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INTERVIEW

山崎育三郎さん「皆が無理だと言うところにしか大きな変化はない」<後編>

デビューしてから3度目の「年男」だった昨年、自身の「第一章」を締めくくったという山崎育三郎さんにとって、2023年は、「再スタート」の年なのだそうです。インタビュー後編では、山崎さんが主演される、ミュージカル『ファインディング・ネバーランド』について語っていただきました。

――さらに5月には、ミュージカル『ファインディング・ネバーランド』に主演されます。これはどんな作品ですか?

ピーターパン誕生秘話というか、ピーターパンを書き上げる過程の物語ということで、子ども向けかなと思いきや、大人のための物語です。ぼくはミュージカルを見るときに、「これはいい作品!」と自分の中で評価するポイントがいくつかあるんですが、『ファインディング・ネバーランド』はこのポイントが全部当てはまる作品です。まず、名曲がある。自分自身も曲から入るので、曲がいいというのはすごく重要。「この曲だ」「この曲いい!」と思える曲が、何曲もあります。

主人公のジェームズ・バリと4人の子ども達との物語で、ドラマ「リエゾン」に引き続き子ども達がすごく重要な役割を担っています。自分も父親として子ども達と日々生活する中で、「リエゾン」も『ファインディング・ネバーランド』も、等身大の自分が活かせる役に出会えたなと感じます。 ドラマの撮影で子ども達と関わっていても、日常で子どもをみていても、やっぱり子ども達の存在や発想力は、人間として一番価値のあるものだと思います。自由でいること、自分を信じて、ありのままの姿でそこにいること。子どもって見るものすべてが新鮮で、ずっと感動しているんです。

――子どもの力は偉大ですね。

そういう想像力や発想力、自由なところから、エンターテインメントが生まれると思います。大人になるにつれ、こういう風にしちゃいけない、ここでは静かにしなきゃいけない、と空気を読んで小さくなっていってしまう。でも、子ども心を忘れずにいたら、きっとそこから魅力的なものが生まれます。ぼくは以前、「こどもこころ」というタイトルの曲を作詞したことがあるんですが、「子ども心というのが一番価値があるものだ」という思いを歌詞にこめました。『ファインディング・ネバーランド』はまさに、そういうことに気づかされる、大人たちが自分の原点を思い出す作品です。こんな時代だからこそ、原点に返って、自分を見つめ直す時間になるのではないでしょうか。

――山崎さん自身も、空気を読まないようにしよう、小さくならないようにしよう、と心がけることはありますか?

ミュージカルしかやっていなかった自分が、テレビに出ると決めたのは、かなり勇気のいる決断でした。エンターテインメントにもいろいろなジャンルがある中で、当時、ミュージカルはちょっと孤立した場所で盛り上がっているようなイメージ。自分にとっては大好きな場所だったけれど、劇場も限られるので全国では見たことのない人の方が多いし、若い時に同級生を誘っても、「ミュージカルはわからないから」と断られることもありました。帝国劇場で主役を経験した後も普通に顔を出して歩けたし、街を歩いていて声をかけられることもありませんでした。

だからテレビに出ることで、もっといろいろな人にミュージカルを知ってもらえるんじゃないかと考えることはありましたが、いざ挑戦するときはすごく怖かった。ミュージカルで主役をやっていたからといって、ドラマに出られるわけでもない。活躍できる保証もない。それなのに通常なら2、3年先まで決まっているミュージカルのスケジュールを全部ゼロにしなきゃいけないわけです。主役のお話も断らなきゃいけない。大きな覚悟が必要だったし、ミュージカル界からも「大丈夫か?」「今までいないんだから、やめておいた方がいいんじゃないか」と心配されました。

――それでも挑戦すると決めたのはなぜですか?

