COLUMN

【#14】際立つ美しさと悲劇「Tonight(トゥナイト)」（映画「ウエスト・サイド・ストーリー」）｜東啓介と聴活♪

2022.02.10

1月28日に、「JAPAN MUSICAL FESTIVAL 2022」に出演させていただきました。準備期間が短かったこともあって緊張しましたが、お客さまに届けたいという全員の強い思いで、すばらしい歌の数々が届けられたと思います。ぼく自身は久しぶりに歌を歌えて、大好きな『エリザベート』の「闇が広がる」、『Dear Evan Hansen』の「Waving Through A Window」も歌えました。『ジャージー・ボーイズ』以外は携わったことのない作品だったので、本当に良い経験になりました。「闇が広がる」では、一緒に歌っていただいた加藤和樹さんと、「もっとがっつり歌いたくなったね」なんて話をしながら、「いつか出演してみたい！」と強い思いがわいてきました。

さて、今回は2月11日に公開される映画「ウエスト・サイド・ストーリー（WSS）」から、名曲「Tonight(トゥナイト)」をご紹介します。

WSSは「ロミオとジュリエット」をモチーフにしたブロードウェイ・ミュージカルで、1961年に映画化もされた不朽の名作。今回は、あのスティーブン・スピルバーグ監督が新たに生まれ変わらせました。以前の映画も見たことはあるのですが、ミュージカルに自分が出るなんて考えてもいなかった頃で…。ミュージカルを深く知りたい、いろいろな作品に出てみたいと思うようになった今、改めてスクリーンでこの作品を見ると、迫力あるダンスと名曲の数々、クラシックでありながら現代にも通じる物語にすごく引き込まれました。2時間40分近い上映時間もあっという間で、試写を見終わった後、映画のサウンドトラックはないか探してしまったほどです。

ヨーロッパ系移民の「ジェッツ」の元リーダー・トニーと、対立するプエルトリコ系移民の「シャークス」のリーダー・ベルナルドの妹、マリアが恋に落ち、悲劇的な結末をたどるストーリー。ベルナルドたちがプエルトリコ系移民という設定には、やはり南米からの移民を描き、ぼくも出演させていただいた『イン・ザ・ハイツ』を思い出しました。

　殺そうなんて思っていなかったのに誤って相手を殺してしまう、その行き違いがこの作品の悲劇なのですが、ガレージでの決闘のシーンは特に印象的でした。プエルトリコ系移民の女性たちが歌う「America（アメリカ）」も、「私たちはここで生きていく」という覚悟と強さが感じられてとても良かったです。映像もめちゃめちゃ綺麗で、色合いは芸術的だし、街並みも素敵です。

パッションに満ちた曲や、ダンスがメインの曲が多い「WSS」で、動きがほぼなく、立ち止まったまま歌うのが、今回ご紹介する「Tonight(トゥナイト)」です。曲の美しさももちろんですが、何回もお互いの名前を呼んだり、「Tonight(トゥナイト)」という言葉を繰り返したりする歌詞からは、「あなた以外に何もない」という強いメッセージが伝わってきます。会ってすぐに恋に落ち、2人の思いが交わっていく過程がこの１曲に詰まっている。しかも、こんなに素敵な曲なのに、その後には悲劇が待ち受けているんです。美しさが際立てば際立つほど、悲劇もまたより深くなる。この歌で世界を変えようと思ったのに、この歌で世界が崩壊していく。結末を知っているからこそ、この曲を聞くと、ここから崩れていってしまうんだ、と悲劇の幕開け感を感じます。現代では人種を超えた愛も珍しくないけれど、当時のトニーとマリアの恋は「禁断の恋」。2人のピュアできれいな心が、透明感あふれる歌に表れていて、しかも2人とも歌がうますぎです！

個人的に注目したのは、トニーとマリアの身長差！ぼくは背が高いので、もしトニーをやったら、相手の方とこういう身長差になるのかな、なんて考えちゃいました。身長差があるから、ベランダでのシーンが素敵に見えるのかなって。ファンの皆さまから、「身長差が素敵」というお言葉をいただくことがあるのですが、今回の映画を見て、こういうことかと分かりました（笑）。

日本でミュージカルが上演されたら、「Tonight(トゥナイト)」はどういう歌詞になるのかな。IHIステージアラウンド東京で上演された日本人キャスト版を見てみたかったのですが、新型コロナのため途中で中止になってしまい、見られなかったんです。もしいつかまた日本版を上演することがあったら、身長差はクリアできているので（笑）、ぜひトニーをやってみたいです。

最近はさまざまなミュージカルが映画になっていますが、知らない作品だと敷居が高い人は多いと思います。その点、WSSは有名な作品ですから、一歩が踏み出しやすいかもしれません。スクリーンで見終わった後に1961年版の映画と見比べるのもいいし、舞台で上演されることがあれば、そちらも見に行ってほしいです！

聞き手／道丸摩耶（産経新聞）

♪今月のミュージカルソング

Tonight｜”West Side Story”/Audio Only

東啓介（Higashi_Keisuke）

1995年7月14日生まれ、東京都出身。2013年デビュー。舞台『剣乱舞』など気舞台で活躍し、『5DAYS 辺境のロミオとジュリエット』『命売ります』『Color of Life』などの作品で主演を務める。近年はミュージカル界の新星として頭角を現している。2020年11月にはファーストソロコンサートも開催。2021年1月〜3月、NTV「ウチの娘は、彼氏が出来ない‼︎」にイケメン整体師・渉周一役で出演し話題に。 2021年3月〜4月ミュージカル『イン・ザ・ハイツ』（神奈川・大阪・名古屋・東京公演）に出演、6月〜7月ミュージカル『マタ・ハリ』でアルマン役に再び挑み好評を博した。2022年秋に開幕するミュージカル『ジャージー・ボーイズ』にボブ・ゴーディオ役で出演が決定した。

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Information

『ウエスト・サイド・ストーリー』

2月11日（祝・金）全国ロードショー

配給：ウォルト・ディズニー・ジャパン

【Story】

夢や成功を求め、多くの移民たちが暮らすニューヨークのウエスト・サイド。
だが、貧困や差別に不満を募らせた若者たちは同胞の仲間と結束し、各チームの対立は激化していった。
ある日、プエルトリコ系移民で構成された“シャークス”のリーダーを兄に持つマリアは、対立するヨーロッパ系移民“ジェッツ”の元リーダーのトニーと出会い、一瞬で惹かれあう。
この禁断の愛が、多くの人々の運命を変えていくことも知らずに…。

《公式サイトから引用》

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