【#34】明るい救いの歌「Henry Ford」（『ラグタイム』）｜東啓介と聴活♪

『ラグタイム』も東京と大阪が終わり、残すは愛知公演だけとなりました。日本で生活しているとあまり意識することがない人種差別の問題やアメリカの過去の話を、3時間の公演で皆さんがどう受け取ってくださるか、開幕前は不安もありました。でも、幕が開けたら、お客さまの拍手やSNSの反応、お手紙などで、すごくいろいろなことを受け止めてもらえていると分かりました。ファンの方から「最初は行くかどうか迷っていたけど、行って良かった」というお声をいただいたりして、そんな皆さんの声に日々、力をもらっているし、成長させてもらっています。

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『ラグタイム』でぼくが演じる「ヤンガーブラザー」は、1幕と2幕の変化が大きい役です。稽古中はつながって見えるかが不安で、（演出の）藤田（俊太郎）さんから「ちゃんと見えるから大丈夫だよ」と言ってもらって、ようやく思い切ってやってみようと思えました。とても苦労した分、「ヤンガーブラザーの成長が見られて素敵でした」というお声もたくさんいただけて、うれしいです。

難しいといえば、オープニングのあの長いナンバーも、めちゃめちゃ時間をかけてお稽古したんです。作って壊して、作って壊して…をお稽古最終日まで続けて、キャストもどれが最終形だったか分からなくなるくらい（笑）。皆さんから誉めていただけてうれしいですが、我儘を言うなら、一度客席から見てみたいなぁ…（笑）。

さて、「聴活」ということで、今回も1曲を選ばないといけないんですが、自分の歌じゃないのをあえて選びたいなと思って、すごく悩みました。コールハウス（井上芳雄さん）の最後の歌「Make Them Hear You」もすごく名曲で迷ったんですけど、今回はあえて「Henry Ford」を選んでみました。

写真提供／東宝演劇部

畠中洋さんが演じるヘンリー・フォード、本当にチャーミングですよね！コミカルな歌の中に、当時の車の進化を表すメッセージ性があって、音楽もキャッチーで楽しい。全体的にしんどいことが多いストーリーなので、あのシーンには救われます。他にも「Atlantic City」や「Buffalo Nickel Photoplay,Inc.」など明るい曲がちりばめられているからこそ、物語が際立つんだなと思います。

そんな明るい曲たちの中でも、「Henry Ford」はエイマン・フォーリーさん振付のダンスもすごく素敵で、人が車のパーツになってみたり、遊園地のアトラクションのように華やかに踊ってみたり、本当にかわいいなと思います。時代背景を説明する、物語とは関係ない歌に見えて、彼が作ったT型フォードをコールハウスが買うことによって事件が起きるわけですから、実は本編にも影響しているんですよね。

芳雄さん、舘形（比呂一）さん、土井ケイトさん、綺咲愛里さん、遥海さん…と初めましての人が多いんですが、今回のカンパニーはすごく仲が良くて、皆が同志です。年齢も幅広くてバランスがいいんですよね。またこのメンバーで一緒に作品を作りたいですが、（石丸）幹二さん、芳雄さん、とうこさん（安蘭けいさん）がそろうなんて奇跡的な確率なので、難しいかも…。でもまだ、愛知公演があります。見ておいた方がいいですよ！（笑）

写真提供／東宝演劇部

重たい話ですけど、「Henry Ford」のようなハッピーな音楽もたくさんあるし、「ふらっと入ってみたら、すごい大きなものをもらっちゃった」と思える作品だと思うので、気負わず来てほしいです。今の時代の日本に生きていても、差別的なことや、それこそSNSでの他者からの攻撃など、争いとは無縁でいられない。そういう意味でも、感じることや考えさせられること、今の自分たちに伝わるメッセージがたくさんあります。

今回、藤田さんを始め、スタッフとキャストが一から作り上げた日本初演に携われたのは本当に誇らしいことです。素敵な先輩たちの背中を見て、もっともっとがんばりたいと思うし、もっと大きくなりたいな、もっといろいろな歌い方を覚えたいな、と学ぶことばかりの毎日です。

聞き手／道丸摩耶（産経新聞社）

今月の聴活SONGS♪

ミュージカル『ラグタイム』舞台映像版PV｜TohoChannel

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