さびれた劇場「湘南劇場」に島流しされたお笑い芸人たちが再起をめざして奮闘する姿を描く荒牧慶彦主演の連続ドラマ「あいつが上手(かみて)で 下手(しもて)が僕で」が日本テレビで10月6日(水)から、読売テレビでは10月9日(土)からスタートします。12月には、東京・大阪で舞台も控えている同作。何としてでも落ちぶれた劇場から脱出を図りたい4組8人の若手芸人のうち、お笑いコンビ「エクソダス」の時浦可偉役を演じる荒牧慶彦さん、相方の島世紀役を演じる和田雅成さんに見どころなどを伺いました。(以下、敬称略)
――漫才師役は初めてですか?
荒牧 お互いに経験はあります。でも、まーしー(和田)とコンビを組むのは初めてです。
和田 コンビというか、ペアはあるんですよ。別の作品では、同じ部屋に同居しているという設定でした。
――最初に脚本を読んだときは、どう感じましたか?
荒牧 コンビが4組もいるのに、1組ずつをちゃんとピックアップしていて、メンバーの関係もきちんと構築されていて、凄い物語だと驚きました! それぞれが披露するネタもおもしろいです。
和田 「笑い」をテーマにするというのは、今の世の中にとってめちゃくちゃいいなと思いました。脚本を読ませていただいてとても楽しい気持ちになったので、それをぼくらがドラマで演じることで、見てくださる人にも楽しさが伝わればいいなと思います!
――役作りは難しかったですか?
和田 どう?
荒牧 作ってはいますね。時浦という役どころは、「ローテンションに進めていきたい」という監督の要望もあって、お笑いコンビ「ピース」の又吉(直樹)さんのようなローテンションをイメージしているんです。なので、普段よりは全然テンションを下げていますね。
和田 島という役は、この物語全体にとって、明るくて太陽のような存在です。すべてをポジティブにとらえられる人。共感できる部分は多かったです。イメージとしては、「ティモンディ」の高岸(宏行)さんみたいな感じかな。見ているだけで明るくなれる存在になれたらいいなと思っています。「周りを明るくしたい」と思っているところは、自分と似ていますね。
荒牧 時浦は、そんなに自分に近い役とは思わなかったです。ローテンションですし、言葉遣いもあまりきれいではない設定にしたんです。そこもちょっと違うかな。
和田 時浦は一人称が「僕」なんで、まっきー(荒牧)はそれが、まず…。
荒牧 そうそう、ちょっと大変でした(笑)。普段の一人称は「俺」なんですが、今回、時浦の一人称は「僕」で、「下手が僕で」という作品のタイトルにもなっているんです。そこだけは間違えないようにしようと思っていたのに、自然体で演じちゃうと、「俺」って言っちゃったりして…。
和田 普段は「僕」って言わないもんなー。
荒牧 意外な苦労でした(笑)。
――相方の印象はいかがですか?
荒牧 物語を動かすのが島の役どころなので、それがうまく表現できていてすごいなと思いました。
和田 時浦は最初、「湘南劇場」にローテンションで入ってくるんです。島は一見軽薄に見えますが、心からいろいろなことを楽しんで、人を幸せにしたいと思っているタイプ。だから、時浦を幸せにしたいと思ったんだと思います。
――そんな思いから、島さんは時浦さんを口説くわけですね?
和田 はい!周りから見ると軽薄に見えるけど、島は本気で「相方になってほしい」と時浦を口説くんです。
――本気で口説かれてみて、如何でしたか?
荒牧 時浦は、島にどこか光るセンスを感じたんでしょうね。惹かれるものがあったから、コンビを組むことになったんだと思います。
――「エクソダス」のボケは時浦、ツッコミは島ですが、実際のおふたりも役どころのままですか?
和田 まんまですねー。違和感なかったですね。
荒牧 そうですね。でも、自分はツッコミにまわることもあります。
――撮影中、何かハプニングはありましたか?
和田 ハプニングというハプニングはなかったですね。楽しいエピソードはいっぱいあったんですけど、これは危なかった、というのはなかったなぁ。
荒牧 仲の良いメンバーなので、撮影の待ち時間も皆で会話していましたね。他のコンビの漫才を見るのも楽しかったです。
――おふたりは今回は「相方」ですが、次に演じてみたい役はありますか?
荒牧 バチバチに戦ってみたいです!
