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MUSICAL/PLAY

【観劇コラム】『BACKBEAT』▷悲しい光芒

光芒をみた。駆け抜けていく5筋の光。消えてもなお、見たものの心で輝き続ける。

世界を席巻したロックバンド「ザ・ビートルズ」。活動期間はわずか7年半と聞くと、その名前の輝かしさと比して意外な気持ちになるのではないだろうか。『BACKBEAT』はバンド創成期を描いた青春物語だ。1994年公開の同名の伝記映画を監督自ら舞台化。日本では2019年に初演、今回は4年ぶりの再演となる。
 
ジョン・レノン(加藤和樹)、ジョージ・ハリスン(辰巳雄大)、ポール・マッカートニー(JUON)。ここまではみんなが知っているビートルズだ。ピート・ベスト(上口耕平)、そしてスチュアート・サトクリフ(戸塚祥太)。そう、ビートルズは「5人いた」。


(写真左から)ポール/JUON、ピート/上口耕平、スチュアート/戸塚祥太、ジョン/加藤和樹、ジョージ/辰巳雄大(撮影:岡千里)

物語は「5人目のビートルズ」とよばれるスチュアート・サトクリフ(スチュ)と、ジョン・レノンの2人の関係性を軸に進んでいく。

1960年のイギリス・リヴァプール。スチュはアートカレッジに通う才能豊かな青年だ。その画才とずば抜けたルックスでカレッジのスター的存在だったスチュだが、親友のジョン・レノンに誘われ、ベーシストとしてバンドに参加することとなる。

物語の冒頭。キャンバスに向かって絵筆を叩きつけるスチュ。世界と格闘する青年の孤独とエネルギーが戸塚の立ち姿からにじみ出る。そこへ、客席を進んできた4人がステージにあがってくる。リーゼントで決めたジョン、ジョージ、ポール、ピートだ。黒いコートをバッと脱ぐ所作のカッコいいこと!

ジョンはスチュに、まるで恋焦がれるかのような熱烈な感情を持つ。自分自身も圧倒的な才能を持ちながらも、幼子のようにスチュを求めていく姿。時にはしゃぎ、時に自分も周りも傷つける。そんな狂気をはらんだ役どころを演じる加藤和樹の存在感たるや。


ジョン・レノン/加藤和樹(左)、ポール・マッカートニー/JUON(撮影:岡千里)

突き刺さるような孤独感と色気。今回は4年ぶりの再演となるが、加藤は完全に“ジョン・レノン”という存在をとらえたのだろう。
みずみずしいスチュ・戸塚と凄みのあるジョン・加藤。序盤、2人が顏を寄せ、タバコに火をつけるシーンの色気!この瞬間から鳥肌が止まらなくなった。

「トップ・オブ・トップ」を目指す野心あふれるバンドは、オファーを受けてドイツ・ハンブルクに乗り込む。これが「ビートルズ」の伝説の始まりだった。

オファーを受けて…と期待した彼らだったが、現実は散々なもの。クラブは酔っ払いが集う劣悪な客層だったし、6時間ぶっ通しで演奏しろという。おまけに寝床はつぶれそうな映画館のスクリーンの裏。

だが、彼らのエネルギーは収まることはない。なれない異国に戸惑いながらも、寝るときはパンツ一枚でじゃれあい、ドイツの女の子と遊び、曲作りに熱心に取り組む。

本作の一番の見どころは、なんといってもバンドの生演奏だ。「Johnny B.Goode」から始まり、ビートルズの名曲をキャストが生で奏でる。胸にズンズン響くリズムと空気を切り裂くギター、ジョン・加藤のパンチの聞いたボーカル。ビートルズのライブ会場に居合わせているような気になれる。生の観劇体験でしか味わえない贅沢だろう。

もちろん、ジョージ、ポール、ピートそれぞれにも見せ場がある。ジョージ・辰巳の超絶ギターソロは本作までギターが弾けなかったとは到底信じられない圧巻ぶりだ。ポール・JUONの伸びのある歌声、ピート・上口のクールなたたずまいと熱いドラムのギャップも良い。

瞬く間に人気を得ていくビートルズ。だが、スチュは揺れ動いていた。自分は本当はミュージシャンではない、絵描きだ…!その思いは、女性写真家のアストリッド・キルヒヘア(愛加あゆ)との恋により、加速していく。

自分の進むべき道を追い求めるスチュと、スチュがバンドから去るのを受け入れることができないジョン。ふたりは葛藤し、対立し、そして―。

あまりにも有名なバンド。有名すぎて遠い存在だった彼らだったが、2023年の東京に、確かに存在していた。伝説ではなく、傷つき、求めるただの青年として。

青春をはるか遠くに置いてきた者に、彼らが残した光の軌跡は、まぶしく、かなしく突き刺さった。

取材・文/塩塚 夢(産経新聞社)
撮影/岡千里

Stage Information

『BACKBEAT』

『BACKBEAT』

作:イアン・ソフトリー  スティーヴン・ジェフリーズ
翻訳・演出:石丸さち子
音楽監督:森 大輔

出演:戸塚祥太(A.B.C-Z) 加藤和樹
辰巳雄大(ふぉ~ゆ~) JUON(FUZZY CONTROL) 上口耕平
愛加あゆ
鍛治直人 東山光明 西川大貴 加藤 将 工藤広夢 
尾藤イサオ

企画・製作 シーエイティプロデュース

公演日程:
【東京公演】
日程:2023年5月24日(水)~5月31日(水)
会場:東京建物 Brillia HALL
料金:S席 10,500円 A席 7,500円(税込・全席指定) ※未就学児入場不可
お問い合わせ:スペース 03-3234-9999(平日 10:00〜12:00/13:00〜15:00)

公演公式サイトはこちら

【プレビュー公演】
日程:2023年4月23日(日) 18:30開演
会場:江戸川区総合文化センター 大ホール

【兵庫公演】
日程:2023年4月28日(金)~5月3日(水・祝)
会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール

【熊本公演】
日程:2023年5月6日(土)~5月7日(日)
会場:市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館) 大ホール

【大阪公演】
日程:2023年5月20日(土)~5月21日(日)
会場:枚方市総合文化芸術センター 関西医大 大ホール

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