ぼくは、今まで誰もやったことがない、皆が無理だよと言うところにしか、大きな変化はないと思っているんです。否定的な意見が出れば出るほど、じゃあ、それは新しいんだって思って燃えるタイプ(笑)。もしかしてテレビの世界に行って失敗するかもしれないけれど、チャンスをもらえたら、ミュージカル界とテレビメディアの架け橋になれるかもしれない。結果的に自分の場合は運が良かっただけですが、当時出演させていただいた連ドラが高視聴率のTBS日曜劇場「下町ロケット」(2015年)で、かきまわすような役をいただけたことで多くの人に見ていただけて、次のドラマにつながりました。 バラエティー番組でも、何か爪痕を残そうと、「プリンスです」とちょっと誇張したキャラクターを強調すると、今までになかった存在として面白がってもらいました。初めてのことだらけでしたし、どこへ行ってもアウェーでどうしていいかわからず、最初はとにかくがむしゃらでした。でも、やはりあの挑戦がなかったら何も変わらなかったと思うし、日本のミュージカル界を少しはお茶の間に広げられたかなと思っています。 大きな変化を、ムーブメントを起こそうとするのであれば、怖いと思うところや、人からやめなと言われるところに挑まないと何も変わりません。それは、自分の経験から感じたことです。

――新しい年の始まりに当たり、すごく勇気づけられる言葉です。最後に、今年チャレンジしたいことや今後の目標を教えてください。

こうなりたいということより、今を必死に生きることしかないです。年を重ねれば重ねるほど、今この瞬間に与えられたものにどれだけ思いをもって集中してできるか、日々はその積み重ねなのだと思い知らされます。 ただ、新作とかオリジナル作品にはこだわってやっていきたいと思っています。これまでみたいに、大きな作品の再演だけでなく、違うアプローチも増やしていきたい。『エリザベート』『レ・ミゼラブル』『モーツァルト!』など、これまで出演してきたミュージカルの多くは、先輩たちが積み上げてこられた、子どものころから大好きな作品でした。ずっとそういう作品に出たいと思っていて、それがかなってきたわけですが、ここからは、日本のオリジナル作品も含めて、新しい作品を、『エリザベート』や『レ・ミゼラブル』のように長く続くヒット作に育てたいという思いが出てきました。『ファインディング・ネバーランド』はそういう作品になると思いますし、これからも愛される作品に携わっていけたらと思います。

前編記事はコチラへ

取材・文/道丸摩耶(産経新聞社)
インタビュー撮影/黒澤義教


山崎育三郎(Yamazaki Ikusaburo)

1986年生まれ、東京都出身。2007年にミュージカル『レ・ミゼラブル』のマリウス役に抜擢。以降、ミュージカル俳優として活動。主なミュージカル作品は、『モーツァルト!』『エリザベート』『プリシラ』。2015年に出演したTBS系ドラマ「下町ロケット」で一躍注目を浴びる。NHK・ドラマ10「昭和元禄落語心中」に出演。NHK朝の連続テレビ小説「エール」では、主人公・古山裕一の幼なじみ、佐藤久志を演じ、さらなる注目を集める。2017年からラジオ番組「山崎育三郎の I AM 1936(ニッポン放送 毎週土曜 21:30~22:00)」のパーソナリティを務め、この番組から生まれたライブイベント「THIS IS IKU」第5弾が東京ガーデンシアターにて3月21日に開催される。

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Stage Information

ミュージカル『ファインディングネバーランド』

原作:デヴィッド・マギー脚本によるミラマックス映画作品
アラン・ニーによる戯曲『The Man Who Was Peter Pan』
台本:ジェームズ・グラハム
作曲・作詞:ゲイリー・バーロウ&エリオット・ケネディ
翻訳・演出:小山ゆうな

ジェームズ・バリ:山崎育三郎
シルヴィア・デイヴィス:濱田めぐみ
フック船長/チャールズ・フローマン:武田真治
メアリー・バリ:夢咲ねね
デュ・モーリエ夫人:杜けあき 他

公演日程
【東京公演】
2023年5月15日(月)~6月5日(月) 新国立劇場 中劇場
【大阪公演】
2023年6月9日(金)~12日(月) 梅田芸術劇場メインホール
【久留米公演】
2023年6月17日(土)・18日(日)久留米シティプラザ ザ・グランドホール
【富山公演】
2023年6月24日(土)・25日(日)オーバード・ホール
【名古屋公演】
2023年6月30日(金)・7月1日(土)愛知県芸術劇場 大ホール

公演公式サイトはこちら

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