エンターテインメントで笑顔を繋げる!

INTERVIEW

加藤和樹さん▷ 初のコメディ舞台「何も考えずに見て」

米ブロードウェイを代表するコメディ作家、ニール・サイモンの代表作「裸足で散歩」が9月17日から、東京・浜松町の自由劇場で上演されます(13日に有楽町よみうりホールでプレビュー公演)。ニューヨークの古いアパート最上階に引っ越してきた新婚夫婦、ポールとコリーに巻き起こるドタバタに、客席は爆笑に包まれること間違いなし。新婚の弁護士、ポールを演じる加藤和樹さんに、作品の見どころや抱負を聞きました。

――ミュージカル出演が多い加藤さんですが、今回はストレートプレイ、それもコメディです

映像では経験したことがありますが、舞台でコメディをやるのは初めてです。映画を見て、何となくの動きは頭にイメージしましたが、ワンシチュエーションもの(1つの決まった場所、設定で動いていく物語)はあまり経験がないので新鮮です。東京公演の会場となった自由劇場も初めてですし、それも楽しみのひとつです。
でも、ミュージカルから急にストレートプレイに現場が変わると、やっぱりセリフが多いなって思います(笑)。緊張感はミュージカルより大きいですね。今回は特に、決められた動きや相手のきっかけになる動きが多いので、しっかりやらなきゃという意識が強いです。

R_katokazuki_2_AAA0716.jpg

――加藤さんは、まじめな弁護士のポール役。はまり役ですね

確かに、ポールの考え方なんかは僕と似ているところがありますね。妻のコリー(高田夏帆さん)は、新婚生活を始めるに当たり、どうやったらお互いに幸せになり、ポールにも幸せになってもらえるかを第一に考えているけれど、ポールは弁護士として仕事をしっかりこなして生活を安定させることに重きを置いている。そこからすれ違いが生じて喧嘩になってしまうんです。

演出の元吉庸泰さんは、「2人にとって最大の敵は、このアパートだ」とおっしゃっていましたが、恋人同士から夫婦になっていく大事な時間を、このボロいアパートで始めないといけない。そこに、コリーのお母さんのバンクス夫人(戸田恵子さん)と隣人のヴェラスコ(松尾貴史さん)が入ってきて、電話会社の男(本間ひとしさん)も絡んで、ますます問題が複雑になっていきます。

戸田さんも松尾さんも、キャラクターとしてそこにいるだけでおもしろい。今回の共演者は全員初めましてなんですが、稽古が始まる前の本読みで既に、すごいアットホーム感がありました。「ひとつの家族の物語」という感覚があったんです。大ベテランの先輩方の芝居は本当に自由で(笑)、セリフの掛け合い、会話のひとつひとつがおもしろく、我々夫婦はどうそこに立ち向かっていくかが課題です。物語の本線をしっかりたどって、夫婦のあり方を見せていかないといけません。

――さまざまな問題が起きますが、引っ越せば解決するのでは?と突っ込みたくなります

本当にそう思います。なんでここで暮らしていかなきゃいけないのかと(笑)。でも、ポールとしては、生活の基盤をこのNYにおいて、弁護士としてまず何よりも仕事をしてお金を稼いでいく、その先にお互いの幸せがあるという考え方なんです。

ぼくは男だし、仕事をして生きていきたいので、そこは分かります。時代も影響していますよね。当時のアメリカ社会は男性が働いて、女性は家庭に入って幸せを支えていくのが当たり前だったのでしょう。でも、コリーはこの時代でも強いですね(笑)。ちゃんと自分を持っているし、主張も強すぎる(笑)。

タイトルにもなっている「裸足で散歩」ですが、コリーはポールにこれをやってほしいんです。真冬のNYで(笑)。でも、頭でっかちなポールは、「そんなことに何の意味があるの?」と思ってしまう。お互いの価値観を捨てられる関係こそが夫婦だというコリーの考え方が理解できないんです。

――そうやってすれ違っているけれど、お互い大好きなんですよね

そうなんです。ポールは怒っている場面が多いんですけど、それはお互いのこれからのためを思っているから。怒っているだけの人にならないように、愛し合う気持ちをしっかり持ちながら、コリーとお芝居のバランスを合わせていかないといけない難しさを感じます。

ただ、物語の結末は2人で壁を乗り越えて、ちょっとだけ成長して同じ道を歩いていくハッピーエンドなので、客観的に見ると2人がすごくかわいらしく見えるはず。もっとこうすればいいのにって、お客さんもつい、どちらかを応援したくなると思います。福田響志くんの翻訳で、セリフも今っぽい言葉になっていて、よりお客さんに伝わりやすいのではないかと思います。

R_katokazuki_3_AAA0738.jpg

――加藤さんは、恋人から「裸足で散歩」のような難題を求められたらつきあえますか?

