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INTERVIEW

加藤和樹さん「自分が動くことでしか始まらないものもある」

今年、アーティストデビュー15周年を迎えた加藤和樹さん。ミュージカル『ローマの休日』のジョー・ブラッドレー役と『BARNUM』のバーナム役で「第46回菊田一夫演劇賞」演劇賞を受賞するなど、俳優としても活躍の場を広げています。現在、日生劇場でミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』に出演中の加藤さんに、15日発売の15周年記念アルバム「K.Kベストセラーズ」に込めた思いや、ファンへのメッセージを聞きました。

ライブにこだわった記念アルバム

――ファン待望の豪華2枚組アルバムです。曲のセレクトはご自身でされたのですか?

ファンの方からアンケートをいただき、その中からピックアップしました。1曲1曲に対する皆さんの思い、メッセージはすべて読ませていただきました。その中で、今伝えるべき曲、いま歌いたい曲、ライブで届けたい曲をセレクトしたつもりです。ライブのセットリストみたいに曲を並べて、ライブを楽しんでいる感覚になれるようにしました。なかなかやったことのない試みですが、全曲一発録りです。ライブに行きづらかったり、来られない人もたくさんいる中で、一発録りでライブ感を感じてもらうことにしました。15周年に当たり、このアルバムが加藤和樹からのメッセージとして受け取っていただけたらうれしいです。

――「ライブ感」にこだわったのはなぜですか?

自分にとって音楽というのはやはりライブなんです。そこは切っても切り離せない。もちろんCD音源として完成されたものもすばらしいんですが、今回はより身近に感じてもらえるような手法を採りました。失敗できないというプレッシャーは、自分だけでなくバンドメンバーも感じていたと思いますが、だからといって失敗を恐れて演奏や歌が引っ込んでしまっては本末転倒です。スタジオではライブのリハーサルと同じセットを組んで、バンドメンバーの顔も見ながら、とにかくライブ感やグルーブを大切にという心構えで臨みました。完成したCDを聞いて、「やっぱライブっていいよね」と思っていただけたらうれしいです。

――加藤さんの書かれる歌詞は、伝えたい思いがダイレクトに伝わってきます。

伝えたいことはそのときどきによって変わってくるので、今、自分が感じている素直でリアルな思いをなるべく言葉にするようにしているんです。難しい言葉は極力、使いたくない。耳なじみのいい言葉、皆が聞きなれている言葉の方が、すっと体と心に入ってくる気がするので。身近に寄り添う感覚というのを大事にしていますね。
 自分自身も音楽に救われることも多いので、曲を聞いて、あなたはひとりじゃないとか、誰かと自分はつながっているよという感覚を忘れないでほしいなと思います。

加藤和樹『K.Kベストセラーズ』通常盤ジャケット.jpg

――「Disc2」はカバー曲集ですね。意外な選曲もありました。

「今届けたいメッセージ性のある楽曲」というのを中心に、選曲させていただきました。カバーライブでは最近の曲をカバーさせていただくこともありますが、今回は時代が違ってもなお歌い継がれる楽曲を中心に選びました。カバーの魅力って、原曲が持っている素晴らしさを、カバーするアーティストの個性や声で世界観を広げていけることだと思います。大切なのは、いかに原曲へのリスペクトを込めるか。オリジナリティーを出し過ぎると元の楽曲の良さがなくなってしまうこともあるので、そこをはき違えないように。かといってカラオケになってもいけないので、いかに自分の気持ちや解釈を込めて魅力を損なわずに伝えることができるかが課題です。ちょっとおこがましいですが、自分を通して、多くの皆さんに楽曲のすばらしさが届いたらいいなと思います。

――ツアーもあるんですよね。

そうなんです。11月から、初めてのピアノライブツアーをやります。同時にファンクラブのライブを全国でやる計画もあり、バンドで回るGIGツアーもやります。3本同時に走らせるのはハードですが、いろいろなタイプのライブを楽しんでいただきたいです。新型コロナウイルスの流行がどうなるか分からないのが不安要素ではありますが、立ち止まっているわけにもいきません。自分が動くことでしか始まらないものもありますから。昨年は、ひとりで全国ツアーを回らせてもらって、ファンの皆さんの協力で成功させることができました。今回もどうやったらできるかを考え、皆で力を合わせてやりとげたいです。もちろん(ライブに)行かないという方の選択も尊重しますし、そのためにアルバムも出しました。この15年を支えてくれたファンの皆に、歌うことで恩返しをしたいという思いでいっぱいなので、エンターテインメントや音楽の力をいろいろな形で楽しんでもらえたらいいなと思います。

