エンターテインメントで笑顔を繋げる!

INTERVIEW

浦井健治×伊礼彼方Special対談《前編》

ふたりでつむいだ「スタートライン」ー人生の光に

ミュージカルや宝塚歌劇などのエンターテインメントで笑顔を繋げる!をモットーにスタートした、産経新聞社のエンタメプロジェクト「マチ★ソワ(待ちきれなくてそわそわしちゃう)」。記念すべき最初の記事は、ミュージカルや舞台に引っ張りだこの俳優、浦井健治さんと伊礼彼方さんによるスペシャル対談です。新型コロナウイルスの影響であらゆるエンタメが自粛となる中、ふたりはオリジナル曲「スタートライン」を完成させました。「未来に向かって今を走れ」と呼びかける疾走感あふれる曲は、浦井さん作詞、伊礼さん作曲によるもの。本日、スタートラインに立った「マチ★ソワ」の読者に向けて、新曲の制作裏話やファンの皆さんへのメッセージをたっぷり語っていただきました。
(対談は6月下旬、リモートで実施。一部、敬称略)

実は夫婦? 意外なふたりの関係

――おふたりの出会いは2008年のミュージカル「エリザベート」で同じルドルフ役を演じたこと。2016年の「王家の紋章」(2017年再演)まで共演の機会はなかったそうですね。実のところ、お互いはどんな存在なのでしょう?

浦井 彼方は良き理解者でありライバルで旧友? 小学校が一緒だったような感覚です。この業界に限らず、年齢を重ねると包み隠さず話せる相手をつくるのはなかなか難しくなってくると思うんです。確かに共演はすごく少ないけれど、お互い意識して影響を与え合い切磋琢磨できる関係。なので、彼は僕の中ではすごく稀な存在です。大切にしつつ、適度に距離を取りつつ…。

伊礼 そう。仲は良いんですけど、ご飯を食べに行く仲ではないという。ごはん行こうね、芝居の話しようねと言われるけど、かなったことは一回もない(笑)。

浦井 覚えてるよ! 覚えてるんだけど、お互い稽古中だったり本番中だったりして…。

伊礼 そうやって言い訳を重ねて行かないんですよ(笑)。でも、たぶん行く必要がないんだと思う。

浦井 年がら年中話をしなくたって通じているんです。もしかして夫婦? 行き詰まったとき活性化できる存在で、お互いの芝居を見て感想を言い合う、そういういいあんばいの関係。男同士って案外、それが一番いいんです。

伊礼 浦井健治はね、甘い仮面をかぶったビジネスマンです(2人爆笑)。決めたら突き進む男道。表には出さないけれど、その道を突き進んで頂点を目指していってるよね。俺は過去に、健ちゃんから「こういう道を進んでいくんだ」と聞いているから、有言実行しているなと思う。苦しみながらも戦っている姿勢がカッコいいと思うよ。

浦井 恥ずかしいね、画面越しにこれ言い合うの。

伊礼 自分が勝手に感じていることで、伝えることじゃないからね。芝居も勝手に見て感想だけ伝えて、帰り際、「あいつ、やっぱり有言実行だな」と思うだけだもんね。

浦井 ぼくは、彼方に観てもらいたいなって思って歌ったことが何回かあったんですよ。その中のひとつがミュージカル『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』。(最後の場面で)すべてをさらけ出し魂で歌ったとき、彼方が見たら何か感じてもらえるんじゃないかなと舞台上で思った。そういう存在ってなかなかいない。全然共演してないけど、いい友達というか戦友というか…。

伊礼 先に言ってくれたら観に行ったのに(笑)でも、うれしいな。そう思ってくれるのは。

浦井 役者って個人の戦いじゃないですか。いろいろなことをひとりでやらなきゃいけない。そんな中で、(井上)芳雄さんとか成河(ソンハ)、彼方とかがそれぞれの場所でがんばっているのは励みになり刺激になります。彼方とは、旅番組の企画とかで2人で海外に行ってみたいね?

伊礼 おもしろそうだけど、いろんなことを押し付けられそうだな(笑)

浦井 スペインに2人で行って…。

伊礼 いやだよ! ずっと通訳じゃん、俺!

浦井 2人で南米のイグアスの滝に行くのは? スピードボートに乗って、国立公園のホテルに泊まって星空を見て、「俺たち、ここまで来たな」って語る(笑)

伊礼 おもしろそう。企画力はすばらしいね、あなた。

浦井 企画力は、って言ったけれど、何か足りないかな?(笑)

伊礼 企画だけして、後は投げっぱなしだから(笑)

浦井 うん。いつもマネージャーが頭を抱えています(笑)

自粛期間中に訪れた「奇跡の時間」

――今回、新曲「スタートライン」が生まれたのも、浦井さんの企画力だったのでしょうか

浦井 コロナ禍の中でいつも応援してくれるファンの皆さんや演劇を愛してくれる方に勇気や元気を届ける取り組みができないかな、彼方とならオリジナル曲が作れるんじゃないかと思いついたんです。録音機材もそんなにない中、LINEや電話で確認し合って作業した奇跡のような時間でしたね。浦井的には「伊礼彼方とやる」ということがすごく大きかった。

