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INTERVIEW

濱田めぐみさん 「死神レムからメリー・ポピンズへ。この二つの役を続けてやることに意味があると感じています」▷ミュージカル『メリー・ポピンズ』

ウォルト・ディズニーによる不朽の名作映画『メリー・ポピンズ』が原作の傑作ミュージカルが2026年3月に3度目の上演を果たします。心躍る名曲と圧巻のダンスシーン、温かいセリフ。初演からメリーを演じる濱田めぐみさんに本公演にかける思いと、『デスノート THE MUSICAL』10周年公演についてお話を伺いました。

ミュージカル『メリー・ポピンズ』
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――8年ぶりに『デスノート THE MUSICAL』に戻ったお気持ちは?

全て覚えていて、自分でもびっくりしました。栗山(民也)さんの演出がきちんとしていてぶれていない。だから10年で初演を含め4回も上演できたのでしょうね。

2幕の稽古に入って、レムの台詞をどう喋っていたかな?ととりあえず台本を見ながら読み合わせをしてみたら、前と同じ感覚ですんなり入っていけました。初演に出ていたキャストは全員、当時の感覚が戻ってきたようです。感覚が身体に入った経験者たちが稽古場の良い空気を作っていましたね。もちろん新キャストたちのお稽古を見るのは新鮮で、今の時代に『デスノート』を初演からの演出でやる意味があるとも思いました。

『デスノート THE MUSICAL』10周年公演、死神レム/濱田めぐみさん
(c)大場つぐみ・小畑健/集英社
写真提供:ホリプロ

栗山さんが今回の稽古で言っていたのが、初演で演出した際に『デスノート』は近未来の話だったと。だけど既に過去の話。それをあえて現在に寄せず、ありのままの状態で上演することが一番大事だと。今はAIの時代になり、人間がやってきたことを機械が代行できるようになりました。その分、人は思考を諦めたり、面倒臭がったりしています。『デスノート』はそうなる前の、まだ人間が自分たちで考えている頃を描いています。L、月、警察は考えに考えて答えを導き出そうと頑張っている。同時に夜神父子の絆やレムの海砂に対する愛、海砂の月に対する一途な思いなどが鮮明に描かれています。今回、栗山さんがそれらを強くわかりやすく表したいと仰っていて、なるほどと思いました。

――レムが初めて弥 海砂を見るシーンは、個人的にとても感動しました。レムの一言に世界が一気に広がる感じがして、胸に刺さったんです。

「なんてピュアなんだ」の台詞ですね。レムは死神としての格が高いから普段、直に手を下すことはしません。だけど海砂を助けた死神ジェラスが目の前で砂になったことで、残ったデスノートを海砂に届けます。栗山さん曰く、レムが下界に行き、初めて人間と接したら、自分が思っていたほど人間は汚れていない、結構ピュアだと感じたと。それゆえこの台詞になるわけです。この「ピュア」の言い方には栗山さんのこだわりがあり、稽古で繰り返し練習しました。伝わって良かったです。

――今回、新キャスト多数参加して、作品に新しい風が吹いていますね。

8年前は浦井(健治)君やカッキー(柿澤勇人)がいて、役者力のボリュームが大きく、キャスト本人に対する演出もありました。その点、今回は役としての演出が優先で、ストーリーを届けることを重視しています。根っこに力強く刺さったものを大切に、リアルに演じるために、役の道筋を丁寧に作ってきました。

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――レムの衣裳が変わったようですね。

はい。ドレスの布の量が増えて、ボリュームが増しました。以前のレムとリュークはそれぞれの個性が明確でしたが、今回はそれに加えて、見え方として死神界での男版と女版、ツインズみたいなエッセンスもある気がします。どちらの髪型もボリュームアップして、登場シーンは巨大な死神が両端にいるイメージ。死神として、人間ではない動きや歩き方、喋り方を求められました。

