『マタ・ハリ』『ダンス オブ ヴァンパイア』などのミュージカルから、ドラマまで幅広く活躍する俳優・東啓介さんが、自身の好きなミュージカルソングを熱く語る新連載「東啓介と聴活。ミュージカルソングへの誘い」。これから毎月1回、東さんの「愛」を熱く語っていただきます。記念すべき第1回に東さんが選んだのは、『レミゼ』の愛称でミュージカルファンからの人気も高い『レ・ミゼラブル』の劇中歌「カフェ・ソング (Empty Chairs at Empty Table)」。ミュージカル俳優なら一度は歌ってみたいあこがれの曲に、東さんは何を感じたのか。そして、この曲で知った自らの成長とは?作品への思いを、たっぷりとお聴きください。
ミュージカル俳優を目指してボイストレーニングに通い始めたとき、課題曲として最初に示されたのが、「カフェ・ソング」でした。ミュージカル『レ・ミゼラブル』に出てくる大好きな曲ですが、音の幅が大きく、高いキーも必要なので初めて歌ったときは声が出なくて苦労した苦い思い出の曲でもあります。マルシアさんの30周年記念ライブ(2019年)にゲスト出演させていただいたときにも歌わせていただきました。
今でこそカラオケにもミュージカルの曲がたくさん入っていますが、当時はそんなことはなかったので、音源が入っている携帯の前にマイクを置き、大きな音で曲を流しながら練習をしました。今でも時々、この方法で練習しています。
さて、「カフェ・ソング」は民衆が蜂起した暴動で志を同じくした仲間を失った青年マリウスが、仲間のことを思いながら歌う曲です。仲間といたら世界を変えられるかもしれないと信じていたのに、すべてをなくし、ひとりでは何もできないと思い知る。今の時代にも起こる、誰にでも通じる感情だと思います。
ただ、最初に聞いたときは、歌詞の内容よりも曲の美しさの方が印象的でした。終盤に向けて盛り上がっていく曲調には、感情を揺さぶられます。仮出獄したジャン・バルジャンに出会った司教が、彼を教会に招き入れたときに歌ったメロディと同じだったことも気になりました。何が歌われているのか理解しようと紙に歌詞を書き起こし、部屋を真っ暗にしたり、歌詞と歌詞の間を想像して埋めていったりして、感情を曲にのせていきました。
そもそも、『レ・ミゼラブル』は高校生の頃に初めて見て衝撃を受けた作品。いつかは立ってみたいあこがれの舞台です。実は、オーディションを受けたこともあるんです。役者は声質や年齢、体形などの如何ともしがたい特徴によってできる役が変わってしまう宿命を持っていて、自分に合う役とやりたい役が違うこともあります。それでも、何より大事なのは実力をつけること。
初めて歌ったときは出なかった高音が出るようになった今、「カフェ・ソング」は自分の成長を教えてくれる曲になりました。昔の練習映像がiPhoneに残っているんですが、それを見ると「下手くそだなぁ」と思いますからね(笑)。ミュージカルの楽曲は、それだけを取り出して聞いても魅力的ですが、やはり板(舞台)の上で、物語の一部として歌われてこそ完成するもの。練習と研究を重ね、作品の中で、その役として大好きな歌を歌える日が来るといいなと思います。
これから月1回くらいのペースで、ミュージカルの楽曲を語っていきます。ただ、ぼくは明るい歌よりも悲しげな曲の方が好きなので、家でゆっくりしたいときに流れていてほしい曲、暗めの曲の方が多くなるかもしれません。どの作品のどんな曲が出てくるか、楽しみにしていただければうれしいです!
聞き手・道丸摩耶(産経新聞)
撮影・三尾郁恵(産経新聞)
♪今月のミュージカルソング
「カフェ・ソング(Empty Chairs at Empty Table)」|『レ・ミゼラブル』
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東啓介(Keisuke Higashi)
1995年7月14日生まれ、東京都出身。2013年デビュー。舞台『剣乱舞』など気舞台で活躍し、『5DAYS 辺境のロミオとジュリエット』『命売ります』『Color of Life』などの作品で主演を務める。近年はミュージカル界の新星として頭角を現している。2020年11月にはファーストソロコンサートも開催。2021年1月13日ドラマ「ウチの娘は、彼氏が出来ない!!」(日本テレビ:毎週水曜22時)に出演する。