韓国演劇、ミュージカルに興味を抱いて早20年!?の演劇ライター上野紀子が私感たっぷりの情報コラムを発信。Part4はソウル・大学路(テハンノ)で9月24日から始まった公演観光フェスティバル『ウェルカム大学路』、その広報として8月27日に開催されたイベント『東京で韓国ミュージカルを楽しもう!』について、大ヒットドラマ「愛の不時着」にも出演した俳優キム・ヨンミンさんがゲストで登場したトークショーの模様を中心にお伝えします。
前回のコラムに続き、まずは『ウェルカム大学路』についてのおさらいです。これは“アジアのブロードウェイ”と呼ばれるソウルの演劇街・大学路で2017年にスタートし、今年で6回目となる韓国観光公社主催の公演観光フェスティバル。日本の演劇&ミュージカルファンの皆さんにもぜひ大学路を中心に、韓国の舞台芸術を楽しんでいただきたい!との趣旨で、数年前にも東京で今回のような広報イベントが行われていたのですが、コロナ禍によって本格イベントはしばし中断。今回2年半ぶりに韓国の俳優さんたちの来日が叶い、人気ミュージカルショーケース&トークショーが実現したのです。イベントは昼と夜の2部制で行われ、筆者&マチ★ソワ取材陣は昼の部に参加して来ました。
「アンニョンハセヨ~!」と元気よくステージに現れたのは、筆者の“韓国の妹”キム・テイ。イベント前日の記者懇談会に続いて、今回もMCで大活躍です。
司会・通訳/キム・テイさん
「韓国に行きたい気持ちを込めて、拍手をお願いします~!」
盛り上げ上手のテイちゃんの合図で始まったのは、ショーケースの一作目、ノンバーバル(言語に頼らない)作品の『JUMP』です。いや~懐かしいっ。筆者も何度も観た舞台で、来日公演もありましたよね。調べたら初演が2005年!? キャストの皆さん、あいかわらずキレキレの動きでマーシャルアーツやアクロバットを披露しながら、笑いを誘うパフォーマンスを披露してくださいました。
『JUMP』パフォーマンス
あらためてテイちゃんが自己紹介をした後に、韓国観光公社・東京支社長の鄭 辰洙(ジョン・ジンス)さんがご挨拶。実はジョン支社長、この『ウェルカム大学路』を作った人、“生みの親”でもあるのです。イベント当日の時点では韓国入国のノービザ措置が8月末までだったので、ジョン支社長が「なんとか延長してもらうよう、韓国政府に進言している」といったお話をされていましたが、めでたくその通りになって、今は10月末までノービザ入国が可能になりましたね。
韓国観光公社 日本地域センター長 兼 東京支社長/鄭 辰洙さん
続いて2作目は『オンリー・ユー』。慶尚道に暮らす平凡な夫婦の、37年の人生を綴った作品。親子で、夫婦で観るのにピッタリの家族愛の物語ですね。
「韓国でご覧になった方、いらっしゃいますか~?」というテイちゃんの言葉に、さすが、客席から多数の挙手が。筆者もサッとすかさず手を上げました♪
『オンリー・ユー』パフォーマンス
『キム・キムジョンウク探し』パフォーマンス
3作目は、これまた長寿作品の『キム・ジョンウク探し』。日本版も上演されていますので、ご存知の方が多かったですね。こちらの初演は2006年で、筆者が本作を一番最初に観たのもこの年、オ・マンソク&オ・ナラという黄金ペアの公演でした。二人とも今やドラマで大活躍の人気者ですよね~。オ・マンソクさんは今も大学路の舞台(現在も演劇『トゥルー・ウエスト』出演中、大学路TOM2館にて11月13日まで)に立っているけれど、オ・ナラさんは久しく舞台から遠ざかってしまったような。とっても可愛らしい、本当に鈴のように響く美声の持ち主で……ってああ~また脱線、イベントに戻りますっ。
テイちゃんが「大ヒットドラマ『愛の不時着』も、今流行っている『オ・ヨンウ弁護士は天才肌』もミュージカルになるそうですよ~」とホットな情報をお伝えしたところで、いよいよお待ちかねのあの人が登場!
