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【公開稽古&取材会レポート】

3月初旬、演出の鈴木裕美さんの指揮のもと、主演の愛希れいかさんほかキャストの皆さんによる公開稽古が行われました。そのレポートをお届けします!

公開稽古で最初に披露されたのは、マリー(愛希さん)と、彼女に大きな影響を与える女性アンヌ(清水くるみさん)の出会いのシーンの楽曲「すべてのものの地図」。才気にあふれ、猪突猛進なマリーの魅力を全身から放つ愛希さんと、好奇心旺盛で快活な立ち居振る舞いに芯の強さが覗く清水さん。国籍の違いによる人種差別、そして女性であるがゆえに受ける差別の壁を乗り越えるべく、未来への希望を胸にした二人のハーモニーが美しく響きます。

続く「遠い世界へ」は、屋良朝幸さん演じる投資家ルーベンが、科学者たちの論文の中からマリーの論文に関心を抱き、投資を約束するシーンのナンバー。シルクハットを被った屋良さんは投資家というよりも謎めいたマジシャンのようで、ミステリアスな微笑みでステップを踏む、その軽やかな身のこなしはさすが振付もこなす踊りの名手! ダンサブル♪なルーベンは、韓国オリジナルとの大きな違いではないでしょうか。

そしてこの二つの楽曲でともに目を引くのは、アンサンブルの皆さんのオシャレなステージング。ミュージカル『キングアーサー』の演出を手掛けたオ・ルピナさんが、卓越したフィジカル・パフォーマンスを見せるアンサンブルのことを「ガッサンブル」(=GOD(神)+アンサンブル)と呼んでいたけれど、『マリー・キュリー』でも日本版ならではのガッサンブルの活躍が期待出来そうです。

最後の楽曲「予測不能で未知なるもの」では、マリーと夫のピエール・キュリー(上山竜治さん)が、ラジウムの新たな可能性を見い出し、不治の病を治す希望となることを信じて研究に邁進する様子が描かれます。上山さんも、ご本人の持ち味であるコミカルな優しさが滲み出るピエール像を立ち上げていて好印象。夫婦以上に共同研究者として同じ高みを目指す、そんな二人の爽やかなやりとりが繰り広げられました。

楽曲披露の後には取材会が行われ、皆さんそれぞれに稽古の手応え、役についての考えなどをお話ししてくださいました。


(左から)演出:鈴木裕美、ピエール・キュリー:上山竜治、マリー・キュリー:愛希れいか、ルーベン:屋良朝幸、アンヌ:清水くるみ

愛希「ファクション・ミュージカルということで、皆さんが史実としてご存知のマリーにプラスアルファ、とても人間らしいところがあって、心を寄せられる部分が多いなと感じています」

屋良「ルーベンはとても異質なキャラクター。自分の目的を果たすためにマリーを利用している部分と、お客さんと同じ気持ちでシーンを見ている部分と、もう一つは僕の勝手な観点ですけど、ある意味シーンを牛耳っているようなところもある。今まで演じたことのなかったキャラクターなので、新しい自分の引き出しを見させてもらっているような感覚があります」

上山「ピエールは私史上、一番優しい役です。これまで革命家やテロリストの役とかが多かったので(笑)、すごく新鮮な、あったかい気持ちでやらせていただいています」

清水「私は架空の人物で、もしもマリーがアンヌという人物に出会っていたら…っていう話になっています。裕美さんの言葉を借りるなら“マリーが静だったら動、マリーがクラスで1番勉強できる人だったら運動が1番できる人”みたいな(笑)対比している役です」

演出の鈴木裕美さんは、稽古場でのキャストの皆さんの印象をお話しくださいました。

鈴木「愛希さんは稽古のやり方も非常にストイックで、マリー・キュリーの猪突猛進なところは、ご本人も似ていると思っているんじゃないかなと思います。屋良さんも、これまで見たことのないちょっと不思議な役で、とても似合っていますね。今回、アニメーション・ダンスという技法で歌って踊るんですが、それは本邦初じゃないかなと。竜治はもう何度も舞台を一緒にやっていて、ものすごくオリジナルな発想があったり、そこまで感情の沸点がパッと上がれるのか!みたいなところに救われることもあって。芯の強い部分があるので稽古をしていて愉快ですし、彼も役に合っているなと。くるみちゃんはとても正直者で、思ったことをそのまま口にして大丈夫か!?って思う時がたまにあって(笑)、そこがアンヌと似ている。皆さん似てるところがあるのは演じていて面白いんじゃないかなと思いますし、お客様も違和感なく観ていただけるんじゃないかなと思っています」

取材会の締めには、皆さんが本作の見どころを熱く語ってくださいました。

清水「裕美さんは演劇的理解をキャストに求めていて、ミュージカルだけれど演劇を観ている感覚になる、そこが日本版ならではかなと思います。あと、屋良さんが踊ります!」

屋良「ハハハ! さっき裕美さんがアニメーション・ダンスの話をされましたけど、今回のキャストで、さまざまなダンスコンテストで優勝したり、賞を獲っている聖司朗くんが、本当に異質な空間を作ってくれています。ミュージカルとしては新しい表現だなと。聖司朗くんと二人で踊るナンバーとか、これまで見たことないと思う。アニメーションをやりながら歌う、自分的には新しいチャレンジなのでメチャクチャ楽しいです」

上山「そう、コンテンポラリーダンス的な要素だったり、これぞ鈴木裕美演出!という部分がすごくあって。とても想像を掻き立てられる作品になっているので、ぜひ2回観ていただけたら!」(一同笑。裕美さんから「なぜ2回に限定!?」とツッコミが)

鈴木「史実に大胆な虚構を入れることで、非常に劇的なうねりを見出してるなと思いますし、楽曲が素晴らしいです。すごくエモーショナルな、感情がほとばしるシーンがあり、そのほとばしる感情をちゃんと支える楽曲があるのは、ミュージカルとして楽しく、しっかりした部分だなと。女子が科学をやることを認めてられていない時代に、マリーという人物がどう生きたのか。史実だけではなく楽しんでいただけるものになっているのではと思います」

愛希「ノーベル賞を受賞した科学者と聞いて、難しい話ではと思われる方も多いと思うんですよね。でもそういう科学的な部分だけじゃない、人間ドラマです。エネルギッシュな舞台になっていると思いますので、ぜひ劇場に足を運んでいただけたら嬉しいです!」

取材・文/上野紀子
撮影:平野祥恵

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Stage Information

ミュージカル『マリー・キュリー』

脚本:チョン・セウン
作曲:チェ・ジョンユン
演出:鈴木裕美
翻訳・訳詞:高橋亜子

出演:愛希れいか、上山竜治、清水くるみ / 屋良朝幸 ほか

【東京】
日程:2023年3月13日(月)~26日(日)
会場:銀河劇場(天王洲)

【大阪】
日程:2023年4月20日(木)~23日(日)
会場:梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ(大阪)

公演公式サイトはこちら

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