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COLUMN

【#28】別人を歌い分ける「対決」(ジキル&ハイド)|東啓介と聴活♪

まもなく、舞台『二次会のひとたち』が開幕します。なかなか経験できない四人芝居で、とにかく会話がおもしろいコメディです。会話のリズムも現代的で、役名も同じ「啓介」。くすっと笑えて心が温まる作品になっていると思うので、ぜひ劇場に足を運んでください。

稽古の合間を縫って、ミュージカル「ジキル&ハイド」を見てきました。以前、マルシアさんと「罪な遊戯」を一緒に歌ったり、自分のコンサートで「時が来た」を歌ったりしたことはありましたが、舞台を見たのは初めて! そろそろ来るかな?来るかな?と待ち構えていた「時が来た」が1幕の途中で歌われたときには、思わず「キター!」と心の中で興奮してしまいました(笑)。フランク・ワイルドホーンさんの曲はキャッチ―な曲が多いイメージですが、難しい曲もいっぱいあって、中でもすごいと思ったのが、今回の「聴活」に選んだ「対決」です。


ヘンリー・ジキル/エドワード・ハイド:石丸幹二(写真提供:東宝/ホリプロ)

「ジキル&ハイド」は有名な小説「ジキル博士とハイド氏」をもとにした舞台で、医師のジキルと悪人のハイドがひとりの人間の中で入れ替わるのですが、「対決」はまさにこの入れ替わりの曲です。同じ曲の中で交互にジキルになったりハイドになったりする。今回のジキル&ハイド役は石丸幹二さんと柿澤勇人さんがWキャストで演じていらっしゃいますが、ぼくが見たのは幹二さんの回。声だけでなく笑い方も変わって、完全に別人になっていて、さすがでした。最初は「時が来た」を「聴活」に選ぼうかと思っていたのに、この曲で一気に持っていかれて…。欲望に負けてしまったジキルの後悔、もう元には戻れないジキルとハイドの末路が感じられる曲でした。


ヘンリー・ジキル/エドワード・ハイド:柿澤勇人(写真提供:東宝/ホリプロ)

ぼくはミュージカルの曲を歌うとき、こういう心情だろうなと役の気持ちを思いながら歌うことが多いんですが、この曲は一人二役で、しかも一瞬で人格が変わる。感情だけでは持っていけないですよね。ジキルもハイドも確かに幹二さんなのに、髪型やマント、声色を変えて、全く違う人に見せてしまう。どうやって切り替えているんだろう、とすごい気になりました。映像作品なら一瞬で人が変わるのも容易ですが、舞台ではそうはいかない。小道具の出し入れから、表情、動き方まで、全部俳優がやらないといけないのでテクニックが必要だし、感情にのまれてはいけないし、一瞬でも我に返ってしまったら途切れてしまう。「対決」はまさに、作り手が役者の力を信じていないと任せられない歌だと思いました。

ぼくはこれまで、自分の得意なところ、魅力だなと思う音域や声色で勝負してきた部分があって、声のバリエーションはあまり持っていませんでした。『ザ・ビューティフル・ゲーム』ではいつもより低めの、少しドスの聞いた声にチャレンジしたんですけど、まだまだ学んでいる途中なので、いろんな声の使い方を幹二さんに教えてもらいたいです。


(左から)エマ:桜井玲香、ヘンリー・ジキル/エドワード・ハイド:柿澤勇人(写真提供:東宝/ホリプロ)

(左から)ヘンリー・ジキル/エドワード・ハイド:石丸幹二、エマ:Dream-Ami(写真提供:東宝/ホリプロ)

もちろん曲だけでなく、舞台セットもすごくて。ハイドによって次々と人が殺されていく場面も、観客から分からない間に凶器が刺さっていたり、一瞬で血が流れたり…。ジキル博士が薬を飲むシーンも、薬の色はどうやってつけたんだろうとか、本当に薬を飲んでいるんだろうかとか、気になるところがいっぱいでした! アトラクションを見ているかのような視覚的な迫力があり、そこに、引き込まれる物語と歌が乗っている。名作と言われるはずです。今回はWキャストですが、これまでは幹二さんがひとりで2役をやっていたわけで、驚きです。ぼくは『ザ・ビューティフル・ゲーム』で久しぶりにシングルキャストをやりましたが、家に帰ったらご飯を食べてすぐ寝ちゃう、部活熱心な高校生みたいな生活でした(笑)。


