最近、目覚ましい活躍を見せる三浦宏規さん。ミュージカル『ジェイミー』ではドラァグクイーンを夢見る男の子という新しい役に取り組み、話題となりました。そして、今年10周年を迎える『デスノート THE MUSICAL』ではL役と、また新たな境地に挑みます。成長し続ける26歳、今の心境を伺いました。
――『デスノート』への出演が決まったときの思いを教えてください。
そもそも10年前の初演から観ていて、大好きな作品でしたから嬉しかったです。まずシンプルにストーリーが面白い。僕は映画から『デスノート』にハマったのですが、ミュージカルになっても戯曲の面白さには圧倒的なものがあります。ミュージカルではキャラクターそれぞれにワイルドホーンが書き下ろした個性的な楽曲があり、どれもすごくかっこいい。観た瞬間に心を掴まれました。
ラストも観客に大きな問いを投げかけて終わります。きっと演出の栗山民也さんは生で上演する意味をそこに落とし込んだのだろうなと感じました。いろんな側面から見て魅力が詰まった作品だと思います。
――L役と聞いた時はどう思われましたか?
本当にやりたい役でしたから大喜びでした。いろんな方がLは僕にピッタリと言ってくださいます。その一方で、絶対に夜神月だと思ってた!という方も多いので、どっちともつかない顔をしているのでしょう。これも俺の魅力なのかもしれない(笑)。この顔に生んでくれた親に感謝です。特に浦井(健治)さんは「宏規は月だと思ってた」と仰っていて、僕のいい子ちゃんの面を見てくれているのかな?と。『レ・ミゼラブル』のマリウスや『キングダム』の信の流れだと、やはり月のイメージになるんでしょうね。
(C)大場つぐみ・小畑健/集英社――Lのどんなところに惹かれますか。
何を考えているのかわからない感じ。天才でありながらものすごい孤独を抱えていて、常人では誰も彼のことを理解できない。だけど圧倒的なIQと推理能力で、周りは認めざるを得ない。一見、冷酷に見えるけれど人間味に溢れ、正義感が強い。自分が犠牲になることも厭わない。そんなところに魅力を感じます。月との関係性についてもLは敵だけれどちょっと心を開いてるのかな?って思わせるような場面がいくつかあり、そんなところにLの人間味が詰まっている気がします。ミュージカルではLの歌う曲がとてもカッコよくて、それも含め魅力たっぷりな役だと思います。
――Lは前屈みに座って、ずっとお菓子を食べているイメージが強烈ですね。
あの体勢になるのもお菓子を食べるのにもLなりの理由があるんですよね。あの体勢じゃないと思考能力が落ちると言っているくらいなので。そこも見た目だけではなく、内面から向き合っていけたらいいな、と。
――夜神月は『ジェイミー』で同役だった髙橋颯さんがやられた役です。その辺りは髙橋さんとお話ししましたか。
はい。いろいろと話しましたし、「学ばせていただきます」と伝えました。颯くんは歩き方を特訓したと言っていて、最終的には栗山さんの歩き方を真似したと。天才の歩き方って何だろうと考えたら栗山さんか!ってなったらしくて、僕はそれを心に留めています。
撮影/酒巻俊介(産経新聞社)――ワイルドホーン作品は初出演。彼の曲は歌うのに膨大なエネルギーが要ると言われています。
特に『デスノート』はパワーが要る曲が多いので、心して取り組みたいですね。ワイルドホーンさんの曲はどれを聴いても素敵。旋律が美しくて非常にドラマチック。こうして作品の中で歌えるのは嬉しいですね。
――今回は踊らない?
踊りません。そんなに毎回踊らなくてもいいでしょ(笑)。その意味でも今までとは違う僕を演出の栗山さんに引き出していただけたらと思っています。周りの俳優さんたちから、栗山さんと絶対にやった方がいいよってずっと言われていて、作品も何本か拝見させていただきました。いつか一緒にやりたいと思っていたのでようやく念願が叶いました。
――初共演となる夜神月役の加藤清史郎さん、渡邊蒼さんはどんな印象ですか。
蒼くんは今日の取材で一緒になりましたが、礼儀正しくてしっかり者で、信じられない20歳!未来は安泰だなと思いました(笑)。僕が身を引き締めなければと思うくらい、素敵な方です。清史郎くんは帝劇コンサート『THE BEST New HISTORY COMING』の打ち上げでお会いして連絡先を交換。『ジェイミー』も観に来てくれました。ナイスガイです。自分の目標がはっきりしてて、礼儀正しい。一緒に物を作っていく上ですごく良いものをもらえそうな俳優だと思います。

――2025年は『レ・ミゼラブル』マリウス役、『ジェイミー』ジェイミー役、『のだめカンタービレ』千秋真一役、そして『デスノート』。新しい扉をどんどん開いているようにお見受けしますが、俳優として得たものは何でしょうか。
