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INTERVIEW

【Special対談】今村ねずみ×本田礼生若手の存在「35年やったご褒美」

 1986年から活動する演劇集団「THE CONVOY(ザ・コンボイ)」が35周年を迎え、12月10日から最新作『コンボ・イ・ランド』が上演されます。今回は、オリジナルメンバー5人に加え、9人の若手も出演する過去最多14人の舞台。主宰の今村ねずみさんと若手メンバーの本田礼生さんに、進化を続ける『CONVOY SHOW』の魅力や新作の見どころ、おふたりの出会いとなったオーディションの思い出などについて、語ってもらいました。

合格の決め手は「一歩出しの速さ」

――まずはお稽古の話から。お稽古は大変ですか?

本田 濃密ですね。コンボイショウの稽古は、「ワンテイク」をめちゃめちゃ大切にしている空間なんです。「確認で流してみよう」という作業がない。やるんだったら、答えというか、自分の中の手ごたえを見つけるためにやる。ワンテイクをとても大切にしている分、濃密です。

今村 そうだね。休憩時間でも誰かが稽古をやりだすし、どこかのチームが稽古を終えてスペースが空くと、別のチームが始めてる。

本田 やってますね(笑)。

今村 稽古の段階では、「できる」か「できない」かではなく、「やる」か「やらない」か。礼生は潔くやる奴だから、他の若いメンバーにもいい刺激になっていると思います。こいつは真面目なんですよ。真面目すぎる。だから、「頭、固くなるなよ」と言うときはあります。

本田 はい。言われます。

今村 礼生に芝居の感想を聞くと、「芝居が好きなんだな」と感じるね。稽古でも、「このシーンの相手役者の中のセッション感は…」とか、絶えずそういうことを追い続けてる。彼のいいところでもあるけど、芝居は答えがありそうでないものだから、考えすぎたり、固定観念で答えを出さないように、「礼生、もっといい加減でもいいんじゃない?」と思うくらいです。でも、しょうがないよね。いいところも悪いところも、表裏一体だから。

本田 ねずみさんがそう思ってくださっているのは、めちゃめちゃ感じます。一緒にお芝居しているときも、ねずみさんがいろいろなパターンを試してくださって…。

今村 おまえを使って遊んでるんだよ!

本田 (笑)。そうやって教えてくださっているんだと感じます。

――本田さんがコンボイに出るきっかけになったオーディションについて教えてください。今村さんは、本田さんのどこに魅力を感じたのでしょうか?

今村 うちのオーディションはとにかく長いんですが…。

本田 9時間くらいありました。

今村 踊ります、歌います、芝居もします、って言ってありますけど、はい次のグループ、次のグループって、それをずっとひっきりなしにやらせるわけです。コンボイショウの稽古スタイルに近い。自分がそういうつくり方をしているので、それに付き合ってくれる人かどうかを見ている部分もありますね。踊っている人が誰も引っかからないときは、踊っていない人も見ています。ずっと繰り返し躍らせていると、途中であきらめるやつもいるし、しつこいやつもいる。で、こいつは、歌も踊りも何にも引っ掛からなかったんだけど(笑)。

本田 自覚はあります(苦笑)。

今村 今は、こんなに歌も踊りもうまくなっているのに、当時は、あれ?みたいな…。ポテンシャルはあったんだろうけど。

本田 いやいやいやいや…。

今村 でもね、さんざんやって疲れ果てた時間に、最後に、「芝居のここをもう一回やります。次のグループ、来てください」と言ったときの一歩の踏み出しが、誰よりも速かったんです。しかも俺は、芝居の始まりにあたって無理難題を出した。「わけわからない格好をしてくれない?そこから芝居やってくれない?」って。で、その注文に、一番わけのわからない、一番がんばったポーズだったのが礼生だったんですよ。

本田 (爆笑)。

今村 俺は言ったんです。「そこからやったら芝居が大変だぞ?いいのか?」って。そしたら「はい」って答えてやりだして、しかも、やりきった(笑)!その心意気が決め手かな。最後の最後まで、たぶんやけくそで、アクロバットをばんばん見せてくれたんで、身体能力が高いのは分かったし。

本田 やりました(笑)。はっきり覚えています。

今村 みんな、帰るときはくたくただったもんね。

本田 コンボイの稽古と変わらないですよ。オーディション中に、休憩があるんですから。そんなオーディション、聞いたことがない(笑)。

今村 その長時間のオーディションで、最後まで生きが良かった。礼生はいでたちがすがすがしいじゃん?草原をぱぁって走ってきたみたいな、すがすがしさがある。地方出身なのに(笑)。そこがいいんだよね。

昭和の「無骨な演劇魂」

――本田さんには、「絶対に受かってやる」みたいな気持ちがあったんですか

本田 なかったです。他の方の踊りを見た瞬間に、「あ、場違いなところに来ちゃった」と思ったくらい。すごく踊れる方が多かったので。

今村 多かったね!

