5年ぶりの日本上陸となった世界最高峰のエンターテインメント集団、シルク・ドゥ・ソレイユの日本公演最新作「ダイハツ アレグリア-新たなる光-」が、東京のお台場ビッグトップで上演中です。専用のテントに一歩足を踏み入れると、そこはもう別世界。次々と繰り広げられる迫力の技、生演奏と印象的な歌、言葉の壁を越えて観客を笑わせるクラウン…と見どころだらけのステージに加え、オリジナルのグッズやフードなど幕間も楽しめる仕掛けがいっぱいです。開幕前日に行われた公開リハーサルを、俳優の本田礼生さんが訪れ、レポートしてくれました。
客席から自然と声が
翌日の開幕を前に、会場は熱気に包まれていました。それもそのはず、今回の演目「アレグリア」はシルク・ドゥ・ソレイユの代表作とも言うべき作品で、1994年の初演から25周年となる2019年に「アレグリア-新たなる光-」としてリニューアル。ところが、新型コロナウイルスの世界的流行により、「アレグリア」だけでなく、シルク・ドゥ・ソレイユの世界中の全公演が中止に追い込まれてしまいました。苦しい時期を乗り越えて日本で幕を開けた「アレグリア-新たなる光-」はまさに、エンターテインメントの復活を象徴する演目なのです。
自らを国王と思いこむ道化師、ミスター・フルールがステージに現れ、いよいよ公開リハーサルが開幕しました。
「オープニングから涙を流していたのは自分だけかもしれません。クラウンたちの芝居にまず心を持っていかれました」(本田さん)
世界各国から集まっているアーティストがシルク・ドゥ・ソレイユ独自の言葉「シルク語」に日本語の単語を織り交ぜて、表情や身振り手振りを使って観客を笑わせます。
「観客席への伝え方のテクニックや、音楽、照明とのマッチ具合、どれほど稽古を重ねたんだろう、と思ったら自然と涙が出て…。それだけじゃないです。お客さんが自然と声を出しているのにも感動してしまって」
いまだコロナ禍でもあり、声を出すのがはばかられるマスク姿の観客席からは、すばらしい技が次々と決まるたびに、思わず感嘆の声がもれ、大きな拍手があがります。
本田さんは3年前、米・ラスベガスでシルク・ドゥ・ソレイユの「KA」を見たそうで、それが初めてのシルク・ドゥ・ソレイユ体験だったそうです。その時から、日本だと観客はどんな反応をするんだろうか、と気になっていたといいます。
「日本のお客さんは声を出すのにまだ抵抗があるはずなのに、すばらしい演技が観客から声を引っ張り出していたんです。その引っ張り出す力、そして日本語も交えて笑わせる、お客さんに寄り添ってくれる姿勢にも心を揺さぶられました」
観客を盛り上げるプロの技
公開リハーサルで演じられたのは、第1幕7つ、第2幕7つの計14の演目と場面。オープニングに続いて行われた「アクロ・ポール」は、棒高跳びで使う長いポールの上でアーティストが飛び跳ねるアクロバティックな演目です。
「アクロ・ポール」Photos: Cirque du Soleil 2021 / Costumes: Dominique Lemieux
「アクロ・ポール」Photos: Cirque du Soleil 2021 / Costumes: Dominique Lemieux
細長いトランポリンの上でアーティストがダイナミックな体操技を披露する第2幕の「パワートラック」と共に、アクロバットの要素が強いこの2演目では、「ぼくとは比べ物にならないレベルなので、ただあこがれるだけですが、演者の気持ちが少しだけわかる部分もありました」と特に心を動かされたといいます。
「パワートラック」Photos: Cirque du Soleil 2021 / Costumes: Dominique Lemieux
「パワートラック」Photos: Cirque du Soleil 2021 / Costumes: Dominique Lemieux
「アクロバットのレベルは高ければ高いほど、すぐに感覚やセンスが落ちてしまうんです。あの照明、あの衣装で、あのクオリティを本番で出せてしまうアーティストたちの努力は、想像がつきません。すごく厳しくつらい練習をしてきたということだけは分かります」
巨大な車輪を自在に動かしながら演技する「ジャーマン・ホイール」、火が付いたナイフを操る「ファイヤーナイフ・ダンス」など素晴らしい演技の数々に、最初から最後まで感動の連続だったという本田さん。もうひとつ注目したのが、観客を盛り上げるためのプロの技です。
「ジャーマン・ホイール」Photos: Cirque du Soleil 2021 / Costumes: Dominique Lemieux
「ファイヤーナイフ・ダンス」Photos: Cirque du Soleil 2021 / Costumes: Dominique Lemieux
「気持ちいいところで音楽を鳴らし、ライトを当てる。お芝居をする場所、技を見せる場所、お客さんに見せたい場所に視線を誘導していく計算しつくされた技術がすばらしいんです。客席の前方で見ても、後方で見ても、ちゃんと楽しめるように作られている。まさに、チームワークがなせる技です」
幕間には、ビッグトップ限定で販売されているオリジナルグッズもチェック。文房具や雑貨、衣料品などがずらりと並び、中には公演タイトルの「アレグリア」をもじったお菓子やお酒もありました。
進む道が変わっていたかも…?
撮影のため、金色の仮面を着けて雰囲気を盛り上げてくれたおちゃめな本田さんに、この公演の見どころを聞きました。
「見る人のコンディションや境遇によって、楽しみ方や受け取り方が変わる演目かもしれません。俳優のぼくが見るアレグリアと、小学生の子が見るアレグリアはたぶん、受け取り方が違うはず。でも、そういう演目は必ずいい作品なんです。それに、声を出して手を叩いちゃうところはみんな一緒。ぜひ、現地で感動を味わってほしいです」
もし幼い頃にシルク・ドゥ・ソレイユを見ていたら、「進む道が変わっていたかも」という本田さん。「エンターテインメントの底知れぬパワーを改めて突きつけられました。こんな素晴らしい世界を作ってくださって、ありがとうございます!」とアーティストやスタッフ、関係者に感謝の言葉を何度も口にしていました。
Photos: Cirque du Soleil 2021 / Costumes: Dominique Lemieux
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取材・文/道丸摩耶(産経新聞社)
本田礼生・撮影/鈴木健児(産経新聞社)
本田礼生(Honda Reo)
1992年10月28日、愛媛県出身。 ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン 菊丸英二役で注目を集める。その後も、MANKAI STAGE『A3!』シリーズ、舞台『刀剣乱舞』天伝 蒼空の兵-大坂冬の陣-他多数の人気2.5次元舞台に出演する一方、オリジナル作品やTHE CONVOY SHOW公演に出演するなど様々なジャンルで活躍中。
Stage Information
『ダイハツ アレグリア-新たなる光-』
シルク・ドゥ・ソレイユ、5年ぶりの日本公演
【東京公演】2023年6月25日まで上演中!:お台場ビッグトップ
【大阪公演】2023年7月14日~10月10日:森ノ宮ビッグトップ