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INTERVIEW

独占!直撃インタビュー<前編>:三度目のアンリ・デュプレ/怪物役に挑む加藤和樹が、東京公演でのリアルな感触を語る!

4月26日にデビュー19周年を迎えた加藤和樹さんに、マチ★ソワではSpecialインタビューを敢行。インタビュー<前編>では、ミュージカル『フランケンシュタイン』について、<後編>では6月11日にリリースされるニューシングル「Chocolate」についてスポットを当てて、加藤さんのホットで濃厚なお話をお届けします!

韓国発ミュージカル『フランケンシュタイン』の日本版、その再々演・東京公演が千穐楽を迎え、いよいよ5月5日から地方公演がスタートする。原作小説を大胆に脚色した衝撃のストーリー、ドラマチックで壮大な音楽、プリンシパルが一人二役を担う斬新な設定など、上演ごとに話題沸騰となる人気の舞台。今回注目すべきは、ビクター・フランケンシュタイン/ジャック役に中川晃教、小林亮太、アンリ・デュプレ/怪物役に加藤和樹、島太星の各ダブルキャストという熟練&新風の競演だ。初演、再演に続いて三度目のアンリ・デュプレ/怪物役に挑む加藤和樹が、東京公演でのリアルな感触を語った。

――『フランケンシュタイン』東京公演が千穐楽を迎えましたが、加藤さんにとっては三度目の挑戦の舞台、本番に向き合う日々の率直な思いを聞かせてください。

僕はありがたいことに、再演をやらせていただく機会が多いんですね。それで毎回課題に思うのは、いかに前回よりもブラッシュアップした、より良い作品をお届け出来るか。そこにいつもぶち当たるんです。演出自体はそれほど大きく変わっていない中で、何をブラッシュアップして見せるのかと。ただ今回はキャストが大きく入れ替わっていて、新しくビクター・フランケンシュタインとアンリ・デュプレを演じる小林亮太君、島太星君からすごくいい刺激をもらっているし、あらためてアッキーさん(中川晃教)ともディスカッションを重ねました。演出の板垣恭一さんも……実は初演、再演では僕、あんまり板垣さんに演出を受けていないんですね。「自由にやって。気になるところがあったら言うね」という感じだったので。でも今回は「こう見えたらいいよね」という共通認識を軸にアンリと怪物を作り上げていったので、また新たな『フランケンシュタイン』が出来上がったのでは、という感覚はありますね。

――再演から台詞がいい塩梅に削がれていたり、またアンリのソロナンバーが復活したりと、さらに精度を上げてきたなという印象があります。

板垣さんは今回もまたワン・ヨンボムさん(韓国オリジナルの脚本・演出)に、気になるところを「このようにしてもいいですか?」と手紙を送ったとおっしゃっていました。板垣さんも、今回の再々演にかける思いは大きかったと思いますね。

――そして三度目のタッグを組む中川晃教さんについて、公演中の今、あらためて感じていることは?

アッキーさんとは、この『フランケンシュタイン』初演が初共演だったんです。第一印象は音楽を含めて本当に“天才”、それ故にちょっと近寄り難い、孤高な存在というイメージで、ビクターにはピッタリでしたね。ただ、この再々演までのあいだにお仕事でも、プライベートでもすごく密に過ごさせていただき、中川晃教という人をさらに知ることができました。

一番に感じるのは、この人は本当に努力の天才だな!ということ。一つ一つのことに疑問を持って、それを一つ一つ、クリアしていって。納得がいかなければ何度でもトライする、その姿勢はもうビクターそのもの。今回も、「あらためてこのシーンってこうだよね」といった再確認の作業を、二人で突き詰めていきました。努力を重ねて生まれたビクター、でもやっぱり人にはちょっと理解出来ない、ついていけない次元にいるというのは相変わらずで。だからこそ愛おしくなるし、自分が支えてあげなきゃと思わされる。初演の時は、自分がついていかなきゃ!というイメージでしたけど、今回はともに歩んでいく印象が強いです。なので、関係値がちょっと変わって見えているのかなとも思いますね。

撮影/吉原朱美

――プログラムの座談会(※)をした時に、中川さんが「北極について加藤さんとすごく話し合った」とおっしゃっていましたよね。再々演にしてラストシーンの北極にさらに疑問を抱く姿勢に驚きました。

そうなんですよ。それについては僕個人としては、昨年韓国版の全キャストの舞台を観たことが結構大きくて。それで自分なりに解釈して、いろんなパターンを稽古場で試して、最終的に本番を迎えてようやく完成したという感じです。

――新ビクターの小林亮太さんとの本番も経験され、どうお感じになりましたか?