本田 基礎からしっかり、十何年もやってきたんだろうな、と思う方々の中で、やったことのないジャズダンスを踊らないといけない。という場面で僕の中のスイッチが変わってしまいました。オーディションに受かってやるというより、ここで何かを盗んで帰ろうという気持ちになりました。ねずみさんが、他のうまい人たちにどういうことを言うんだろう、とか…。

今村 そうだったのか。

本田 ぼくはブレイクダンスをやってきたので、そのターンでは培ってきた表現力でがむしゃらに挑戦しましたけど、すぐに弾かれて(笑)。ねずみさん始め、踊れるメンバーの人たちがどうやってセッションしていくんだろうというのを見ていました。お芝居は、自分がやってきたものを唯一ぶつけられるタイミングだと思っていましたから、生きが良かったのかもしれません。

今村 自分たちと一緒にやるメンバーを選ぶわけじゃないですか。もちろん、いろいろな色の人がいてショウはできるんだけど、その色がひとつになる瞬間がある。コンボイの場合は、スーツを着て、ジャズの踊りを決めるようなシーンですね。本田礼生が今までやってきたジャンルとはまったく違うけど、今できなくても、鍛えたらできそうかなというのは見ていました。公演の1年くらい前にやったオーディションだったし、伸びしろはあるかなと。でも、ちゃんと準備しておけと言ったのに、こいつ、何も準備してないの!

本田 準備しました! …したつもりです!

今村 タップもジャズもやっておけって言ったのに!

本田 やりました! カラオケボックス事件はその中で起きたんですから。

――カラオケボックス事件?

本田 ぼくはタップをやったことがなかったので、まずタップの初級クラスを受けてそこからはひたすら自主練をしていたんです。ある時、カラオケボックスなら音が外に漏れないからいいかな、と深夜に行って練習していたら、店員さんに注意されて、出入り禁止になったんです。床に傷がつく恐れがあるし、よく考えれば、ダメだって分かるんですけど、当時はがむしゃらで…。

今村 でも、「asiapan」(本田さんが参加した最初の公演)の稽古では、初日から玉砕したね?

本田 玉砕しました。

今村 本読みの段階から、「えええええ?」ってなった(笑)。俺は、稽古の最初で毎回、みんなに今回の作品がどういう作品かを聞くんです。書いた本人も気づかない解釈を教えてもらえることがあるので。みんなで、どういう世界を生きようかって話し合う。礼生はそのとき、「あ、そうか」ではなく、「えええええ?」みたいな答えを…(爆笑)。

本田 そうでした。…5年前の話ですからね!!

今村 今回はなかったよね?

本田 いえ、今回もありました…。

今村 あ、そうか。こいつ、これまでの作品だ、前やったシーンだ、って高をくくってきたんですよ!

本田 ないない! それは本当に、絶対に、ないです!!! 今回はだいぶ分かってきましたが、それでも気づけていなかったこともいっぱいあって。稽古を進めていくと、やっている間に、「これだ!」と思う瞬間があります。

今村 華奢な感じに見えるけど、礼生の演劇魂は無骨ですからね。平成生まれの割に、昭和のフィーリングを持ち合わせている子です。俺が持ち合わせているものを、たぶん彼も持ってるんだろうなという嬉しさはあります。

本田 ありがとうございます。

今村 たまたまオーディションで知り合った関係だけど、でも、オーディションに来てくれなかったら、このめぐりあわせはなかった。パスを出したのは俺だけど、パスを受け取って自分のものにしたのは彼。今回集まった若手の中で、彼は年齢的には真ん中くらいだけど、10代の子と芝居をしてると、礼生がお兄さんに見えちゃうのが不思議だね。

「エモい」の盛り合わせ

――本田さんにとって、今村ねずみさんはどんな存在ですか?

本田 最近やっと、がちがちに緊張せずに話せるようになりました。

今村 最近? 5年もかかるの?

本田 そもそも共演するなんてあり得ないと思っていた方でしたから、憧れが強くて、会話するのも緊張していたんです。でも、セッションやお芝居を創っていくにあたって、そういう部分がそぎ落とされて、楽しめるようになってきたのは感じます。それと同時にねずみさんに対する緊張もほぐれていきました。たくさんの時間を共有できることは僕にはありがたいことです。いつか、ねずみさんとコンボイ以外でもご一緒できたらと思っています。それは、僕の夢でもあります。

――最後に、「コンボ・イ・ランド」の見どころやおすすめポイントを教えてください

今村 千葉に「ディズニーランド」があるように、新宿に「コンボ・イ・ランド」があるので、楽しみに来てくださいって感じかな。今までコンボイを観たことがある人も、また違った味で楽しめると思います。これまでの焼き直しではなく、新しいものを創っていますから。自分たちがやった作品を、若い彼らがやったらどうなるのか、そういうチャレンジも入れています。自分たちががむしゃらに生きた姿を、彼らがライブでやる。いい血が流れている感じがします。その辺の生き様は、本田礼生にすべてかかっていますから。

本田 そんなことはないです! みんな横一列ですから。コンボイショウは!

今村 その中に太い血が流れています。

本田 とにかく「エモい!」です。エモいという言葉は今まで使ったことないんですけど、あえて使います!最初のシーンから、 「エモい」の盛り合わせ! 一本通してのコンボイショウなので、どこのシーンがというより、全編通してのエモさが見どころです。

今村 本田礼生の輝きに目がくらむと思います!

本田 違います! みんな輝いてます!(笑)

今村 礼生はコンボイに出て、何年になった?

本田 5年になります。

今村 彼の演劇人生の中で…って、演劇やって何年になる?

本田 10年くらいなので、半分くらいが…。

今村 彼の演劇人生10年の半分にコンボイショウがあるのは、嬉しいことですよね。礼生は「自分にとってのコンボイショウ」に明確な意志を持っている。若いとか歳を取っているとか関係なく、その瞬間を一緒にセッションする人間として、それはすごく嬉しいことです。

本田 ありがとうございます。

今村 コンボイショウを35年やってきた中で、こうやって、コンボイショウを好きでついてきてくれる若い彼らの存在が、ぼくがもらったご褒美なのかもしれないですね。

聞き手・構成・文/道丸摩耶(産経新聞社)
写真/酒巻俊介(産経新聞社)


今村ねずみ(Imamura Nezumi)

1958年6月11日生まれ、北海道出身。1986年に自ら、作・構成・演出、出演で「THE CONVOY SHOW」を立ちあげる。2016年「1960」、2017年「asiapan」、2018年「星屑バンプ」「ONE!」と毎年新作を発表し、現在はオリジナルメンバーに若手を加え新しい形で「THE CONVOY SHOW」を進化させている。武道館コンボイ祭で、第58回読売広告入賞、第12回「ザ・ヒットメーカー‘99」演劇部門受賞、第35回菊田一夫演劇賞を受賞。


本田礼生(Reo Honda)

1992年10月28日、愛媛県出身。 ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン 菊丸英二役で注目を集める。その後も、THE CONVOY SHOW公演、MANKAI STAGE『A3!』シリーズ、舞台『刀剣乱舞 天伝 蒼空の兵-大阪冬の陣-』、テレビドラマ『KING OF DANCE』などに出演。RKBラジオ「カリメン」内の番組『てんご』(毎週火曜日)にてパーソナリティを務めるなど幅広く活躍中。

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Stage Imformation

35th Anniversary THE CONVOY SHOW vol.41
『コンボ・イ・ランド』

作・構成・演出:今村ねずみ

出演:瀬下尚人 石坂勇 舘形比呂一 トクナガクニハル/
本田礼生 伊藤壮太郎 佐久間雄生 加藤良輔 後藤健流 バーンズ勇気 帯金遼太 古賀雄大 山野光/今村ねずみ

【公演情報】
■東京公演:2021年12月10日(金)〜12月18日(土) 
こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ
※問い合わせ:ディスクガレージ 050-5533-0888(平日12:00-15:00)

■大阪公演:2021年12月30日(木)〜12月31日(金) 
森ノ宮ピロティホール

※問い合わせ:キョードーインフォメーション 0570-200-888(平日・土曜11:00~16:00)
料金:全席指定 11,000円 ※未就学児入場不可

THE CONVOY SHOW公式サイト

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