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COLUMN

【MICHIMARU劇評】『二次会のひとたち』

「選ばれなかった」人へのエール

秀逸なタイトルである。
新郎新婦から結婚式の二次会の幹事を仰せつかった4人。女性2人は新婦の知人、男性2人は新郎の知人だ。しかし全員が、なぜか披露宴には呼ばれていない。だから4人は、「二次会のひとたち」。この設定からして、おもしろくないわけがない。

二次会のひとたち
©エイベックス・エンタテインメント

探り合いから始まった面識のない4人は、「ゴージャスで、ファンシーで、来てよかったと思える(…さらに新郎新婦からの注文は続く)」二次会をつくり上げるため、力を合わせて奮闘する。ドタバタのコメディでありながら、随所でドキリとさせられるせりふが光る。『ちゅらさん』『ひよっこ』(いずれもNHK)など数多くの人気ドラマを世に放ってきた脚本家、岡田惠和の充実ぶりがうかがえる1幕ものの会話劇だ。

膨大なせりふを自然体でこなす4者4様のキャラクターが効いている。4人のまとめ役である「幹事長」を務める四方田みどり(美村里江)は、毒舌でありながら随所に生真面目さをのぞかせる憎めないキャラクター。隙がないしっかり者に見えて、「男性にもモテる」という設定を体現するかのように、最後にはすっかり観客の心を持っていくのがずるい。


©エイベックス・エンタテインメント

新婦の大学時代からの友人、なのに友人グループの中でひとりだけ披露宴に呼ばれなかった篠田花(内田理央)は、どこにでもいそうな「普通っぽさ」をうまく表現した。一見、明るくはっちゃけたキャラだが、「音楽が止まるたび、誰かの居場所が奪われる」残酷な椅子取りゲームのような現実を恐れてもいる。


©エイベックス・エンタテインメント

新郎の会社の後輩、中内啓介(東啓介)は空気の読めないおバカキャラかと思いきや、重い過去を背負っている設定。大きな体をさらに大きく使って、4人の空気を悪気なくかき回す。最年少でありながら、気持ちが強くないとできない難役を勢いよくみせた。

二次会のひとたち_東
©エイベックス・エンタテインメント

新郎の幼なじみの遠山信夫(佐藤アツヒロ)は、「欠陥があるから(4人とも)二次会人間」なのだと言い放つ斜に構えた態度から、いつの間にか愛すべきいじられキャラになっている。イヤな奴からじわじわと好感度を上げていく、その変貌が巧みだ。

二次会のひとたち_佐藤
©エイベックス・エンタテインメント

そんな共通点のない4人は、かみ合わない会話と分かり合えない局面を繰り返しながら、奇跡のバランスで連帯感を強めていき、「二次会」は成功に近づいていく。仲間意識を強める過程では、それぞれの過去も明らかに。飽きさせない会話で無理なく物語を進める岡田脚本と、こぼれ落ちそうな感情をきちんとすくい上げる田村孝裕の演出はすこぶる相性がいい。

これからもずっと一緒に生きていく「結婚」について、新郎と新婦の考え方が浅かったことが露見する中、気づけばかけがえのない仲間となっていた4人もまた、「関係継続」か「その場限りの関係」かの選択を迫られる。二次会幹事として、結婚という人間同士の結びつきの重さをまじめに考えてきたからこそ、色あせた「普段の日」には、関係を維持できないのではないかと考えるみどり。観客の誰もが、多かれ少なかれさまざまな人間関係を失ってきた体験があるからこそ、このセリフは胸に刺さる。

二次会のひとたち
©エイベックス・エンタテインメント

それでも物語は、切なく、余韻を残したラストではなく、「頑張って生きていればこんなこともある」という明るいオチに収まる。賛否は分かれるかもしれないが、それこそが登場人物に愛あるまなざしを注ぎ続ける岡田による、主役でもなく、招待客にも選ばれなかった「二次会のひとたち」へのエールなのだろう。

4月30日まで、東京・新宿の紀伊國屋ホール、5月6、7日に大阪のCOOL JAPAN PARK OSAKA TTホール。


道丸摩耶(みちまる まや)
産経新聞記者。文化部、SANKEI EXPRESSの演劇担当を経て、観劇がライフワークに。
幼少時代に劇団四季の「オペラ座の怪人」「CATS」を見て以来、ミュージカルを中心に観劇を続けてきたが、現在は社会派作品から2.5次元作品まで幅広く楽しむ。
舞台は総合芸術。「新たな才能」との出会いを求め、一度しかない瞬間を劇場で日々、体感中。


Stage Information

舞台『二次会のひとたち』

作:岡田惠和
演出:田村孝裕

美村里江、内田理央、東啓介、佐藤アツヒロ

東京公演:2023年4月14日(金)~4月30日(日) 紀伊國屋ホール
大阪公演:2023年5月6日(土)~5月7日(日) COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール

公演公式サイトはこちら

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