彼とは以前『キングアーサー』というミュージカルで共演した時に、ものすごく芝居勘のいい子だな、熱い男だな!と思ったんですね。若いのに、芝居に対する向き合い方は20代とは思えなくて、ちょっと達観しているところがある。感覚としては柿澤勇人君のビクターに似ている部分があるかな……と思いつつ、やはりそれとも違う、彼なりの繊細な、ちょっと狂気じみた部分もあって、アッキーさんとは違う熱量をすごく感じました。年下だから自分が彼を引っ張ってあげなきゃ、という意識が稽古の序盤にはあったんですが、やればやるほど、その差がなくなって来て。二人で一つのものに向かっていく、その感覚は彼のビクターにもすごく感じます。彼との芝居ではそんなに「こうしよう、ああしよう」という話し合いは実はしていなくて、本当に出たとこ勝負で、お互いに感じあったものを受け取って芝居するという感覚でやっているので、そこが面白いですよね。アッキーさんと対極というか。

――中川さんは、きちっと詰めて、進めていくほうなんですね。

そうですね。きちっと話し合うんですけど、出て来るものがオヤオヤ!?ってことも(笑)。何をして来るのか予想外なのはアッキーさんのほうですね。その日の気分で結構動きも毎回違ってきますし。そこがやっていて面白い部分でもありますね。

――そういうお話を伺うと、やはり一度きりではもったいない、複数回観ないと!と思っちゃいますね。

自分でやっていても思いますけど、本当に毎回、違うものになるんですよ。昨日の公演でも、え、なぜここでこういう感情になるんだろう!?とか。予期しない自分の芝居になったりすることが、この作品は本当に多いですね。

――そして前述の座談会の時、加藤さんが島太星さんのシャツの襟元を直してあげたり、まるでお母さんのようにお世話している姿も印象的でした(笑)。可愛くて仕方がない、みたいに見えましたが……。

フッフッフ、ほっとけない、というのが一番ありますね。彼がやりたいお芝居、歌いたい方向性といったものはもちろんあるので、自分がそれを導くのは違うなと思っています。「前はこうだった」というのは新しく入る人にとっては結構ストレスで、それは自分も経験しているからわかるんですね。彼らにとっては初めてだから、前回をなぞる必要はない。でも「演出的にここはこうしたい」という板垣さんの意図もあるから、そこは経験者として導いてあげるけど、その中で彼がどう感じ、どう表現したいかを大事にしてほしいなと。小林君と島君の本番を観て、やっぱり若さあふれる、新鮮なビクターとアンリ、ジャックと怪物でしたね。新たな時代の『フランケンシュタイン』が出来上がったなと感じました。

――先ほどのお話のように加藤さんは昨年、韓国の『フランケンシュタイン』の全キャストの舞台をご覧になりましたが、それはこの再々演に向けて策を練るために?

本音を言うと、ただのファンとして全部観たいという思いがあって(笑)。とくに昨年の韓国版10周年記念公演はビクターもアンリもクアドラプルキャストだったので、4人それぞれのお芝居のプランがあるわけです。ワン・ヨンボムさんは、皆一緒には稽古をしない、それぞれ個別に作っていく演出方法なので、役者さんたちも他の人がどういう芝居をしているのか知らないんですって。

昨年7月、韓国版『フランケンシュタイン』10周年公演でアンリ/怪物役に初挑戦したイ・へジュンさんの舞台観劇後に楽屋でパチリ。へジュンさんとの対談記事はコチラ

それぞれのアンリ、怪物が役者によってまったく解釈が違っていて、こういう演じ方もあるのか!と参考になりましたし、また、その境地にはちょっと自分は辿り着けないな〜と思うところもありました。親交のあるパク・ウンテさん(『フランケンシュタイン』の初演から昨年の公演まで5回連続、アンリ/怪物役として出演)と公演前にお食事をしながらお話しする機会があったので、そこでいろいろ聞きたいことを聞いたりして、それも今回の芝居の参考にさせていただいたり。自分の中の引き出しがすごく増えた、とてもいい時間でした。