もちろん一つとして同じ役はないけれども、本当にそれぞれ異なるタイプの役をやらせてもらえるのは嬉しいし役者冥利に尽きます。この1年は刺激的な毎日でした。特に感じるのは、年下の人たちと共演する機会が増えたこと。昨年から参加したマリウス(山田健登、中桐聖弥)二人が年下、『デスノート』に来たら夜神月の二人も年下。今までは自分が一番年下で、先輩に食らいついてウワーッて頑張ってきたけれど、みんなこんなにすごいんだ!って刺激をもらえる。良い環境になってきたと思います。
うまい後輩が出てきたからって嫉妬することはないです。僕は自分にしかない魅力を多分理解しているし、僕は僕だからという気持ちもある。なぜこの人みたいに歌えないんだ、この人みたいなことができないんだ、と対象は全て自分に向かうんです。上手い人はその人なりの努力のもとでそうなっているのだから、刺激をいただいてどんどん自分にぶつけることで成長したいです。

――『のだめカンタービレ』では台湾公演、『千と千尋の神隠し』ではロンドン公演と海外の舞台に立つチャンスも増えてきましたね。
これは僕の夢の一つでもあったので、叶えてくれた方たちに感謝しています。本当に多くのことを学んだけれど、大きかったのは生活がシンプルになったこと。日本にいるとどうしても雑音というか、必要のない情報が入ってきがちなんです。だけど僕は寝て起きてアップして、舞台に上がり喝采を浴びて、ご飯を食べて寝られれば満足。それをやりたいのだと思い出させてくれたのは、ロンドン公演と台湾公演でした。海外のお客様は反応が顕著だから、よかったら喝采が来るし、悪かったら拍手が少なかったりする。ありがたいことに僕はどちらも良い作品だったので、海外のお客様にも喜んでいただけました。その意味ではカーテンコールでお客さんの笑顔を見て、幸せな気持ちになって帰って寝る。これが僕のやりたかったことなんだ!これ以上の人生はないなって実感しました。
あと海外に出たことで日本のすごさ、素晴らしさを肌で感じました。特にイギリスと台湾は日本と親交が深いこともあり、皆さん日本が好きなんだなと。日本人であることを誇りに思える瞬間もたくさんあり、良い国に生まれたなと思っています。
――では将来はウエストエンドやブロードウェイで活躍したいお気持ちも?
いやいやいや(笑)。今回は呼ばれて行ったから楽しかったけれど、実際にあの世界に入り込んだらまた全然違う厳しさに立ち向かわなければいけないでしょうね。初日の劇評とか。もちろん、行けたらいいなという気持ちはあります。
――『デスノート』に向けて意気込みをひとこと!
10周年の記念イヤーに新たに参加させていただくので、原作漫画をしっかり読み込むところから始め、ゼロからしっかり構築していけたらと思っています。頑張りますので応援よろしくお願いします。
取材・文/三浦真紀(演劇ライター)
撮影/酒井俊介(産経新聞社)
1999年3⽉24⽇⽣まれ。5歳よりクラシックバレエを始め、全国バレエコンクールでの⼊賞経験を持つ。ミュージカル作品やストレートプレイなど数多くの話題作品に出演。『のだめカンタービレ』、『赤と黒』、『千と千尋の神隠し』の演技で第49回菊田一夫演劇賞を受賞。近年は、ミュージカル『レ・ミゼラブル』、『ジェイミー』などに出演。26年2月7日Julian MacKay & Friends Ballet Gala ~The Art of Dance~」公演に特別出演する。
Stage Information
『デスノート THE MUSICAL』
原作:「DEATH NOTE」(原作:大場つぐみ 作画:小畑健 集英社 ジャンプコミックス刊)
作曲:フランク・ワイルドホーン
演出:栗山民也
歌詞:ジャック・マーフィー
脚本:アイヴァン・メンチェル
出演:
夜神月/加藤清史郎/渡邉 蒼(Wキャスト)
L/三浦宏規
弥海砂/鞘師里保
夜神粧裕/リコ(HUNNY BEE)
死神レム/濱田めぐみ
死神リューク/浦井健治
夜神総一郎/今井清隆
主催・企画制作:ホリプロ
会場:東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)
Story
成績優秀な高校生・夜神 月(やがみライト)(加藤清史郎/渡邉 蒼(ダブルキャスト)は、ある日、一冊のノートを拾う。ノートには、「このノートに名前を書かれた人間は40秒で死ぬ」と書かれていた。それは、死神リューク(浦井健治)が退屈しのぎに地上に落とした“死のノート”(デスノート)。犯罪者を裁ききれない法律に、限界を感じていたライトは、ある日、テレビで幼稚園に立てこもる誘拐犯の名前をデスノートに書いてみる。すると、誘拐犯は突然、心臓発作で息絶えた。「自分こそが神に選ばれ、犯罪者のいない世界を創る“新世界の神”だ」と、ライトはデスノートを使い、犯罪者の粛清を始めていく。世界中で犯罪者が不可解な死を遂げていく事件が相次ぐ中、インターネット上ではその犯人を「キラ」と呼び、称賛しはじめる。犯罪の数が激減する中、警察は犯人の手掛かりさえつかめないでいた。そこへ、これまであらゆる難事件を解決してきた謎の名探偵L(エル)(三浦宏規)が事件を解決すべく、捜査を開始する。
※公式HPより引用




