気持ちを捨てない。そして、最後にエスメラルダの隣にいたのはカジモドでした。愛にはいろいろな形がありますが、カジモドの愛は純粋ですごくすてきだなと思いました。ぼくは絶対にあんな風には生きられません。

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Disney/撮影:阿部章仁

ミュージカルナンバーも耳なじみの良い名曲ぞろい。1幕で、外の世界へのあこがれを歌うカジモドの「陽ざしの中へ」は有名だし、希望に満ち溢れていてすごく良い曲です。この曲を好きになるだろうな、と思って見に行ったのですが、物語を追いかけていくうちに、2幕でカジモドが歌う「石になろう」にもっと惹かれてしまいました。

「石になろう」は、フロローの怒りを買い処刑されるエスメラルダを救いに行きたいけど、自分には無理だと弱気になるカジモドを、彼の友人たちである石像が励ますところから始まります。石像たちから彼女を助けに行くように言われ、カジモドは「黙っていろ」と初めて反抗するんです。そして歌います。心があるからつらいのだ。ぼくも、きみたちみたいに石になりたい、と。親替わりのフロローの言葉は石のように冷たかったけれど、その言葉は正しかったじゃないか。石になったら涙も流さなくていい。本当は心のままに助けたいくせに、「石になりたい」と自分の思いとは裏腹な言葉が歌詞になり、カジモドの葛藤が歌われる。歌詞と本心が違うというのがすごくよくて、これこそミュージカルソングだなと思いました。

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Disney/撮影:阿部章仁

物語の重要なテーマであるキリスト教についても関心がわきました。日本では結婚式をキリスト教式でやったりしますけど、キリスト教やイエス・キリストのことはあまり知らないじゃないですか。でも、世界では多くの人たちに信仰されていて、その信仰心がノートルダム大聖堂のような世界遺産の建造物を作る。ミュージカルの中でも、聖書や聖歌の一節が繰り返し歌われていて、舞台セットも大聖堂の荘厳なステンドガラスや鐘が再現されていました。ノートルダム大聖堂に来たような気分になって、一気にテンションが上がりました。

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Disney/撮影:阿部章仁

確かに救いのないストーリーに見えますが、見ているうちにネガティブが浄化されて、見た後はいろいろなことを考えさせられます。改めて人種差別や女性差別を考えるようになりましたし、世界はどこでも、いつの時代も変わらないんだな、とも思いました。もちろん変わっていってほしいですし、こうした作品がそのきっかけになっていくかもしれません。お客さんも楽しんだようで、カーテンコールが7回くらいありました。

これからもいろいろなミュージカル作品を見に行きたいです。そのときは心を石にしないで、ポジティブな物語もそうでない物語も楽しみたいと思います。作品によっては、本当にしんどくて、石になりたいってなりますけど!(笑)

聞き手/道丸摩耶(産経新聞)

今月の聴活♪SONG

劇団四季:ノートルダムの鐘:ナンバー集

東啓介(Higashi_Keisuke)

1995年7月14日生まれ、東京都出身。2013年デビュー。舞台『剣乱舞』など気舞台で活躍し、『5DAYS 辺境のロミオとジュリエット』『命売ります』『Color of Life』などの作品で主演を務める。近年はミュージカル界の新星として頭角を現している。2020年11月にはファーストソロコンサートも開催。2021年1月〜3月、NTV「ウチの娘は、彼氏が出来ない‼︎」にイケメン整体師・渉周一役で出演し話題に。 2021年3月〜4月ミュージカル『イン・ザ・ハイツ』(神奈川・大阪・名古屋・東京公演)に出演、6月〜7月ミュージカル『マタ・ハリ』でアルマン役に再び挑み好評を博した。2022年秋に開幕するミュージカル『ジャージー・ボーイズ』にボブ・ゴーディオ役で出演が決定した。

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Stage Information

劇団四季『ノートルダムの鐘』

2022年12月18日(日)〜2023年4月9日(日)に京都劇場、2023年5月14日(日)~8月6日(日)にJR東日本四季劇場[秋]にて上演。

公演公式サイトはこちら

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