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【GPレポート】ミュージカル『レイディ・ベス』▷強く輝く現代的なメッセージ

日生劇場で開幕したミュージカル『レイディ・ベス』。2月9日と10日に公開されたゲネプロの様子をレポートする。

イギリスの黄金時代を築いた名君・エリザベス1世の青春時代を描く歴史ロマンで、『エリザベート』『モーツァルト!』を手掛けたミヒャエル・クンツェ、シルヴェスター・リーヴァイ、小池修一郎のトリオにより2014年世界初演。2017年の再演、2022年のスイス公演を経ての上演となる。

物語の中心となるのは、のちにエリザベス1世となるレイディ・ベスと、吟遊詩人の青年 ロビン・ブレイクの若き2人。今回はベスにいずれもミュージカル初主演となる奥田いろは(乃木坂46)と小南満佑子、さらにロビンに有澤樟太郎、手島章斗とフレッシュな顔ぶれが起用された。

レイディ・ベス/奥田いろは

弱冠20歳の奥田は、可憐そのもの。純粋な少女が運命の輪に取り込まれ、女王へと成長していく様子を力みなく、けれども堂々と、自然体で演じた。昨年12月に行われた製作発表記者会見の時よりも、より一層歌唱が安定した印象を受けた。鈴が鳴るような声質も心地よい。

レイディ・ベス/小南満佑子

小南は今回が初役とは思えない、貫禄を感じさせる演じぶり。王女の称号を剥奪されてもなお、王族としての気品を忘れない居住まいの正しさがある。1幕のラストを飾る名曲《秘めた想い》の圧倒的な歌唱には、荘厳さすら漂っていた。さすが、日本のミュージカル界の将来を担うべく期待される俊英だ。

ロビン・ブレイク/有澤樟太郎

有澤は登場シーンからして軽やか。彼がひとこえ歌い始めるとともに物語が動き出すのだが、天性の華にこれから始まる物語への期待感が一気にかきたてられる。すらりとした長身にエレガントな衣裳をまとい、軽やかに歌い舞う姿は絵物語から抜け出したかのよう。コミカルな動きやセリフ回しもあるが、こうした軽妙な芝居も難なく演じられる才能の幅広さをみせた。

ロビン・ブレイク/手島章斗

ミュージシャンとしても活躍する手島は吟遊詩人という役柄がぴったり。野性味を感じさせる色気には、流れ者として生きるたくましい青年が重ねてきた歴史が自然とにじむ。軽快で伸びやかなソロナンバー《俺は流れ者》をはじめ、エネルギッシュでリズミカルな歌唱が実に聴かせる。自由を追い求め、ベスへの思いに突き動かされるロビンという青年の情熱を身近に感じることができた。

メアリー・チューダー/丸山 礼

ベスと敵対する異母姉、メアリー女王は丸山 礼と有沙 瞳のWキャスト。丸山は今回がミュージカル初挑戦ながら、場の空気を一瞬でつかむ独自の存在感をみせた。9日のゲネプロではやや硬さもあったが、表情の作り方やふとしたやりとりで笑わせるセンスには、この新しい才能はこれからどんどん化けていくだろうな、とワクワクさせられた。

メアリー・チューダー/有沙 瞳

ベスを政治的に追い詰め、プロテスタントを迫害することで「ブラッディ=血まみれ」と呼ばれたメアリーではあるが、彼女もまた父王から見捨てられた過去を持つ。有沙は苛烈な運命を生き抜いてきた女王の美しさ、哀しさを存分に演じ切って見事。張りのある歌唱はもちろんのこと、セリフ回しも聞き取りやすく、彼女の確かな実力が、物語の車輪を前に進める原動力となっていた。

フェリペ/内海啓貴

作品のトリックスターとなるのはメアリーと政略結婚をするスペインのフェリペ王子。美貌と知力を誇り、ベスの運命がいかに転がっていくのかのカギを握るこのキャラクターを、内海啓貴はけれんみたっぷりに、松島勇之介は耽美かつ洗練されたたたずまいで演じる。コケティッシュな登場シーンのナンバー《クール・ヘッド》は本作の楽しみのひとつだろう。

フェリペ/松島勇之介

そんな若々しい才能のまわりには、ベスの教育係で母親のように見守るキャットに確固たる歌唱力を誇る吉沢梨絵、ベスを導く教師のアスカムに高潔な存在感の山口祐一郎、深さと強さを併せ持つ石川禅といった日本ミュージカル界を代表するベテランを配した。

キャット・アシュリー/吉沢梨絵
ロジャー・アスカム/山口祐一郎(写真右)
ロジャー・アスカム/石川 禅

ベスの亡き母、アン・ブーリンを演じる凪七瑠海も、はかなげに美しく、リーヴァイ独特のメロディを歌い上げる。

アン・ブーリン/凪七瑠海

スペイン大使のルナール役の高橋健介、ベスを謀略に陥れる大司教ガーディナー役の津田英佑も緊張感ある演技で魅せる。ふたりのデュエット《ベスを消せ》の迫力にはぞくぞくしてしまった。

史実を要所でふまえながらも、カトリックとプロテスタントの宗教的対立や政治的な背景などを極限までシンプルにし、わかりやすくみせるクンツェの脚本と小池の演出だが、今回観劇して「誰もが自分の信じたいものを信じられる世界に」という現代的なメッセージを強く受け取った。他者への不寛容がますます激しくなっている2026年のいまだからこそ、ベスとロビンが追い求めたその信念がより美しく輝く。

リーヴァイならではの耽美な旋律に、回転する盆をいかした立体的な演出、さらに思わずため息が漏れるほどの豪華な衣裳だけでも、酔わせてくれるには充分。これから4月の博多座、5月の御園座と公演を重ねていく本作だが、若々しい才能が、観客の反応の中でさらなる成長を遂げることを期待したい。
 

取材・文/塩塚 夢(産経新聞社)


Stage Information

ミュージカル『レイディ・ベス』

脚本・歌詞:ミヒャエル・クンツェ
音楽・編曲:シルヴェスター・リーヴァイ
演出・訳詞・修辞:小池修一郎(宝塚歌劇団)
オリジナル翻訳:薛 珠麗
翻訳:増渕裕子

レイディ・ベス:奥田いろは (乃木坂46)、小南満佑子
ロビン・ブレイク:有澤樟太郎、手島章斗
メアリー・チューダー:丸山 礼、有沙 瞳
フェリペ:内海啓貴、松島勇之介
シモン・ルナール:高橋健介
スティーブン・ガーディナー:津田英佑
キャット・アシュリー:吉沢梨絵
アン・ブーリン:凪七瑠海
ロジャー・アスカム:山口祐一郎、石川 禅  ほか

公演日程
【東京】2026年2月9日(月)〜3月27日(金) 日生劇場
【福岡】2026年4月4日(土)〜13日(月) 博多座
【愛知】2026年5月3日(日・祝)〜10日(日) 御園座

公演公式サイトはこちら

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