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【観劇コラム】ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』▷スター人生の悲喜交々を名曲で綴る。最後はスカッと!

どんなに輝かしいスターにも苦労の日々はあり、たとえ栄光を手にしたとしても、そこからまた紆余曲折は始まる。どんな立場の人であれ、生きるってそう簡単なことじゃない。アメリカの人気ポップスグループ、フォー・シーズンズのメインヴォーカルであるフランキー・ヴァリの人生を軸に、人生の悲喜交々をゴキゲンな音楽とダンス、ドラマでまるっと綴ったミュージカルが『ジャージー・ボーイズ』だ。

2005年にブロードウェイで初演。日本では2016年からコンサート版を含め、キャストを変えつつ繰り返し上演され、今ではすっかりお馴染みの演目となっている。正直、日本で上演するとなった時、フランキー役はいるのか?と思った。頭のてっぺんからピーンと出す鋼のようなファルセット、フランキー・ヴァリ役にはこの歌声が必須で、米英のオリジナルカンパニーではフランキー役を育成するためのトライアルレッスン、通称「フランキーキャンプ」があったくらいだ。

しかしそんな心配は杞憂で、日本版ではこれまで中川晃教と花村想太が見事に演じてきた。そして今年、高音に定評のある小林唯が加わった(New Generation チームとして大音智海も)。小林が率いるイエローチームを観劇した。

始まりはヒップホップグループが「December, 1963 (Oh, What a Night)」を歌うシーンから。フォー・シーズンズの名曲をストリート調にアレンジしたこの曲は、2000年にフランスでNO.1ヒットに。それを自慢するメンバーの一人トミー・デヴィートの語りから、物語は本筋へ入っていく。3つの階層と盆という機構を生かして、転換でも途切れることなくテンポ良く進むのが素晴らしい。

トミー・デヴィート/spi

筆者はこのトミーの語りから入るところがお気に入りだ。というのは、トミーは最もジャイアンキャラで、多額の借金を作り脱退を余儀なくされた問題児でもある。しかし、フランキーの面倒を見たりする人の良さもあり、愛おしさすら感じさせる。以前ニック・マッシを演じたspiがトミーを演じているが、これがハマり役。ドラマを良い塩梅で引っ張っていく。飯田洋輔演じるニック・マッシのちょっと引いた感も微笑ましい(ニックとはそういう立ち位置!)。

フランキー・ヴァリ/小林 唯
(写真左)ニック・マッシ/飯田洋輔、フランキー/小林

小林のフランキーは前半、何者でもない頃の実直さが好印象。癖のない真っ直ぐで爽やかな歌声が心地よく、この歌なら大物マフィアのジップ・デカルロが惚れ込むのも納得。歌声一発でのし上がっていく説得力がある。

(左から)トミー/spi、フランキー/小林、ボブ・ゴーディオ/有澤樟太郎、ニック/飯田

いくらフランキーが歌上手だからといって、一人で開花することは難しい。その点、フランキーとボブ・ゴーディオが出会い、セッションするシーンは心に残る。才能と才能が出会い、互いに惚れ込む瞬間、その輝き。実際、この後、二人の絆は永く続き、このミュージカル『ジャージー・ボーイズ』もボブ・ゴーディオのアイディアから生まれたことを考えると胸熱だ。

(写真左)ボブ/有澤、フランキー/小林

有澤樟太郎のボブ・ゴーディオはジャージーの男たちとは育ちも毛色も違うが、音楽への情熱は人一倍強く見える。出会いと才能といえば、プロデューサーのボブ・クルーも忘れてはならない。原田優一の役作りが癖強めで噴き出すこと数回。物語に活気を与える存在になっている。

フランキー、トミー、ボブ・ゴーディオ、ニックがフォー・シーズンズとしてヒットを飛ばし、4人で歌って踊って!が始まると、怒涛のショーシーンが展開。ドラマと歌が見事に融合し、すっかり没入してしまう。

フランキー
トミー
ボブ
ニック

仕事が忙しくなると、家庭は置き去りで妻と揉める、そして愛人を作るのも、スターにありがちな話。2幕ではトミーもニックもグループを去り、ボブ・ゴーディオも歌手活動を休止。フランキーが孤独を感じながらも必死にツアーを回り、仕事をする姿が切ない。

ソロになったフランキーが起死回生を狙い、ボブ・ゴーディオとボブ・クルーの協力のもと、「Can’t Take My Eyes Off You」を成功させるシーンは、涙無くしては見られない。ホーンセクションの人たちが演奏しながらフランキーの周りをぐるぐる回るのも、昔から金管楽器を入れたがっていたフランキーの想いとその実現を表していて、最高のクライマックスになっている。

話は4人が授賞式で再会するところで終わる。

その後のカーテンコールでは劇中の名曲をマッシュアップ!これが楽しくて、復習というか、名残惜しい気持ちを満たしてくれること請け合いだ。

そうそう最後に一つお伝えしておきたいこと。劇中のフォー・シーズンズはバリバリ振付がついて踊っているが、実在の彼らは大して踊っていない。『ジャージー・ボーイズ』が生まれたことで、フォー・シーズンズのイメージ自体、かなり一新されたのではないだろうか。そしてこれらの名曲たちは未来も残るだろう。これってミュージカルの魔法かも?

取材・文/三浦真紀(演劇ライター)
写真撮影/吉原朱美

Stage Information

ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』

脚本:マーシャル・ブリックマン / リック・エリス
音楽:ボブ・ゴーディオ
詞:ボブ・クルー
演出:藤田俊太郎

日程:2025年8月10日(日)〜9月30日(火)
会場:シアタークリエ(東京都千代田区有楽町)

出演:
【Team BLACK】
フランキー・ヴァリ:中川晃教
トミー・デヴィート:藤岡正明
ボブ・ゴーディオ:東啓介
ニック・マッシ:大山真志

【Team YELLOW】
フランキー・ヴァリ:小林唯
トミー・デヴィート:spi
ボブ・ゴーディオ:有澤樟太郎
ニック・マッシ:飯田洋輔

【Team GREEN】
フランキー・ヴァリ:花村想太
トミー・デヴィート:spi
ボブ・ゴーディオ:有澤樟太郎
ニック・マッシ:飯田洋輔

【New Generation Team】
フランキー・ヴァリ:大音智海
トミー・デヴィート:加藤潤一
ボブ・ゴーディオ:石川新太
ニック・マッシ:山野靖博

※その他、キャスト&スタッフは公式サイト

公式サイトはこちら

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