前回は、初めてディズニー作品を紹介させてもらいましたが、今回もディズニー作品です。といっても、今回は、まだぼくが見たことのないミュージカルです。
「アナと雪の女王」、通称「アナ雪」は、2013年に公開されたディズニーのアニメ映画で、世界中で大ヒットして続編も作られました。主題歌の「Let It Go(レットイットゴー)」は日本版では「ありのままで」と副題がついて、これまた大ヒットしましたよね。ぼくは、『アナ雪』の映画の日本版でアナの声を担当された神田沙也加さんと『ダンス・オブ・ヴァンパイア』で共演したとき、その声を聞いて「アナがいる!」と思いました。「サラ(ダンス・オブ・ヴァンパイアの役名)だけど、アナだ!」みたいな(笑)。そのくらい『アナ雪』は多くの人に愛されています。
ディズニー映画の楽曲は、カラオケに入っていることが多いのもうれしい点です。最近は新型コロナの影響で行けていないですが、以前はひとりでカラオケに行くことも多くて、広いパーティールームで、音量をめっちゃ上げて歌い続けることもありました。英語バージョンの「Let It Go」をよく歌っていましたね。高音部と低音部があるので、発声の練習にも良いかなって。
その『アナ雪』は18年にミュージカル化され、ぼくが米NYのブロードウェイに行ったときは、現地でCMもやっていました。宣伝映像で見た「Let It Go」のエルサの早着替えのシーンは、すごくカッコよくて、驚きました。一瞬で、衣装だけでなく髪型まで変わるんです! 出演させていただいた『ジャージー・ボーイズ』で劇中の楽曲を聞いたとき、「この曲、知ってる!」とうれしかったですから、「アナ雪」も同じで、映画で聞いたことのある曲を目の前で歌ってもらえたら、客席もテンションがあがるんじゃないでしょうか。
ブロードウェイで見ておけば良かったと残念に思っていたのですが、日本では今年6月から、劇団四季さんがロングラン上演してくださっています。日本で『アナ雪』のミュージカルを見ることができるなんて、本当にうれしいです。
同じディズニーのミュージカル作品でありながら、前回、紹介した『ライオンキング』と『アナ雪』には、大きな違いがあります。役者さんが肉体の表現力を使って、いわば超アナログな手法で動物たちの世界を再現しているのが『ライオンキング』。対して『アナ雪』はプロジェクションマッピングなど現代的な装置も駆使したステージです。舞台の表現方法も、時代に応じて変化しているのが感じられます。
撮影/飯田英男
それにしても、「Let It Go」を「ありのままで」というタイトルにしたのは、本当にすごいです! 「ありのままの自分で進んでいこう」というメッセージの持つ力は絶大。というのも、最近、同じようなメッセージを受け取ったことがあるんです。
ぼくは割と何でも、「はい!」「やります!」みたいな従順なタイプで(笑)、でも、そんなぼくに、所属事務所の社長が「自分の人生は自分の物語なんだから、もっとわがままでいなさい」と言ってくださったんです。「はい、やります」だけでは、本当にどう思っているのか分からないよ、と。
言われてみれば、10代のころからこのお仕事をさせていただいて、「これを言っちゃいけないかな」と自分の中で先回りして道を選んでいるところがありました。だから、自分がしたいこと、思ったことを言っていいんだと社長に言われたことは嬉しかったですし、それを許してくれる環境にあることが本当にありがたいと思いました。お仕事で共に何かを成し遂げていくときに出てくる「こうしたい」は、ただのわがままではない。それを伝え、乗り越えることによって、スタッフとも家族感が増しますよね。例えどう転ぼうが、やらないで後悔するより、自分がしたい道を選んだ方が悔いが少ないのかなと思います。
とまあ、個人的にそんな出来事があって、久しぶりに「Let It Go」を聞いたら、そこに込められたメッセージがものすごく強く響いてきたんです。ぼくも26歳になって、またひとつ大きくなるために、自分の直感を信じてこのまま進んでいいんだ、と元気づけられました。社長の言葉がなかったら、ここまで響かなかったと思います。
エルサは「魔法が使える」ことがコンプレックス。でも、コンプレックスをさらけ出して前を向いて生きていく決心をするその姿は、誰より輝いて見えます。『アナ雪』は子供たちの間でも大人気の作品ですから、家族で一緒にミュージカルを見る人も多いと思います。「Let It Go」の持つメッセージ、コンプレックスがあっても自分を信じて進んでいくカッコよさが、子供たちにも伝わってくれたらいいなと思います。
聞き手・道丸摩耶(産経新聞社)
♪今月のミュージカルソング
「FROZEN Australia」|Jemma Rix performs ‘Let It Go’
東啓介(Higashi_Keisuke)
1995年7月14日生まれ、東京都出身。2013年デビュー。舞台『剣乱舞』など気舞台で活躍し、『5DAYS 辺境のロミオとジュリエット』『命売ります』『Color of Life』などの作品で主演を務める。近年はミュージカル界の新星として頭角を現している。2020年11月にはファーストソロコンサートも開催。2021年1月〜3月、NTV「ウチの娘は、彼氏が出来ない‼︎」にイケメン整体師・渉周一役で出演し話題に。 2021年3月〜4月ミュージカル『イン・ザ・ハイツ』(神奈川・大阪・名古屋・東京公演)に出演、6月〜7月ミュージカル『マタ・ハリ』でアルマン役に再び挑み好評を博した。
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