エンターテインメントで笑顔を繋げる!

MUSICAL/PLAY

【ゲネプロレポート】オリジナルミュージカル『イザボー』▷望海風斗が〝最悪の王妃〟に挑戦

ミュージカル『イザボー』が15日、東京都豊島区の「東京建物 Brillia HALL」で開幕した。開幕に先立ち行われたゲネプロの様子をレポートする。

望海風斗にとって〝挑戦〟の作品だろう。宝塚歌劇団退団後、初めてのオリジナルミュージカル。そして、フランス史上〝最悪の王妃〟とよばれる実在の人物を演じることへの挑戦。

ワタナベエンターテインメントと劇作家・末満健一がタッグを組み、日本のクリエイターたちの才能を集め、世界レベルの作品を創造・発信していく新規プロジェクト、「MOJOプロジェクト -Musicals of Japan Origin project-」の第一弾として制作された。

「TRUMP シリーズ」や「刀剣乱舞」で高い評価を得ている末満が題材として選んだのは、14~15世紀にかけての英仏間の百年戦争の時代にフランス王妃となったイザボー・ド・バヴィエール(望海)。フランス王妃でありながら敵対勢力の男たちに身をゆだね、さらにはフランスの王位を敵国に譲り渡した彼女。

イザボー・ド・バヴィエール/望海風斗

「フランスは1人の女(イザボー)によって滅ぼされ、1人の少女(ジャンヌ・ダルク)によって救われた」と憎まれる〝悪女〟だが、果たして彼女は何を思って何のために生きたのか。ロック調の楽曲にのせ、エンターテインメントとしてそこに迫ろうという意欲作だ。

現在のドイツに生まれたイザボーは、14歳でフランス国王シャルル6世(上原理生)へ嫁ぐ。政略結婚の意味もあったが、ふたりは初めて会った瞬間から真実の愛に結ばれる。多くの子をもうけるが、幸せな生活も長くは続かない。シャルル6世が突然発狂。正気を失った最愛の夫からは暴力をふるわれ、政敵のブルゴーニュ公フィリップ(石井一孝)からは「美しく着飾って子供を産んでいればいい」と人間としての存在意義を否定するような言葉をぶつけられる。

ブルゴーニュ公フィリップ/石井一孝

それでもイザボーが生きることができたのは、夫への愛ゆえ。イザボーと一瞬正気を取り戻したシャルル6世のデュエット《Love and Delirium-愛と錯乱-》は、圧倒的な歌唱力を持つ望海と上原ならではの音圧で、序盤の聴きどころであろう。

末満の演出・脚本は、無邪気な少女がうちのめされていく過程を丁寧に描くことで、〝最悪の王妃〟とよばれた女の人間としての真実に光を当てようとする。望海もまたそれにこたえるべく熱演をみせる。イザボーが「美しい獣になろう」と決意するナンバー《Queen of the Beasts》で、一幕のドラマはピークに達する。本作にかけた思いが炸裂する望海渾身の場面だった。

イザボーを取り巻くキャストも豊か。イザボーを映えさせようという意図であろうが、深紅のドレスをまとう彼女以外のキャストはほぼ黒いトーンの衣裳。一見平板になってしまうようにも思えるが、それぞれの個性豊かな演技と歌唱で魅せる。上原の鬼気迫る演技、石井の重厚な歌声。

甲斐は、狂言回し的な役割を担いながらも、芝居の部分では実の母への愛憎に懊悩する姿をきっちりと演じてみせた。難しい役どころだったかと思うが、持ち前のみずみずしさとさわやかさ、時に見せるコミカルさが、個性の強いキャスト陣の中でのよいアクセントとなっていた。

シャルル7世/甲斐翔真

さらにはそれぞれ政敵でありながらイザボーの愛人となる王弟オルレアン公ルイ(上川一哉)とブルゴーニュ公ジャン(中河内雅貴)の異なる個性の色気。那須凜、伯鞘麗名ら女性キャストもきっちりと見せどころをおさえている。

当時の時代背景や政治的関係の説明など、なかなかに処理の難しい素材ではあるが、末満は時空を自在に行き来させる四次元的な演出で果敢に挑んだ。
〝日本から世界に誇るミュージカルを〟という本プロジェクトの今後に期待したい。

取材・文/塩塚 夢(産経新聞社)

※関連記事
望海風斗さんインタビュー https://matisowa.jp/7915/
甲斐翔真さんインタビュー https://matisowa.jp/8081/

Stage Information

MOJOプロジェクト -Musicals of Japan Origin project-
ミュージカル『イザボー』

作・演出:末満健一
音楽:和田俊輔
主催・企画・製作:ワタナベエンターテインメント

【出演】
イザボー:望海風斗
シャルル七世:甲斐翔真
シャルル六世:上原理生
ジャン:中河内雅貴
ルイ:上川一哉
ヨランド:那須凜
フィリップ:石井一孝

大森未来衣 伯鞘麗名 石井咲 加賀谷真聡 川崎愛香里 齋藤千夏 佐々木誠
高木裕和 堂雪絵 中嶋紗希 宮河愛一郎 安井聡 ユーリック武蔵
【スウィング】井上望 齋藤信吾 高倉理子

【東京公演】
2024年1月15日(月)〜30日(火):東京建物Brillia HALL

【大阪公演】
2024年2月8日(木)~11日(日):オリックス劇場

【お問い合わせ】
ワタナベエンターテインメント TEL03-5410-1885(平日11時~18時)

公演公式サイトはこちら

RECOMMEND

NEW POST

東啓介の聴活♪
加藤和樹の#だからKOREA
PAGE TOP
error: