北村一輝さんと明日海りおさんがW主演するミュージカル『王様と私』の製作発表記者会見が1月26日、東京都内で行われ、おふたりが意気込みを語りました。
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1951 年にブロードウェイで初演され、1952 年に第 6 回トニー賞作品賞など5部門の栄冠に輝いた名作ミュージカル。日本では、ミュージカル黎明期であった1965年に東宝が日本初演(王様:市川染五郎 ※現 二代目松本白鸚、アンナ:越路吹雪)を製作して以来、当代の名優たちによって演じ継がれてきました。
今回は今年4月から東京・日生劇場、続く5月に大阪・梅田芸術劇場メインホールで上演されます。
舞台は19 世後半のシャム(現タイ)。近代化を目指す国王と、子どもたちの教育を任されたイギリス人家庭教師が国籍や身分を超えて心を通わせていく姿を描きます。王様にはミュージカル初出演となる北村一輝さん。家庭教師のアンナを演じるのは明日海りおさんと、豪華なW主演が実現しました。
会見は、公演PVの紹介から始まりました。名曲「Shall We Dance」とともに、手をとり見つめあう北村さんと明日海さんの姿がなんとも美しい映像です。
続いて北村さんと明日海さんがゴージャスな衣裳をまとって登場。北村さんが壇に上がろうとする明日海さんをさりげなくエスコートすると、にっこりと微笑み返す明日海さん。早くも「王様とアンナ」そのままのおふたりでした。
ミュージカルには初挑戦となりますが、製作陣からの熱烈なオファーを受けて出演となった北村さん。「この作品の大きさもありますし、ぶつかれるだけぶつかって、人生を変える作品になるくらいやろうと本気で思っています」と気合十分。「歌のトレーニングのため、1人でカラオケボックスに行き譜面を手にマイクなしで歌っている」という努力も明かしました。
明日海さんも「クラシカルで、ミュージカルファンなら誰もが知っている作品。そういうものこそ、技術だったり、演じる人の持っている魅力が問われる。こんな大役が私に務まるんだろうかと不安でしたが、演出の小林香さんが新しいものを作ってくださると。さらには王様をなんと北村さんが演じられるということで、新しいケミストリー、新しい『王様と私』がうまれるんじゃないかとワクワクしています」と話しました。
会見には演出・脚本・作詞を一手に担う小林香さんも出席。
「東宝に脈々と受け継がれる名作として、いかにこの作品が大きなものかをひしひしと感じていた。今回演出を担当することになって、喜び以上に大きな使命、責任感を大きく感じました。プレッシャーがありましたが、今日このおふたりと目と目をあわせてお話したら、もりもりと勇気がわいてきた」と話します。実際に現地のタイを訪れ、王様のモデルである実在の人物、ラーマ4世の足跡をたどるなど取材を重ねたそう。「タイのみなさんの信仰心の篤さ、王室への敬愛の念、そして親切な心などを肌で感じた」といいます。
今回は翻訳・訳詞も手掛けますが、「原作を変えることはできないが、新しいフィルターを通すことで新しい訳し方ができるはず。約70年前の作品だが、今も昔も、人間は変わらない。この作品の古さよりも、輝き続ける理由に改めて気づかされた。地球のあちら側とこちら側を歩いてきたような全く違う種類、全く正反対のふたりが、理解をしあい、愛がうまれる。この大きな美しいテーマを伝えるのに、これほどふさわしい時代もない。世界のあちこちで分断があり、格差と憎悪がひろがっている今だからこそ、この作品を上演する意義はとても大きい」と話しました。
マスターピースを今の時代に上演することは、難しいからこそやりがいも大きい。その挑戦は、王様の髪型にも現れています。今までの公演ではスキンヘッドでしたが、今回は長髪。
「賛否両論だと思いますが、新しい挑戦をしたいという思いがこもっている」(北村さん)。髪型についてだけでも、4、5回の打ち合わせを重ねたといいます。「ひとつひとつのプロセスについて、こうして主演と何度も話し合えることが幸せ」と小林さんも手ごたえを感じているようです。
「息子を連れて遠い国へやってくることを決めたアンナは、勇気と行動力がある女性。誇り高い生き方は、今の時代にも共感されるはず」と明日海さんがいえば、「この50年だけでもものすごい勢いで価値観が変わってきている。演者のとらえ方も、お客様の受け止め方も違うはず。だからこそ、新しいものにチャレンジしていく意義があると思う」と北村さん。
キャストと演出の熱いぶつかり合いでどのような化学反応が生まれるのか。新しい時代の『王様と私』が今から楽しみです。
取材・文/塩塚 夢(産経新聞社)
撮影/吉原朱美
Stage Information
ミュージカル『王様と私』
音楽:リチャード・ロジャース
脚本・歌詞:オスカー・ハマースタインⅡ
翻訳・訳詞・演出:小林 香
振付:エミリー・モルトビー
出演:王様/北村一輝 アンナ/明日海りお
タプティム/朝月希和
ルンタ/竹内將人
チャン王妃/木村花代
ラムゼイ卿/中河内雅貴
オルトン船長/今 拓哉
クララホム首相/小西遼生 ほか
【東京公演】日生劇場
2024年4月9日(火)~4月30日(火)
【大阪公演】梅田芸術劇場 メインホール
2024年5月4日(土)~5月8日(水)