テイ 「皆さん、お待たせしました~! 韓国でも日本でも愛された『愛の不時着』、出演俳優の方が実際に日本にいらしてくださったのは今回が初めてかもしれません! 大学路で多くの作品に出演されたので、私にとっては大学路を代表する俳優というイメージですが、皆さんにとってはドラマ、映画での活躍のほうが印象に残っているかもしれませんね。それではお呼びしたいと思います。キム・ヨンミンさんです~!」
前日の記者懇談会と同じように、笑顔満面でヨンミンさん、登場です!
ヨンミン 「こうして日本に来て、韓国ミュージカルのファンの皆さんにお会いすることが出来て嬉しいです。私は大学路で長く活動していて、そして『愛の不時着』では“耳野郎”として(笑)皆さんから愛をいただいている俳優、キム・ヨンミンです」
大拍手に迎えられたヨンミンさん、まずは皆さんへの30秒間のフォトタイムに突入です。指ハートから両手を頭に乗せてサランヘヨ(愛してます)のポーズ、はたまたほっぺたハート!?(両頬に手を添えるポーズ、正式名称は何!?)まで、サービス精神旺盛なヨンミンさん~。
「ヨンミンさんといえば、『愛の不時着』とか『夫婦の世界』とか~」とテイちゃんが出演作品を紹介する途中で、客席から「『私のおじさん』も!」とナイスなツッコミが。そうそう、あの素晴らしいドラマを抜かしちゃいけませんよね。「ありがとうございます、とってもいいです、こういう反応~!」とテイちゃんもしっかり拾ってオイシくつなげます。声出しは控えることになっていても、咄嗟に出てしまうのがファン心理。「唾が出ないように、これは役者の技術ですけどウィスパー、囁き声で皆さんご一緒に、“サランヘヨ~”」と全員の思いを救うテイちゃん、さすがの進行~。
テイ 「ヨンミンさんにとって、大学路はどんな街ですか?」
ヨンミン 「ある演出家の作品に出演したら、それを別の演出家が観て、その演出家の作品に出演したら、また別の演出家がそれを観て…というようにして、いろんな作品、演出家に出会うことが出来ました。大学路というところは自分にとって、多様性のある街ですね。また僕がデビューした頃に比べると、劇場の数がものすごく増えました。そんなところを見ても、大学路はエネルギーがあふれる街とも言えますね」
テイ 「大学路での、ヨンミンさんの思い出の場所は?」
ヨンミン 「やっぱりデビューした場所、アルコ芸術劇場と言わないわけにはいかないですよね。『ウェルカム大学路』のメインステージがあるマロニエ公園の前にある劇場で、皆さんにもぜひ来ていただきたい場所です」
テイ 「なんと10月30日に、大学路で初めてのファンミーティングをされるそうですね! しかも皆さんと一緒に観劇をされるとか!?」
ヨンミン 「はい~。韓国まで来てくださった皆さんに感謝の気持ちを込めて、『オンリー・ユー』という作品を一緒に観たいと思います」
お二人の後方スクリーンに『ウェルカム大学路』へ推薦コメントを寄せた人気俳優さんたちの画像が映し出されると、ヨンミンさんが「映画『パラサイト』のパク・ソダムさんもいますね~」と豪華な俳優陣をピックアップして紹介。「おっ、『愛の不時着』のキム・ヨンミンもいますね~」とサラッと自分もアピールして笑いを誘います。いきなりスクリーンに、先ほどの“ほっぺたハート”(筆者が勝手に命名)ポーズのヨンミンさんが映し出されて…。
テイ 「ヨンミンさん、大学路に行けばこのポーズをしていただけるんですか?」
ヨンミン 「もちろんしますよ!」(即答に大拍手~!)
