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INTERVIEW

EMK MUSICAL COMPANY ソフィ・ジウォン・キムさん▷「日韓が世界の文化の中心に」

10月10日・11日に東京都千代田区の大手町三井ホールで開催されたミュージカルイベント『The Echoes』。近年、世界から注目を集める日韓のオリジナルミュージカルをテーマに、韓国のライジングスターであるキム・ソンシクさんと加藤和樹さん、浦井健治さん、スペシャルゲストとして彩風咲奈さん、濱田めぐみさんが出演。両国のミュージカルスターがトークと歌で交流を深めました。

このイベントでもスポットをあてた作品を手掛けた両国のプロデューサーにそれぞれお話を伺いました。
韓国からは、『マタ・ハリ』『笑う男』『ベルサイユのばら』を生み出したEMKミュージカルカンパニー副代表であり、プロデューサーのソフィ・ジウォン・キムさん。その制作エピソードなどを教えていただきました。

――ライセンス作品の上演のほか、2016年にEMKで初めてのオリジナル作品『マタ・ハリ』を制作されました。世界的音楽家フランク・ワイルドホーンさんが作曲を手掛け、韓国のほか日本でも再演を重ねる大ヒット作となりました。

それまで『モーツァルト』『レベッカ』などの優れたライセンス作品を上演し、ノウハウを積み重ねてきました。ライセンスものはすでに音楽と台本はあるのですが、ローカライズする中で、原作を超えていかなければならない、ある意味<オリジナル作を作るよりもオリジナル>な面があります。そうした中、原作者から「韓国の作品が最高だ」とほめていただけるほどになり、私たちとしても制作に自信と誇りを持てるようになりました。

『マタ・ハリ』の着想を得たのは『モンテ・クリスト伯』の制作中、フランク・ワイルドホーンさんとの会話の中でした。「いい台本があれば一緒にオリジナルを作ろう」と言っていただいていたのですが、ふとマタ・ハリという言葉が出てきました。マタ・ハリは二重スパイの容疑をかけられ、最後は処刑されるという悲劇的な人生を送った女性ですが、華やかなダンサーでもある。ドラマティックな楽曲と華やかなダンスシーンという見せ場を作ることができ、とてもミュージカルに向いたモチーフだと思ったんです。

ワイルドホーンさんは、俳優さんを想定して音楽を書き上げるタイプ。タイトルロールに、ワイルドホーンさんもその声質と表現力を激賞していたオク・ジュヒョンさんを想定すると、ものすごい速さで音楽が仕上がってきました。ちょうど彼女がミュージカルスターに躍り出て、注目を集めていたころです。

 
作家はアイヴァン・メンチェルさんで、スタッフはアメリカと韓国の両国から参加してもらいました。それぞれの母国語でディスカッションしたいという意向があり、両国それぞれでワークショップの開催を重ね、台本について議論しました。実は、今ご覧いただいている物語は、最初のものと180度違うんですよ。

日本では2018年に初演されました。言葉の壁などの苦労を乗り越えて、韓国と日本、それぞれで愛され、成長する作品になってとても光栄に思っています。

――今年12月には最新作の『韓服を着た男』が開幕しますね。

ルーベンスの「韓服を着た男」という素描をモチーフにしたベストセラー小説が原作です。
謎に包まれた中世朝鮮の天才科学者チャン・ヨンシルを主人公にしているのですが、彼がもしかしたらイタリアに渡ってレオナルド・ダ・ヴィンチに影響を与えたのかもしれない…というアイデアをもとにした、時空を超えた壮大な歴史ミステリーです。もしかしたら本当にそうだったのかもしれない…と思わされるような素晴らしい内容ですよ。台本はいま15回くらい修正しています。本番までに20回は修正を重ねるのではないでしょうか。

――作品づくりのアイデアはどこからくるのでしょうか。

国内外に常にアンテナを張っています。日本の歌舞伎にも興味がありますね。いろんなものから刺激を受けています。

――近年、韓国と日本のミュージカル界の交流がますます活発になっていると思います。

韓国と日本は、映像や音楽などのジャンルでは文化的な交流はもともとありましたが、ミュージカルは言語の壁もあり、ほかのジャンルに比べると簡単ではなかった。両国の俳優がそれぞれの国の舞台に立つことはあまりなかったと思いますが、最近では、日本の俳優が韓国で言葉や歌を習ったりととても活発になってきていますね。

交流はお互いのいいところを学びあうもの。多ければ多いほどといいと思います。これまで、世界の文化の中心は英米が中心でしたが、これからはアジア、中でも韓国と日本がその役割を担うことになると思います。こうしたシナジー効果がさらにその流れを加速することになるのでは。今回の日韓イベント『The Echoes』は、新人だけど実力のある俳優と、日本の最高のベテラン俳優が共演するという新鮮なキャスティングでした。

――プロデューサーとして、オリジナル作品を生み出すうえで必要なものとはなんでしょうか。

まず、その作品の市場を明確にすること。大劇場なのか、あるいはテハンノのような小劇場なのか。市場にあわせて作品を決めることです。
次に、この作品をいま届けなければならない理由はなんなのかを常に考える。この作品が与えるメッセージはなにか、ということを自分自身に対して問いかけています。
あとはやはり、ミュージカルなので、音楽と台本の力ですね。美術など、あらゆる要素が大事なので、一言では言えないのですが…。プロデューサー自身は何かを創作することはできないので、よりよいものを創り出す才能を見つけることが大切です。

 

取材・文/塩塚 夢(産経新聞社)
通訳/キム・テイ

Stage Information

韓国ミュージカル『韓服を着た男』

劇作・作詞・演出:クォン・ウナ
作曲:Brandon Lee
音楽監督:イ・ソンジュン
製作:EMKミュージカルカンパニー

出演:パク・ウンテ、チョン・ドンソク、コ・ウンソン、KAI、シン・ソンロク、イ・キュヒョン、チェ・ミンチョル、キム・ジュホ、キム・テホ、イ・ジス、チェ・ジヘ、ユン・ソンヨン、パク・ヒョンギュ、ソン・ウィワン、キム・ヨンジュン

公演期間:2025年12月2日(火)~2026年3月8日(日)

会場:忠武アートセンター 大劇場
※会場紹介サイト「韓国コネスト」https://www.konest.com/contents/spot_mise_detail.html?id=10605

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