――浦井さんのリュークはやりとりをしてみて、いかがですか。

レムとリュークとは舞台上で全然目が合わないんです。私はもっと絡めるかなと思っていたけど、思いのほか少なくて。でも一緒に立てば、一瞬でバチッと収まるんですよね。浦井君とは何も言わなくてもその瞬間の感覚をわかり合える。これまで共演が多く仲良しだから、まさに死神の世界のように言葉ではないところで通じ合えます。

左から)死神レム/濱田めぐみさん、死神リューク/浦井健治さん
(c)大場つぐみ・小畑健/集英社
写真提供:ホリプロ

そして浦井君は今回、完全に殻を脱ぎましたね。ついに新しい浦井健治が出ました!という感じ。王子様や貴族ではない役で、なりふり構わずやることができる。実際に、リュークとしてのびのびと自由を謳歌していますから。ものすごく無邪気に走り回っていて、躍動感たっぷりでとても騒がしい(笑)。レムは静かな方が好きだからうるさいと思うけど、その二人のバランスが絶妙です。

――『デスノート』の客席の反応はどんな雰囲気?

観客の皆さんは集中して、エネルギーを舞台に一直線に向けてくださいます。お客様も俳優の我々と同じレールに乗っていて、どのシーンでも集中力が途切れない。多分、栗山さんの作り方が大きくて、誰も置いてきぼりにしないんです。お客様、スタッフさん、オーケストラの方々もみんな一緒に進んでいる気がして素晴らしいです。

――そして2026年3月には『メリー・ポピンズ』が開幕しますね。濱田さんは2018年、2022年に続き3度目の主役メリーを演じられます。この作品は濱田さんにとってどんな存在ですか。

(C)Disney / CML 『メリー・ポピンズ』2022年公演より。
メリー:濱田めぐみさん バート:大貫勇輔さん

数日前に、子供が「〇〇だ、メリー・ポピンズ!」と言うのを聞き、呼ばれた!と思って行きそうになる自分にドキッとしたんです。自分の中に染みてるなぁ、でもまだ公演は先だって(笑)。メリー・ポピンズと言われると、ピシッと仕事モードになって、子供たちの面倒をみなくちゃ!ってなるんです。

――そのくらい身体の中に入っている役なんですね。

メリーの芯の部分は絶対に揺るがないものがあります。公演に向けて肉体的なものをお稽古で戻していく作業はあるけれども、レムの次にメリーをやるのは、もしかしたらいい流れかもしれないと思っています。レムは死神として、人間をとことん俯瞰して見ています。そこはメリーも一緒で、人間に何かを示唆する、人間ではない存在なんですよね。レムは人の魂を扱い、メリーは家庭内での子供の躾はもちろん、子供のままでいる大人の手助けをしたり。この二人は職種が違うだけで、やっていることは同じ。この二つの役を続けて演じることに意味がある気がします。

――『メリー・ポピンズ』で心に響く歌を教えてください。

2幕の曲「どんなことだってできる」ですね。メリーはよく「何だってできる」と言います。何だってできるけれども、できるまでの努力は絶対に必要。彼女はなぜやりたいのかという理由を子供たちに教え、途中で投げ出すことを許さずに最後までやりなさいと言う。結果として「できる」って奇跡だと思います。やればできるんだからちゃんとやりなさい、そんなメリーの言葉には演じながらよく励まされます。役として役者・濱田めぐみがメリー・ポピンズを演じながら、メリーとして喋った言葉を自分で聞いて、うわぁ!本当にそうだよね!と思いつつ、でもメリーでいるという多重構造(笑)。演じていると、不意に私の本質の部分が役の言葉に影響を受けることはよくあります。

――興味深い話ですね。今回楽しみにしていることはありますか。

朝夏まなとさんによる新しいメリーがどんな感じか、太陽のように明るいメリーかな?と期待しています。新しいバートである上川一哉さんと組むことも楽しみですし、子供たちはどんな悪ガキ(笑)が来るのかワクワク。前回から時間が経っているので、俯瞰でメリーのことを考えたりして、今回メリー目線でものを見て自分が何を感じるのかも楽しみです。こればかりはやってみないとわからないので。

――メリーを演じる上で、これは絶対に必要だと思うものは?