伊礼 ぼくは健ちゃんの熱意に突き動かされた形です。バンド活動をやめた過去の自分へのけじめとして、オリジナル曲でアーティスト活動はしないつもりでした。ピアノやギターを弾いて(曲を)作っても、携帯のメモリーに保存したまま。健ちゃんの情熱と言葉がなかったらやっていなかった。ルドルフ役で出会って共鳴した、お互いにないものを持っているふたりだから。そのあと、健ちゃんが「歌詞書いたよ」と送ってきたのが、長ったらしい手紙(爆笑)! お父さんの教育がどうの、お母さんありがとう、みたいな…。

浦井 言わないで! 思ったことを書いたの!(2人爆笑)

伊礼 健ちゃんの内面が見えたのはうれしかったけど、歌詞にするにはちょっと…(笑)。どこをサビにするかどこをAメロにするか、文章をパズルのようにして1番を作って。

浦井 彼方がどんどん僕の書いた言葉を形にしてくれて、一気にできあがった。すごく耳に残りますよね。タイトルの「スタートライン」は最後に決まって、最初は「疾走感」って言ってたんですよ。

伊礼 そうそう。しっとりしたバラードより、疾走感がある応援歌みたいなのを作りたいなというのがあったので。

浦井 でも、2人とも欲張りなので、バラードの方も作ってしまったという(笑)。それが「fullmoon(フルムーン)」というもう1曲です。

伊礼 「スタートライン」が8割くらい完成したところで、「彼方、藤井フミヤさんの-Another Orion-みたいな曲があったら良くない?」っていう連絡をもらったの。いやいや、簡単に言うけど、あのような名曲はそう簡単にはできないぞ、と(笑)。

浦井 心に響くバラードにしようと語り掛けるような歌詞をめざしたんですけど、語り掛け過ぎちゃって。彼方が先生のように指摘してくれて、「宝石」というところを「満月」に変えてくれたんだよね。それを英語にしてタイトルは「フルムーン」。月には満ち欠けがあるけれど、ときには満月のように暗闇を照らしていく。これは深いなと。

伊礼 だって、「スタートライン」の歌詞に「彼方」という単語を入れ込んできたんですよ、浦井健治さんったら!

浦井 そうです。意図的です。

伊礼 そうだろうと思いました(笑)。なので、バラードの方では何かしら浦井健治を想起させるような…。でも、この名前はなかなか歌詞に使えないのよ。何かないかなと思って、ミュージカル「デスノート」で夜神月(ライト)を演じていたな、月だ、満月だ、と。

浦井 実はミーニングがもうひとつありまして、ぼく、舞台のデビューは「美少女戦士セーラームーン」なんです。彼方、そこまで考えてくれたんだなあ、と。

伊礼 あ…。まったく知らなかったわ。後付けで、そういうことにしてください(笑)

浦井 ラジオ(浦井健治のDressing Room/ニッポン放送)でもこの2曲を聞いてもらったんですけど、リスナーの方から、スタートラインに「元気をもらえます」、フルムーンに「泣けました」という感想をいただいて。気持ちが伝わって、すごくうれしいです。

伊礼 作曲者としても、めちゃめちゃうれしいです。

>後編はコチラから

聞き手・構成・文/道丸摩耶(産経新聞・文化部)
写真提供/ニッポン放送


浦井健治(Urai Kenji)

1981年東京都出身。2000年『仮面ライダークウガ』敵の首領役で俳優デビュー。
2004年ミュージカル『エリザベート』ルドルフ皇太子役に抜擢される。以降、ミュージカル、ストーレートプレイ、映像作品に出演。
近年の出演舞台に、新感線☆RS『メタルマクベス』disc3、『ゴースト』、『ヘンリー五世』、『デスノート THEMUSICAL』、『王家の紋章』、『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』、『天保十二年のシェイクスピア』など。2015年第22回読売演劇大賞最優秀男優賞を受賞するなど数々の演劇賞を受賞。
2018年からラジオ「浦井健治のDressing Room」(ニッポン放送)でパーソナリティを務めている。
2020年8月「メイビー、ハッピーエンディング」(シアタークリエ)、10月「リチャード二世」(新国立劇場) 、12月「オトコ・フタリ」(シアタークリエ)に出演が決まっている。

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伊礼彼方(Irei Kanata)

1982年神奈川県出身。中学生の頃より音楽活動を始め、2006年に舞台デビュー。2008年に『エリザベート』のルドルフ役に抜擢され、以降、多数のミュージカル、ストレートプレイ、朗読劇などで多彩な役柄を演じ、幅広く活動中。2019年には藤井隆プロデュースによるミュージカル・カバーアルバム『Elegante』をリリース。近年の主な出演作は『あわれ彼女は娼婦』、『王家の紋章』、『ビューティフル』、『ジャージー・ボーイズ』、『レ・ミゼラブル』など。今夏『ミス・サイゴン』エンジニア役で出演予定だったが公演中止に。「舞台芸術を未来に繋ぐ基金」で賛同人代表を務める。
2020年7-8月『Defiled-ディファイルド-』(DDD青山クロスシアター)、7月26日『The Voice』伊礼彼方×北川辰彦トーク&ライブ(俺のGrill&Bakery大手町)、9月『Billboard Live presents Premium Musical Selection』東京・横浜・大阪、11月ミュージカル『Beautiful』(帝国劇場)に出演予定。

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Information

ニッポン放送「浦井健治のDressing Room

毎週日曜日21:40〜22:00 放送中
俳優の浦井健治が音楽の話や舞台の話、趣味の話など、色々とお話ししちゃいます!

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