和田 対になる役をやってみたいですね。(これまでの役では)隣にいることが本当に多いので。
荒牧 自分と似ている役もやっていて楽しいですが、自分とかけ離れた役をやれることも俳優の醍醐味ですよね。自分が送れない人生を送れるというのが楽しみなので、そういう役もやってみたいです。
――ドラマをご覧になる方にメッセージをお願いします。
荒牧 日ごろの疲れや暗い気持ちを吹き飛ばせる、ひとつの休憩場所じゃないですけど…
荒牧&和田 オアシス!
荒牧 言われた! 俺がずっと言ってるから(笑)!
和田 オアシス、いい言葉だよ!
荒牧 (笑)。オアシスになれるような作品になれればいいですね。長いコロナ禍で、みんな自粛や我慢をがんばっているじゃないですか。そんな時代に、ひとつの箸休めとしてこの番組を楽しんでもらえたらいいなと思っています。
和田 笑いって本当に大切だと思うし、まっきーもたぶんそうだと思うけど、ぼくらがこの職業を志したのは、「みんなを笑顔にしたい」「誰かの幸せな時間をつくりたい」という思いからだと思うんです。そんな思いがつまった作品が、テレビと舞台で楽しめる。番組を見て笑顔になってもらいたいですし、皆さまと一緒に楽しい時間を過ごして、世界を救いたいと思っています!
――ドラマに続き、舞台も上演されます。ドラマの世界が舞台で楽しめるのはおもしろそうです。
荒牧 めちゃくちゃおもしろいと思います。お笑い芸人たちの奮闘劇なんで、テレビをご覧になれなかった人でも絶対に楽しめる舞台になると思います。(新型コロナウイルスの影響で)お客さんが声を出せない状況かもしれないというのがネックですが、客席を大笑いさせたいですね。「笑い声が聞こえたら勝ち!」と思っています。
和田 そうだね。マスクだと笑顔もそんなに分からないけど、心で笑ってもらえたらいいですよね。笑うって大切なことだから。
荒牧 漫才はテンポが命なので、舞台でやるのは緊張するでしょうね。
和田 これがまた、笑いが来なかったときには…
荒牧 (笑)。心がね…
和田 本当に、心がねー(笑)。これ、笑ってはいけないから笑っていないのか、本当に笑っていないのか、やっているときは判断できないから。つらくて、「早く終わらせてくれ!」って思っているかもしれません。
――せっかくのコンビですから、「エクソダス」として「M-1グランプリ」出場を目指すのはいかがでしょうか?
和田 いや、もう、恐ろしい! 俺はね、もうね、もう、絶対無理!!(笑)
荒牧 芸人さんをリスペクトしているので、「M-1」は無理ですね。企画とかならやってみたいなと思いますけど。
和田 確かに企画とかだったらがんばれるかもしれないですけど、「M-1グランプリ」をやるということは、お笑い芸人として戦うということなんで、こんなに難しいことはないです!
荒牧 やるんだったら、舞台で賞レースっぽい感じにしてもらって、お客さんのファン投票をその場でやってもらって、その場で1位を決めるとかだったら、まぁ…。
和田 だったらまぁ…。
荒牧 ですけど、「M-1グランプリ」になると…。
和田 怖いよ!
荒牧 「こいつら、つまんねえじゃん!」で終わっちゃうと傷つくだけなんで(笑)。
和田 傷つくね(笑)。
――でも、舞台では漫才が見られるかもしれないんですね?
荒牧 「エクソダス」ももちろんですけど、他のコンビ「らふちゅーぶ」「ロングリード」「アマゲン」の3組も、「え? 今まで芸人役やったことあるの?」というくらいネタがおもしろいし、掛け合いがうまいんですよ。それぞれ全然違う味の漫才をしているので、そこは見どころです。それが舞台で見られるとなると、めちゃくちゃ楽しいんじゃないかな。もちろんテレビでも「面白い!」と笑ってもらえると信じています。
和田 そうだね。舞台上でも漫才が繰り広げられると思うんですが、飽きないと思います。お客さんにもそれぞれ推している俳優さんがいると思うんですけど、その人たちも他の人も入れ替わり立ち代わりですから、他のコンビも含めて、全部が好きになっていただける舞台になるんじゃないかなと思いますね。
荒牧 そうですね。ぜひ、ドラマも舞台も楽しみにしていただきたいと思います!
聞き手・構成・文/道丸摩耶(産経新聞)
写真/三尾郁恵(産経新聞)