理由は聞きますね。なぜそうしなければならないのか、それに何の意味があるのか、と。何でもトライしてみようと思うタイプではあるし、お芝居や仕事に対しても、やってできないことはないなとは思うんですけど、それをした先に何があるのかということは考えます。

ぼくは普段あまり声を荒げることはないですけど、仮にぼくが結婚生活をしてお互いにすれ違うことがあってどうしても理解できないことが起きてしまったときに、こうなるんじゃないかって、ポールには、未来の自分を見ているような感覚はあります(笑)。

でも、この夫婦はポールが文句を言いつつ、コリーが引っかき回すみたいな、そんな関係がお互いにとってのあり方なんじゃないかなと思います。ポールが思い描いている幸せとはちょっと違うかもしれませんが、違うからこそぶつかるし、違うからこそうまくいく部分もあって、この先もずっとこんな感じなんじゃないかな。

――舞台の「ここを楽しんでほしい」というポイントがありましたら教えてください

気軽にみられる作品なので、何も考えずに見に来ていただきたいです。「私はコリーの言っていることもわかるな」、「私はポール」、「ぼくはお母さんの言っていることもわからんでもない」とそれぞれの感情に寄り添うことができる作品だし、最終的には、今の自分は大切な人に自分の想いを伝えられているかを再確認したくなる作品です。見終わったときに、少しでもあたたかい気持ちになっていただければ嬉しいです。

――「マチ★ソワ」では韓国語を勉強する姿も見せてくれましたが、今後の目標をお願いします

ぼくは目標をあまり立てないんですが、とにかく刺激を求めることをやめないようにとは心がけています。我々の仕事は常に、現場で出会う人が変わっていくので、そこでの自分のあり方を見つめながら、自分に何ができるのかということを模索し続けていきたいです。
韓国語もそうですけど、興味があることにはトライしていかないと。それこそコリーのセリフにもありましたけど、何でもトライしてみることはすごく大事だと思っています!

Text/Maya Michimaru(SANKEI SHIMBUN CO,LTD)
Photo/Akemi Yoshihar


加藤和樹(Kato Kazuki)

2005年ミュージカル『テニスの王子様』で脚光を浴び、2006年4月Mini Album『Rough Diamond』でCDデビュー。毎年CDリリースや単独ライブ、全国ライブツアーを実施するなど、音楽活動を精力的に行っている。2009年韓国、台湾、中国でCDデビューを果たす。俳優としてはドラマ・映画・舞台のほか、ミュージカルや声優としても活躍している。2022年2月3月『冬のライオン』、5月6月ミュージカル『るろうに剣心 京都編』に出演。9月10月舞台『裸足で散歩』で主演、2023年1月ミュージカル『キングアーサー』に出演する。
第46回(2020年度)菊田一夫演劇賞受賞。

  • ico_twitter.svg

Stage Information

omote.jpg

舞台「裸足で散歩」

【作】ニール・サイモン
【翻訳】福田響志
【演出】元吉庸泰

【出演】加藤和樹、高田夏帆、本間ひとし、松尾貴史、戸田恵子

【日程 / 会場】
■東京公演
2022年9月13日(火):有楽町よみうりホール ※プレビュー公演
2022年9月17日(土)〜29日(木):自由劇場
■兵庫公演
2022年10月1日(土)・2日(日):兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
■大阪公演
2022年10月5日(水):枚方市総合文化芸術センター 関西医大 大ホール
■神奈川公演
2022年10月8日(土)・9日(日):KAAT神奈川芸術劇場 ホール
■東京多摩公演
2022年10月11日(火):パルテノン多摩 大ホール

公式サイト

舞台「裸足で散歩」テーマ曲「君と僕」PV

RECOMMEND

NEW POST

小林唯のGood Vibes★Talk&Songs
PAGE TOP
error: