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【ゲネプロレポート】音楽劇『ダ・ポンテ ~モーツァルトの影に隠れたもう一人の天才~』 ▷“自由”を求めるふたつの魂

詩人ダ・ポンテの人生を描いた音楽劇『ダ・ポンテ ~モーツァルトの影に隠れたもう一人の天才~』が6月21日(水)、東京・北千住のシアター1010で開幕。20日(火)に行われたゲネプロの様子をレポートする。

モーツァルト作曲のオペラ『フィガロの結婚』『ドン・ジョバンニ』はあまりにも有名だ。だが、その台本を書いた人物の名はあまりにも知られていない。

ロレンツォ・ダ・ポンテ。ヴェネチア出身の詩人だ。詩人といえば聞こえはいいが、その実は女好きのペテン師。

ダ・ポンテ ~モーツァルトの影に隠れたもう一人の天才~
提供:東宝演劇部

物語の幕開けは、1826年のニューヨーク。年老いたダ・ポンテがシルクハット姿で登場する。満天の星空のもと、ダ・ポンテ演じる海宝直人がオープニングナンバー《この静かな夜に》を歌いだす。ふわっとした第一声。やがて歌声は翼を持ち、低音高音と自由自在に羽ばたき始める。
コミカルなシーンがしばしあり、時間は一気に逆戻りし45年前へ。憎めない好々爺といった風体だった老ダ・ポンテは一転、まるで彫刻のような美青年となって登場する。《思い出して、アンジョレッタ》を歌いながら女性を手玉に取るシーンでは、海宝ポンテの爆発するような色気に、思わずくらくらしてしまう。

ロレンツォ・ダ・ポンテ役-海宝直人
ロレンツォ・ダ・ポンテ役/海宝直人 提供:東宝演劇部

海宝の圧巻の歌唱はまだまだ続く。故郷ヴェネチアを追い出されたダ・ポンテが言葉と自身の魅力を武器にのし上がっていく様子をみせるナンバー《言葉の媚薬》は、エキゾチックな旋律にのせて野心を歌い上げる高揚感あふれる場面となる。ぎらぎら、こってり。だが、終始エレガント。それが海宝ポンテだ。
 
一方、ダ・ポンテがウィーンで運命の出会いを果たす天才音楽家モーツァルト(平間壮一)は、どこまでも無邪気、軽やか。平間モーツァルトの最初の楽曲《始めよう、本当の人生を》では「アテがない なんて自由 ツテがない きっと出会える」とはつらつと歌い上げる。

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト役-平間壮一
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト/平間壮一 提供:東宝演劇部

酒場でふたりが出会い、『フィガロの結婚』の最初の一曲を創り上げる《共同作業は地獄の始まり》は、ダ・ポンテの言葉とモーツァルトの音楽が響きあう。きっと実際のふたりもこのように数々の名曲を生み出していったのだろう…そう思わせるような青春のみずみずしさにあふれている。

『フィガロの結婚』は大成功。時代の寵児としてもてはやされるダ・ポンテとモーツァルト。1789年にはフランス革命が起こり、時代は“自由”を求めうねり始める。だが、ふたりの渾身の次作『ドン・ジョバンニ』は宮廷から酷評を受けたことをきっかけに、ダ・ポンテとモーツァルトが奏でるメロディに狂いが生まれ始める―。

左から:フェラレーゼ役-井上小百合、ダ・ポンテ役-海宝直人
(左から)フェラレーゼ役/井上小百合、ダ・ポンテ役/海宝直人 提供:東宝演劇部

自分の出自から自由になろうともがくダ・ポンテは、常に「誰かからの拍手」を求めている。一方、モーツァルトは内なる自由を追い求め、ついには「誰からの拍手もいらない、僕が拍手するんだ。僕が愛する者たちに」という境地にまでたどり着く。
ふたりの天才の対比は、海宝と平間というふたつの才能が演じることで、なおさらに哀しく、鮮烈だ。
 
本作はオリジナルの音楽劇。TVドラマ『凪のお暇』などで知られる人気脚本家・大島里美が紡ぎだす言葉は優しく美しい。音楽の笠松泰洋は、その珠玉の言葉たちを明るく平易なメロディに昇華させた。観劇後に改めて聴くモーツァルトは、これまでとはまた変わって響くだろう。


提供:東宝演劇部

取材・文/塩塚 夢(産経新聞社)

Stage Information

音楽劇『ダ・ポンテ ~モーツァルトの影に隠れたもう一人の天才~』

作:大島里美
音楽:笠松泰洋
演出:青木 豪
主催:キョードーファクトリー
足立区シアター1010 指定管理者(プレビュー公演のみ)
企画製作:東宝

出演:海宝直人、平間壮一、相葉裕樹、井上小百合、田村芽実、青野紗穂、八十田勇一 ほか

【プレビュー公演】
2023年6月21日(水)~25日(日) シアター1010

【愛知公演】
2023年6月30日(金)・7月1日(土) 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール

【東京公演】
2023年7月9日(日)~16日(日) 東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)

【大阪公演】
2023年7月20日(木)~24日(月) 新歌舞伎座

公演公式サイト

Story

1826年ニューヨーク。年老いたロレンツォ・ダ・ポンテ(海宝直人)が回想録を出したことがきっかけで、若かりし頃を思い出すところから物語は始まる。

1781年ウィーン。女好きで詐欺師のダ・ポンテは、ある事件を起こし、故郷ヴェネツィアを追われ、その才覚と手練手管でウィーンの宮廷劇場詩人の座までのぼり詰める。しかし、宮廷作曲家アントニオ・サリエリ(相葉裕樹)に言われるがままに書いたオペラの処女作を酷評され、行き場を失っていた。そんなダ・ポンテの前に現れた、作曲家ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(平間壮一)。彼もまたあふれる才能を持て余していた。二人は意気投合し、革新的なオペラを作ることを決意する――。

※公式HPより引用

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