「ちなみに、今してくださっても大丈夫ですけど~」というテイちゃんのグッジョブな誘いに、すぐさまやってくれる気のいいヨンミンさんなのでした。
会場の皆さんからもたくさんの質問が寄せられて、その中でもひときわ盛り上がったのがコチラ。
テイ 「“ヨンミンさん、大好きです。日本で私が一番ヨンミン様のことを好きだと思いますが、ほかにもたくさんのファンが日本にいます。ご存知でしたか?”」(爆笑&大拍手~)
ヨンミン 「はい、埼玉県からファンレターをくださった方がいらして、お返事は出来なかったんですけど、この場を借りて感謝の気持ちをお伝えしたいと思います」
ヨンミンさんのこの言葉をテイちゃんが通訳している時に…。
テイ 「今、“私、私!”と言っている方が~。埼玉の? あ、違います? あ~そうですか、一番好きというこの質問をくださった方、でも埼玉ではないと。(爆笑~)あ、神奈川から。ヨンミンさん、埼玉だけじゃないですよ、神奈川からも2回も送ってくださいました!」
テイちゃんとお客様とのやりとりに爆笑連発! (あとでテイに聞いたところ、埼玉からお手紙を送られた方は夜の部にいらしていたそうです。よかった~)そして「この会場で“いや、私が一番!”と思っている方もいらっしゃるかと。でも大丈夫です。皆さん一人一人が一番ですから~」と締めくくりも上手いテイちゃんでした。
そしてトークショーも終わりに近づき、ここでヨンミンさんから皆さんにプレゼントが!
ヨン 「皆さんのお許しがあれば、心を込めた歌をアカペラで歌いたいと思います」
もちろん歓迎の大拍手! とてもソフトな温かみのある声で、『愛の不時着』の挿入歌、IUの『マウムル トゥリョヨ(心を差し上げます)』を歌ってくださいました。そして「必ず韓国で会いましょう~!」の言葉を残して爽やかに退場。これは10月30日、何としても大学路に行かねば!と心に決めた方がいらしたのではないでしょうか。
トークショーが終わり、皆さんが充足感に浸っているところに紹介されたのが、オペレッタ形式のミュージカル『ファリネッリ』とヴァイオリンの生演奏によるロッククラシック『パガニーニ』の2作品です。
ミュージカル『ファリネッリ』パフォーマンス
ロッククラシック『パガニーニ』パフォーマンス
空気をガラッと変えた衝撃の歌唱&生演奏に観客の皆さんが強烈に引きつけられていくのが分かりました。韓国の俳優さんの抜群の歌唱力はもはやデフォなんですけど、その大前提をもってしてもこの歌声はすごかった! そしてヴァイオリンを演奏しながら演技するという超絶技巧の俳優さんを惚れ惚れしながら見てみると、あら! この方は加藤和樹さんからよくお話を伺っている、加藤さんの親友のKoNさんではないですか~!
KoNさん
思わぬタイミングでご本人を生で観ることが出来て、とっても得した気分♪の筆者&マチ★ソワ取材陣でした。でも短いショーケースじゃなく、やっぱり現地で本公演をじっくり鑑賞せねば!と思いましたね。
以上、駆け足イベントレポートでございました~。気ままコラムはまたいつか、不定期に更新します。アンニョン~♪
取材・文/上野紀子
撮影/吉原朱美
上野紀子
演劇ライター。桐朋学園芸術短大演劇科、劇団文学座附属演劇研究所卒。演劇誌、演劇ウェブサイト、公演プログラム等で執筆。平成20年度文化庁新進芸術家海外研修制度で一年間ソウルに滞在。翻訳戯曲に『狂った劇』(チェ・チオン作)、『椅子は悪くない』(ソン・ウッキョン作)。趣味は大人から始めてまったく上達しないフィギュアスケート。