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COLUMN

【#21】純粋な想いをぶつけ合う「世界が終わる夜のように」(ミス・サイゴン)|東啓介と聴活♪

ミュージカル「ジャージー・ボーイズ」のお稽古が続いています。一般的なグランドミュージカルとはまた違う歌い方が求められて、歌稽古では楽しみながらも苦戦しています(笑)。そして、8日からはゲームクリエイターの舞台裏を描いた木ドラ24「チェイサーゲーム」(テレビ東京)が始まりました。ぼくは天才クリエイターの魚川役。ゲームってこういう風に作られているんだとおもしろくて、原作の漫画も一気に読んでしまいました。ゲームが好きな方、夢を追いかけている方には刺さると思うので、魚川がどういう絡み方をしてくるかも含めて、今後の展開を楽しみにしていてください。

さて、今回の「聴活」は帝国劇場で8月31日まで公演していた「ミス・サイゴン」の曲です。「ミス・サイゴン」を初めて見たのは、ダイヤモンドユカイさんがエンジニアを演じた2016年。名曲ぞろいで感動したものの、その時は物語や登場人物の背景まではっきり理解できていなくて。それが今回は、主要人物だけじゃなく他の人物にも目が行き、作品が持っている力をさらに深く知ることができました。ベトナム戦争というぼくが知らない時代の物語の世界観にもすんなりと入れました。

2階席から見たこともあって、全体を俯瞰して見られたし、聞こえ方も1階席とは違って、ミュージカル好きな皆さんがいろいろな座席で見たいという気持ちが分かりました。同時に、3階席から見ても目で追いやすい体の動きや明瞭で自然な歌など、舞台ならではの表現をもっと学んでいかないとと、一表現者としてもそんなことを感じました。

ダブルキャストやトリプルキャストのさまざまな組み合わせが楽しめるのもグランドミュージカルならでは。今回は初演から演じ続けている市村正親さんのエンジニアを見させていただきました。30年も同じ役を演じるってすごいことですよね。エンジニアの生い立ちや孤独感、差別されてきたからこそ希望にすがる思いが理解できて、でもそれを野心で吹き飛ばしている格好いい男なんだと思いました。見る人によってどこに注目するかは変わるし、時を経ると感じ方も変わりますね。

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(中央)エンジニア役:市村正親(写真提供/東宝演劇部)

「聴活」ということで、特に歌に注目しながら見たのですが、聞けば口ずさめる曲ばかりで、どの曲を選ぼうか本当に悩みました。でも、やはり代表曲のひとつ、「世界が終わる夜のように」で。ベトナム人のキムとアメリカ兵のクリスが手作りの結婚式を挙げた後に歌うデュエットナンバー、ぼくが見たのは、屋比久知奈さんのキムと海宝直人さんのクリスの回でした。

驚いたのは、2人がキスしながら歌うところ。その合間でキスするんだ、とか、歌詞が間に合わなくならないかとか、つい自分に置き換えて違う目線で見ちゃいました。この歌はいろいろな人がコンサートなどでも歌っていますが、ロミオとジュリエットみたいな、愛し合う2人が結ばれる本当にきれいな歌じゃないですか。それが物語の中で歌われると、あんなにも情熱的で、お互いが想いの丈をぶつけ合うんですね。戦時中だからこそ希望を持ちたい2人の気持ちのぶつかり合いは、本当に純粋で美しいです。だからこそ、一緒に生きようと希望を取り戻した2人が戦争によって負のループにはまり、幸せが打ち崩されていくさまはやりきれなくて…。

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※写真は、キム役:昆夏美、クリス役:海宝直人(写真提供/東宝演劇部)

しかもこの歌は、前のシーンとの時間のジャンプが大きいんですよ。さっき初めて会って、クリスは「この子と寝てよいのかな?」と悩んでいたのに、この歌では「この子に決めた!」と気持ちが固まっている。それが歌の力でもあるんですが、演じる側は描かれていない「間」を感じさせないといけないから大変ですよね。

コンサートとミュージカルでは、そうした「芝居」の部分だけでなく、相手役の有無やコーラス、舞台セットや照明、音楽も全然違います。僕はオーディションで「ミス・サイゴン」の歌を歌わせていただいたこともあるんですが、ひとりで歌うのと、デュエットやコーラスの中で歌うのとでは、もらえる力が変わります。舞台の力はすごいもので、皆でやるとパワーは何倍にもなって、より自分がその世界の中で生きられるんですよね。「世界が終わる夜のように」や「ブイドイ」を、いつか相手役や大合唱の中で歌ってみたいなと思いました。

これまで「聴活」で僕は、「この曲はこういう歌です」と好き勝手にお話しさせていただいてきましたけど、実際に演じたら全然違う感情を抱くかもしれない(笑)。その時はまた、僕が新たに感じた感情を皆に聞いてもらいたいです!

聞き手/道丸摩耶(産経新聞)

今月の聴活♪SONG

『Miss Saigon』♪世界が終わる夜のように/知念里奈&上野哲也

2014年公演製作発表記者会見より


東啓介(Higashi_Keisuke)

1995年7月14日生まれ、東京都出。2013年デビュー。『5DAYS 辺境のロミオとジュリエット』『命売ります』『Color of Life』などの作品で主演を務める。近年はミュージカル界の新星として頭角を現している。2020年11月にはファーストソロコンサートも開催。 最近ではミュージカル『イン・ザ・ハイツ』(神奈川・大阪・名古屋・東京公演)やミュージカル『マタ・ハリ』に出演。映像作品でも、NTV「ウチの娘は、彼氏が出来ない‼︎」やTBS火曜ドラマ「ファイトソング」などに出演し話題に。 今後は2022年10月に開幕するミュージカル『ジャージー・ボーイズ』にボブ・ゴーディオ役で出演する。
TX木ドラ24「チェイサーゲーム」魚川貴央役で出演中(テレビ東京・毎週木曜深夜0:30)

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Stage Information

ミュージカル「ミス・サイゴン」

大阪公演:2022年9月9日(金)〜19日(月・祝)梅田芸術劇場メインホール
愛知公演:2022年9月23日(金)〜26日(月)愛知県芸術劇場
長野公演:2022年9月30日(金)〜10月2日(日)まつもと市民芸術館
北海道公演:2022年10月7日(金)〜10日(月)札幌文化芸術劇場 hitaru
富山公演:2022年10月15日(土)〜17日(月)オーバード・ホール
福岡公演:2022年10月21日(金)〜31日(月)博多座
静岡公演:2022年11月4日(金)〜6日(日)アクトシティ浜松 大ホール
埼玉公演:2022年11月11日(金)〜13日(日)ウェスタ川越 大ホール

公演公式サイトはこちら

Stage Information

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ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』

脚本:マーシャル・ブリックマン&リック・エリス
音楽:ボブ・ゴーディオ
詞:ボブ・クルー
演出:藤田俊太郎

出演:中川晃教、花村想太、藤岡正明、尾上右近、東 啓介、有澤樟太郎、spi、大山真志 ほか

会場:日生劇場(東京都)
製作:東宝/WOWOW

公演公式サイトはこちら

【Story】

はじまりはニュージャージー州の貧しい片田舎。
“天使の歌声”を持つフランキーは、成功を夢見る兄貴分のトミーと ニックのバンドグループ に 迎え入れられる。 早速3人での音楽活動をスタートさせるが、フランキーの歌声をもってしてもグループには未だ何かが欠けていた。
鳴かず飛ばずの日々が続く中、作曲の才能溢れるボブが加入する。フランキーの歌声に魅了されたボブは、その声のために曲を書きたいと思うのだった。しかし金もコネもない彼らを待っていたのは 過酷な下積み生活。そんな中でも彼らは自分たちの音楽を磨き、それぞれの才能を開花させていく。そしてついにボブの楽曲と4人のハーモニーが大物プロデューサーの目に留まった。彼らは「ザ・フォー・シーズンズ」としてレコード会社と契約し、《Sherry》をはじめとする全米ナンバー1の楽曲を次々と生み出していく。ヒット曲につぐヒット曲、長期にわたるツアーで、家族を顧みずに酒と遊びを繰り返す日々が続く。富も名声も手にしたはずの4人だったが、輝かしい活躍の裏では、莫大な借金やグループ内の確執、家族の不仲など、様々な問題が勃発し、彼らの固い絆を蝕んでいった。それらはやがて取り返しのつかない大きな軋轢となり、グループを引き裂くのだった。
成功と挫折。あまりに劇的な春夏秋冬を駆け抜けていく4人がその先で見たものとは―。

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