芝居心がないと歌えない

――舞台でも大忙しです。『ジャック・ザ・リッパー』がいよいよ開幕しましたね。

2019年に韓国で韓国版を観劇して、ぜひ日本でも上演してほしいと思っていました。楽曲はダイナミックですし、すごくきれいな旋律のデュエットもあり、心が動いていく様がスピード感を持って描かれています。ダークなファンタジ―という世界観は、日本でも受け入れられると思います。

――2役をやるのは大変ではないですか? 気持ちの切り替えはできますか?

稽古場だとジャックをやってすぐアンダーソンをやるということがあったので、気持ちや声色の切り替えが大変でしたが、本番ではすぐ別の役をやることはないので集中して取り組めています。ジャックは振り切っているキャラクターなので、そんなに苦労はありません。アンダーソンの方が、冒頭で語りから始まるなど作品の世界観を左右する役なので、難しさを感じます。振り切っているキャラクターって、やり過ぎくらいがちょうどいいし、その方が見ごたえがあるんですよ。一方、アンダーソンは、せりふのようなメロディラインが多くて、感情だけでやってしまうと音楽として成立しないし、歌だけだとお芝居として成立しない。そのバランスが難しいですね。なかなか一筋縄ではいかないというか、芝居心がないと歌えない楽曲が多いんです。

――ダブルキャストのお相手や、共演者の印象は如何ですか?

アンダーソンは松下優也くんと、ジャックは堂珍嘉邦さんとのダブルキャストですが、おふたりとも自分とは全然違うタイプ。アンダーソン役の松下くんは憂いがあり、心に何か抱えているのが立ち姿だけで分かります。ジャック役の堂珍さんは、自分とは全然違う角度からのアプローチで振り切ったジャックを演じていらして、こんな堂珍さんは見たことがない、という新しい姿に魅力を感じます。

ダニエル役の(木村)達成くんの魅力はまっすぐさ。歌声もまっすぐですし、ダニエルの素直さにぴったりはまると感じます。ダブルキャストの(小野)賢章くんは共演は初めてですが、声優の仕事でかかわったことはあるんです。声に魅力がありますし、声の表現が身体表現に乗っかったときの力、闇落ちしていく感じがものすごくうまい。

 出演者はミュージカルをずっとやっている人たちだけじゃないので、異色な感じもありますが、皆さん個性的で、個性が違うからこそ、いろんな感情がうずまく作品にマッチする。融合したパワーを感じてもらえるんじゃないかなと思います。

――ここを見てほしいというポイントはありますか?

暗い作品ではあるのですが、その闇の中にある光というか、希望というか、そういうものを感じていただけたらなと思います。これは、愛が引き起こした悲しい物語。愛は素晴らしいものだけれど、もろくはかないものでもあり、人を変えてしまうものでもあります。でも人間の原動力になるのも愛だったりします。そんなメッセージを感じてもらいたいです。

煮詰まったときほど、スープを煮込む

――最後に15周年を振り返って、今後の目標を教えてください

15周年記念でメモリアルブックを出させていただいたんですが、親からは「初心を忘れずに」「感謝の気持ちを忘れるな」と教えられてきましたが、それだけは今後もなくさずにいたいと思っています。マネージャーからは「25歳までに大人のいい男になりなさい」と言われていたんですけど、間に合いませんでした(笑)。ただ、30歳を超えたくらいから、カンパニーで年下も増えてきて、自分の立ち位置や役割を考えるようになりました。

昔は「イケメン枠」なんて言われることもありましたが、実は「イケメンって何?」とずっと不思議だったんです(笑)。イケてるメンズのことを指すなら、自分はたぶんイケてない方なんですよ(笑)。最近はイケメン枠で呼ばれることもなくなり、飾らないことがカッコいいと思うようになりました。ありのままがカッコいい、そんな生きざまを表現者としてこれからは目指したいと思います。

――プライベートはいかがですか?