ヘンリー・ジキル/エドワード・ハイド:石丸幹二(写真提供:東宝/ホリプロ)

ヘンリー・ジキル/エドワード・ハイド:石丸幹二、ルーシー:笹本玲奈(写真提供:東宝/ホリプロ)

ヘンリー・ジキル/エドワード・ハイド:柿澤勇人、ルーシー:真彩希帆(写真提供:東宝/ホリプロ)

「対決」に象徴されるこの作品のおもしろさは、なんといっても人間の「二面性」。ぼくにも偽善的な部分もあるし、悪の部分もあるし、人には見せない本当の自分もいる。自分の中で善と悪が戦っているときもあります。ジキルとハイドのような狂気的な路線ではなくても、誰もが自分の闇と戦っている。でも、それが原動力となってがんばれる時も少なからずあるし、自分の中のハイドを出してもいい時もたまにはあるんじゃないかな。ぼくもいつか「時が来た」ら、舞台上でジキルとハイドのような二面性をお見せできるかもしれません!

聞き手/道丸摩耶(産経新聞)


今月の聴活SONG♪

ミュージカル『ジキル&ハイド』ダイジェスト映像2023


東啓介(Higashi_Keisuke)
1995年7月14日生まれ。2013年デビュー。『5DAYS 辺境のロミオとジュリエット』『命売ります』『Color of Life』などの作品で主演を務める。近年はミュージカル界の新星として頭角を現している。2020年11月にはファーストソロコンサートも開催。最近ではミュージカル『イン・ザ・ハイツ』(神奈川・大阪・名古屋・東京公演)やミュージカル『マタ・ハリ』に出演。映像作品でも、NTV「ウチの娘は、彼氏が出来ない‼︎」やTBS火曜ドラマ「ファイトソング」などに出演し話題に。最近では、TX木ドラ24「チェイサーゲーム」やMBS「闇金ウシジマくん外伝 闇金サイハラさん」に出演。2022年10月〜12月ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』にボブ・ゴーディオ役で出演。2023年1月〜2月ミュージカル『ザ・ビューティフル・ゲーム』にトーマス役で出演。4月〜5月には舞台『二次会のひとたち』に中内啓介役で出演する。
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NEWS!!
「東啓介 Birthday Live」7月14日(金)・15日(土)に開催決定!

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Stage Information

ミュージカル『ジキル&ハイド』

原作:R.L.スティーヴンソン
音楽:フランク・ワイルドホーン
脚本・詞:レスリー・ブリカッス
演出:山田和也
上演台本・詞:髙平哲郎
音楽監督:甲斐正人
指揮:塩田明弘、田尻真高

出演:ヘンリー・ジキル/エドワード・ ハイド(Wキャスト):石丸幹二、柿澤勇人
ルーシー・ハリス(Wキャスト):笹本玲奈、真彩希帆
エマ・カルー(Wキャスト):Dream Ami、桜井玲香
ジョン・アターソン(Wキャスト)石井一孝、上川一哉
サイモン・ストライド:畠中 洋
執事 プール:佐藤 誓
ダンヴァース ・カルー 卿:栗原英雄 ほか

■東京公演/東京国際フォーラム ホールC 2023年3月11日(土)~3月28日(火)
■名古屋公演/愛知県芸術劇場 大ホール2023年4月8日(土)・9日(日)
■山形公演/やまぎん県民ホール 2023年4月15日(土)・16日(日)
■大阪公演/ 梅田芸術劇場メインホール 2023年4月20日(木)~23日(日)

公演公式サイト

東啓介さん出演:Stage Information

舞台『二次会のひとたち』

作:岡田惠和
演出:田村孝裕

美村里江、内田理央、東啓介、佐藤アツヒロ

東京公演:2023年4月14日(金)~4月30日(日)紀伊國屋ホール
大阪公演:2023年5月6日(土)~5月7日(日)COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール
一般発売日:3月26日(日)10:00

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