体力です。見た目と違い、めちゃくちゃ体力を使う役なんです。衣裳はコルセットを付けて、シャツを着て、スカートを履いて、ジャケット、コートを着て、帽子を付けて、傘を持つ。がんじがらめの上に重くてタイトで苦しい。その格好で歌い、タップダンスまでしますから。編み上げのブーツも硬くて、海外作品ならではという重みを感じています。

(C)Disney / CML 『メリー・ポピンズ』2022年公演より。
メリー:濱田めぐみさん バート:大貫勇輔さん

――その分、私たち観客は本物の質感を楽しませていただいているわけですね。最後に読者の方にメッセージと、2026年の抱負をお聞かせください。

公演中の『デスノート』は、役者たちがそれぞれ役を掴み、めまぐるしく成長しているので、回を重ねるごとに深く鋭くなっています。デスノートの世界で気が付くことがたくさんあると思うので、ぜひ一緒に体験していただけたら嬉しいです。

『メリー・ポピンズ』について、メリーは観に来ていただいた方全員を子供だと思っていて。誰にでも子供だった時代がある、私のメリーはそんなところにメッセージを投げかけたいと思っています。新キャストも増えますし、子供たちは面白い子や可愛い子たちが参加します。観るだけで幸せになれる作品なので、ぜひ遊びに来ていただきたいです。

そして2026年の抱負は体調に気をつけて、新しいものにもチャレンジしながら、楽しくわくわくするような人生を歩んでいきたいです。

取材・文/三浦真紀(演劇ライター)
撮影/吉原朱美

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濱田めぐみ(Megumi Hamada)

福岡県出身。1995年に劇団四季オーディションに合格。96年に『美女と野獣』のヒロイン、ベル役に大抜擢。2010年に退団。
第40回菊田一夫演劇賞、第66回文化庁芸術選奨演劇部門文部科学大臣賞、第24回読売演劇大賞優秀女優賞を受賞。
近年の主な出演作品に
【舞台】『メリー・ポピンズ』『レ・ミゼラブル』『ファインディング・ネバーランド』『スクールオブロック』『カム フロム アウェイ』『ビリー・エリオット〜リトル・ダンサー〜』『イリュージョニスト』など。
2025年8月~9月にミュージカル『ある男』に後藤美涼役で出演、11月24日に開幕した『デスノート THE MUSICAL』10周年公演に死神レム役で出演中。2026年3月~5月にミュージカル『メリー・ポピンズ』にメリー・ポピンズ役で出演することが発表された。

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Stage Information

ミュージカル『メリー・ポピンズ』

原案:P.L.トラバース
オリジナル音楽・歌詞:リチャード・M・シャーマン / ロバート・B・シャーマン
脚本:ジュリアン・フェローズ
新規楽曲・追加歌詞・音楽:ジョージ・スタイルズ / アンソニー・ドリュー
翻訳:常田景子
訳詞:高橋亜子

出演:
メリー・ポピンズ:濱田めぐみ/笹本玲奈/朝夏まなと
バート:大貫勇輔/小野田龍之介/上川一哉
ジョージ・バンクス:小西遼生/福士誠治
ウィニフレッド・バンクス:木村花代/知念里奈
バードウーマン / ミス・アンドリュー:島田歌穂/樹里咲穂
ブーム提督 / 頭取:コング桑田/安崎 求
ミセス・ブリル:浦嶋りんこ/久保田磨希
ロバートソン・アイ:石川新太/DION

企画制作:ホリプロ/東宝
主催:ミュージカル『メリー・ポピンズ』製作委員会

上演日程/会場
【東京】2026年3月21日(土)〜5月9日(土) 東急シアターオーブ
【大阪】2026年5月21日(木)〜6月6日(土) 梅田芸術劇場 メインホール

公演公式サイトはこちら

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