昔から料理を作るのが好きで、コロナ禍で家で食べる機会が増えたので、これを機にレパートリーを増やそうとしています。有名な某家系ラーメンにはまり、加藤二郎と呼ばれるほど、本格的なラーメン作りにはまっているんですが、マネージャーに怒られるんですよね。「麺をつくるようになったら絶交する」と言われて、麺づくりは諦めました(笑)。食べるのが好きなので、食べたものを家で再現することが気分転換になるんです。仕事で煮詰まったときほど、スープを煮込む(笑)。料理好きな役者仲間から「圧力なべは絶対買った方がいい。時短になるし」と言われたんですが、料理をしている時間が好きなんです。手間をかけてこその料理と思ってしまうんですよ。
 加藤二郎も評判になって、俳優仲間も来てくれてうれしいです。コロナ禍で、今は作れないのがちょっと心苦しいですが、早くまた、皆に振る舞えたらいいなと思います。

取材・文/道丸摩耶(産経新聞)
写真/飯田英男(産経新聞)


加藤和樹(Kazuki Kato)

2005年ミュージカル『テニスの王子様』で脚光を浴び、2006年4月Mini Album「Rough Diamond」でCDデビュー。
毎年CDリリースや日本武道館他日比谷野外音楽堂など毎年単独ライブや全国ライブツアーを開催するなど、音楽活動を精力的に行っている。2009年からは韓国、台湾、中国でCDデビューを果たし、上海や北京、韓国でもライブを行ない雑誌の表紙などを飾るなど海外にも活動の場を広げる。俳優としてはドラマ・映画・舞台のほか、最近ではミュージカルや声優としても活躍している。
2021年4月アーティストデビュー15周年を迎え、『ローマの休日』ジョー・ブラッドレー役、『BARNUM/バーナム』フェニアス・テイラー・バーナム役の演技に対して第46回菊田一夫演劇賞・演劇賞受賞。

★Kazuki Kato Piano Live Tour 2021
11月14日(日)広島、12月19日(日)大阪で開催!
ライブ情報詳細は、加藤和樹公式サイト

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Information

【9月15日CDリリース】15周年記念アルバム「K.KベストセラーズII」

加藤和樹『K.Kベストセラーズ』初回限定盤シャケット.jpg

◆初回限定盤[CD2枚組 +60Pブックレット]※特殊パッケージTECI-1736 /定価6,500円
◆通常盤[CD2枚組] TECI-1738/定価4,500円

加藤和樹 IMPERIAL RECORDS サイト

【DISC1】
ライブメンバーであるTHE DRASTICSと共にスタジオライブ録音にて収録
01. WARNING 
02. 僕らの未来3月4日
03. Shining Road 
04. セイテンノヘキレキ
05. 魂 
06. Chain Of Love
07. 軌跡 
08. Pain
09. あなたと出会えて僕は幸せでした 
10. LADY GO!! 
11. EASY GO 
12. Shining Star 
13. Answer 
14. HERO
15. Laugh & Peace
16. REbirth (Album mix)【新曲】

【DISC2】
ピアノに吹野クワガタ氏を迎え、アコースティックスタイルにてカバー曲を収録
01. 春よ、来い
02. 最後の雨
03. Squall
04. いのちの歌
05. この道を

Information

【好評発売中】加藤和樹アーティストデビュー15周年メモリアルフォトブック「K」

メモリアルフックkatoukazuki.jpg

定価:3,600円
撮影:トヨダリョウ
発行:東京ニュース通信社
全国の書店、ネット書店にて販売中
詳細はTOKYO NEWS magazine&mook<https://zasshi.tv/>をご確認ください。

Stage Information

ミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』

シャックサリッハー写真.jpg

作曲:Vaso Patejdl
作詞:Eduard Krecmar
脚本:Ivan Hejna
演出:白井晃

出演:ダニエル:木村達成・小野賢章(Wキャスト)
アンダーソン:加藤和樹・松下優也(Wキャスト)
ジャック:加藤和樹・堂珍嘉邦(Wキャスト)
グロリア:May’n
ポリー:エリアンナ
モンロー:田代万里生

【大阪公演】2021年9月9日(木)、9月29日(水)
会場:日生劇場
【東京公演】2021年10月8日(金)、10月10日(日)
会場:フェニーチェ堺大ホール

公式サイト

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