3度目の日本での再演が決定した韓国発ミュージカル『マタ・ハリ』の制作発表会見が6月23日、東京都内で行われました。会見には、演出の石丸さち子さんのほか、主人公のマタ・ハリをWキャストで演じる柚希礼音さんと愛希れいかさん、マタ・ハリに歪んだ愛情を抱きながらもスパイへの道へ引き込むラドゥー大佐と運命の恋人アルマンを回替わりで演じる加藤和樹さん、ラドゥー大佐役Wキャストの廣瀬友祐さん、アルマン役Wキャストの甲斐翔真さん、ヴォン・ビッシング役の神尾佑さん、アンナ役の春風ひとみさんの豪華キャストが登場。また、それぞれの役柄の個性をいかした歌唱パフォーマンスも披露しました。
エキゾチックな踊りで人々を魅了しながらも、女スパイとして世界を翻弄したマタ・ハリの数奇な一生を描く同作は、2016年の韓国初演で20万人を動員。2018年には柚希さん主演で日本初演、2021年には愛希さんをWキャストに迎え、今回は待望の再々演となります。
会見はまず、今回が同作初登場となるアルマン役、甲斐さんの「普通の人生」の歌唱パフォーマンスからスタート。パリのクラブを彷彿とさせる円形のステージに、花道を通って登場した甲斐さんは、やわらかで瑞々しい歌声の中に、マタ・ハリへの切ない愛をこめて歌い上げます。

前回の再演から続いて主演の愛希さんの「一生の時間」は、痛ましい過去を脱ぎ捨てて、アルマンへの愛を確信する名曲。愛希さんの表情豊かでドラマティックな歌唱が胸を打ちます。透き通っていながら、芯が強く、華やかな歌声は、まさに「マタ・ハリ」その人。

続いては、加藤さんの「戦いが終わっても」。マタ・ハリの愛を失い、戦争に身をささげた自分の人生を振り返るほろ苦い一曲を、加藤さんが人生の重みを感じさせる深い歌声で表現します。

ラストは、初演からマタ・ハリを演じ続ける柚希さんの「この命の最期に」。処刑場へと向かうマタ・ハリが、最期の思いを歌い上げます。しみじみとした低音部から、華やかな高音部へと、自由自在に飛翔する柚希さんの歌声は感涙もの!

4人の圧巻の歌唱が終わると、会場からは大きな拍手が鳴り響きました。
次は、質疑応答へ。それぞれが公演にかける意気込みを語ります。

柚希さんは「大好きなマタ・ハリ役を3回目をさせていただけるなんて、本当にうれしくて…。人生のすべてをかけて挑みたいと思います」と気合十分。
愛希さんは「ちえさん(柚希さん)がおっしゃったように人生をかけてすべてをかけて私も挑みたい。そんな、すべてを賭けれる役に出会えることが本当に幸せ」と噛みしめました。
初演ではラドゥー大佐とアルマンを回がわりで、再演ではラドゥーを、そして今回は再び両役を回替わりで演じる加藤さんは「またこのタイミングで二役に挑戦させていただけることを非常にうれしく思っております。いろいろ経験を積み重ねた中で、今だからこそできるラドゥーそして、アルマンを丁寧に生き抜いていきたい」と決意を語りました。
ラドゥー役Wキャストの廣瀬さんは初登板。「初演、再演、そして再々演ということでこの作品がどれだけ愛されているのかということをすごく感じます。初演からずっと出演されているキャストの皆さま、そして作品を愛しているお客様に最大限のリスペクトを持って、ワンピースとして精進していきたい」と話しました。

アルマン役Wキャストの甲斐さんも今回初登場。大好きな作品ということで「待望の出演でわくわくしています」としながら、「アルマンはマタ・ハリとの出会いや戦争を通じて、かつては嫌っていた『普通の人生』を求めるようになる。当たり前のことがどんどん当たり前ではなくなっていく今の時代にすごく重なると思います」と独自の視点で語ってくださいました。
演出の石丸さんは「皆さんが愛してくださったものは、きっちりそのまま。そしてまた新たな魅力をぐいぐいと取り入れていく。キャストの皆さんも成長されているので。どんな新しいマタ・ハリになるかを楽しみにしていただけたら」と〝新マタ・ハリ〟に向けての意気込みをみせました。韓国の初演版をもとにした今回の公演では韓国再演版で歌われた楽曲「From way up there」も追加されるそうで、ますます期待が高まります!

前回公演はコロナ禍で最後の数回が中止になったといいます。悔しい思いもありましたが、それだけに「お芝居も歌も踊りも、全部いまの自分をしっかりと込めて新しいマタ・ハリを作るつもりで挑みたい」(柚希さん)「今回は一公演もかけることなく努力したい。この5年で自分自身の引き出しがどれくらい増えたかはわからないですが、とにかくぶつかっていきたい」(愛希さん)と今回公演にかける熱い思いがひしひしと伝わってきました。

取材・文/塩塚 夢(産経新聞社)
撮影/桐原正道(産経新聞社)
Stage Information

ミュージカル『マタ・ハリ』
脚本:アイヴァン・メンチェル
作曲:フランク・ワイルドホーン
歌詞:ジャック・マーフィー
オリジナル編曲・オーケストレーション:ジェイソン・ホーランド
訳詞・翻訳・演出:石丸さち子
出演:
マタ・ハリ:柚希礼音 / 愛希れいか
ラドゥー / アルマン:加藤和樹
ラドゥー:廣瀬友祐
アルマン:甲斐翔真
ヴォン・ビッシング:神尾佑
アンナ:春風ひとみ
パンルヴェ:中山昇
ピエール:長江崚行
キャサリン:青山郁代
他
【東京公演】東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)
2025年10月1日(水)〜14日(火)
【大阪公演】 梅田芸術劇場 メインホール
2025年10月20日(月)〜26日(日)
【福岡公演】博多座
2025年11月1日(土)〜3日(月・祝)