【取材会レポート】日本初演、3月7日開幕！ブロードウェイミュージカル『カムフロムアウェイ』

2024.03.07

きょう７日にいよいよ初日を迎えた日本初演のブロードウェイミュージカル『カムフロムアウェイ』の取材会が6日、行われました。演出のクリストファー・アシュリーさんと安蘭けいさんら12人のキャストが集合。半年間（！）という稽古を乗り越え、ハードなステージに臨む思いを語りました。

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2001年9月11日に発生したアメリカの同時多発テロ事件の裏で起きた実話をもとに本作。2013年に初演を迎え、トニー賞、ローレンス・オリヴィエ賞など数々の演劇賞を受賞。世界各国で上演されてきました。

舞台はカナダの小さな町・ニューファンドランド。テロを受け、アメリカの領空が閉鎖され、急遽38機の飛行機がニューファンドランドの空港に降り立ちます。約1万人の人口は、一夜にして倍に。人種も国籍もさまざまな人々が5日間をともに過ごし、飛び立つまでのドラマを描きます。

作品は1幕のみ。100分にわたって、12人のキャストが互いに助け合いながら約100役を入れ替わり演じる難しいステージです。稽古時間は異例の長さの半年間。安蘭さんは「すごく密度の高いお稽古をさせてもらいました。日本キャストしかできない味を出せたら」と振り返りました。

長い時間を一緒に過ごしただけにキャスト陣の絆も強く、浦井健治さんは「安蘭さんが袖中で『始まるって終わっちゃうことだよね、さみしい』とおっしゃっていたように、作品からも現場からも人と人との温かさを味わわせてもらっている」。

加藤和樹さんも「カンパニーというよりもはやファミリー」といい、「日比谷界隈でいちばんエネルギーのある作品にしあがった」と胸を張ります。

咲妃みゆさんも「ひとりの人間として、今後の人生で心にずっともっていたい考え方などを、たくさん学ばせていただいた。この作品のモデルとなった方への敬意を胸に大切にお届けしたい」と作品のすばらしさを改めて伝えてくれました。

日本初演となる今回のキャストは、〝ミュージカル界のアベンジャーズ〟（加藤さん）と言いたくなるほどの、そうそうたるメンバーが結集しました。田代万里生さんは「豪華なキャストが集まって、注目の高さを感じている」そう。一方で、日常生活を生きる現実と地続きの物語だけに、「ナチュラル、カジュアルな衣裳で、男性は全くメークしていないんです」と明かし、「こんなにも日常と非日常のカテゴライズがない作品は初めて」。

柚希礼音さんも「演じないということを演じてきた。全く演じずにやることがテーマで、すごく難しかった」と本作ならではハードルの高さを語りました。「悩んでしまうこともあったけれど、そのたびにキャストのみなさんが、家族のように、自分のように、教えてくれる。作品もキャストもあたたかい。あたたかさでどうにかなるんじゃないか」と笑わせながらも、「ぽかぽかとあたたかいこの作品をしっかりと届けたい」と意気込みます。

実話をもとにしているため、登場人物も実際の市井の人々がモデル。石川禅さんは「実在した人物を演じることはたくさんあったけど、今もお元気で実在している方を演じることは初めて。かぎりなくドキュメントに近づけたフィクション。嘘をつかないで、その気持ちになりきるという高いハードルを飛び越えていきたい」と決意を語りました。

難しい内容ですが、百戦錬磨のキャストとあって、稽古場は笑いに包まれているそう。森公美子さんは、「みんな仲が良いので、毎日差し入れがあるんですよ。普通はおせんべいやお菓子ですが、なんとケンタッキーのフライドチキン！マクドナルドのときもありました。『肉もの』がある稽古場なんて、初めてでした」と驚きのエピソードを明かします。

濱田めぐみさんも、「1メートル以上離れずに、ぴたっとずーっと一緒にいました。親族のより集まりみたい。不安もあるけれど、そんなときでも見回すと家族がいる感覚」と、キャストの結束力を実感しているそう。それだけに、思い入れもひとしお。シルビア・グラブさんは「通し稽古で終盤のナンバーを歌っていたら、ふと窓の外を見たときに涙がとまらなくなっちゃって…。お客様が入ったら、どれだけのものになるんだろうと」。

橋本さとしさんも、「役者キャリアの中で最も過酷。めちゃくちゃミスりました。いっぱいミスしながら、やっとここにたどりついた。営業トークじゃなくて、本気で観にきてください、と言いたい。お待ちしてます！」と熱くアピール。

災害や、暗いニュースが相次ぐ今の日本でこの作品を上演することに意義があると語るのは吉原光夫さん。「穏やかで誇り高い作品。人が人を傷つけあう時代に穏やかな風を届けたい」と話しました。

演出を手掛けるクリストファー・アシュリーさんは、本作でトニー賞ミュージカル演出賞を受賞。「この美しい劇場でこの素晴らしいキャストとともにお届けできることに感謝します。この作品にはやさしさ、寛大さのメッセージが込められています。吉原さんがおっしゃったように、穏やかな風を感じていただければ幸いです」と観客へ向けたメッセージを送りました。

最後は橋本さんが、「今悩んでいる方、壁にぶつかっている方に、エールを送りたいと思います！」とスーツのジャケットを脱ぎ捨てて音頭をとり、全キャストで三三七拍子！日生劇場60周年イヤーの最後を締めくくる記念の公演の開幕に向けて、熱いスタートを切りました。