――そのような韓国とのご縁で、5月31日に開催されるショートショート フィルムフェスティバル&アジア 2025『JAPAN-KOREA Friendly Concert』にも出演されます。同じく出演のオ・マンソクさん(ミュージカル『ラ・マンチャの男』、ドラマ『愛の不時着』他)が、加藤さんを推薦されたそうですね。

はい、このコンサートに出演するユ・ジュンサンさん(『フランケンシュタイン』、『ジャック・ザ・リッパー』他)とオ・マンソクさんがもともと親交があって、それで『フランケンシュタイン』という作品も知っていた中でそのような流れに……といった話を伺いました。オ・マンソクさん、ご自身も公演中なのに先日『フランケンシュタイン』を観に来てくださったんですよ! フットワーク軽い!(笑)ありがたいことです。

――嬉しいですね。今回は韓国からのお客様も非常に多いと伺っています。韓国のファンの方々の反応も受け止めていらっしゃいますか?

そうですね、お手紙とか、あとはSNSで感想をいただいたり。読ませていただくと、すごくコアなファンの方が多いなという印象です。この作品の面白いところは、いろんな考察が出来るんですね。このシーンのあの台詞は…、あの表情は……と、お客さん同士で観劇後に考察し合うことが出来る。それは他の作品にはあまりないことだなと思いますね。

――SNSで見かける感想では、加藤さんの安定した、迫力ある歌声の評価も高まっています。歌唱についてはご自身でもステップアップを実感されていますか?

感じていますね。ようやくこの作品でも、自分のやりたい表現が歌で出来るようになったと思います。初演の時はとにかく毎公演が怖かった。キーも高いし、声の体力が最後まで持つかな〜と不安に思いながら体当たりでやっていって、毎公演、抜け殻になっていたんですね(笑)。再演ではそれが少しはクリアになって、感情を乗せた歌での表現も初演よりは手応えはあったけど、やっぱり自分の中で、もっとやれる、やれたはずという感覚はどうしても拭えなかったんです。それが今回の再々演で、ようやく自分の思い描いていた表現が出来るようになってきたなと。お芝居のプランも含めて、今回が一番しっくりきていると感じています。

――あらためて、加藤さんにとって『フランケンシュタイン』はどのような作品でしょうか。

自分としては、アッキーさんとの出会いの作品というのもありますし、この作品をきっかけに韓国の役者さんたちやクリエイターの方たちとの交流も出来ました。多方面でいろんなものに繋げてくれた、すごく大切な作品ですね。

――東京公演の後も愛知、茨城、兵庫と公演は続きます。大切な作品に挑む姿を出来るだけ多くの人に観ていただきたいですね。

韓国では昨年、この『フランケンシュタイン』が10周年を迎えました。日本でももっともっとやり続けられる作品だと思うんですよね。そういう意味では今回、小林亮太君と島太星君を含めて新しく加わったキャストたちに、いいバトンが渡せたのではないかなと思っています。とはいえ、まだまだ自分もやれる限りはやりたいなと思う作品です。今回初めてご覧になる方には結構衝撃的な作品だと思いますが、“沼る”ミュージカルと呼ばれるように、観れば観るほど他の組み合わせも観たい、違う日の公演も観てみたいと思わせる、不思議な魅力がある作品なんですね。劇場が変わればまた観え方も変わってくると思います。愛知、そして今回は新たに水戸や神戸にも行けるので我々も楽しみにしていますし、たくさんの方に観に来ていただけたら嬉しいです。

▶加藤和樹Specialインタビュー<後編>は、5月下旬頃に公開予定!お楽しみに♪

※編集部注釈※
ミュージカル『フランケンシュタイン』(2025年度)のプログラムに掲載されている「座談会(中川さん×加藤さん×小林さん×島さん)」を上野紀子さんが執筆。
 

取材・文/上野紀子(演劇ライター)
舞台写真・撮影/吉原朱美


加藤和樹(KATO KAZUKI)

1984年10月7日生まれ。2005年ミュージカル『テニスの王子様』で脚光を浴びる。音楽活動を精力的に行い、2009年韓国、台湾、中国でCDデビューを果たす。俳優としてはドラマ・映画・舞台のほか、ミュージカルや声優としても活躍している。韓国ミュージカルの日本版『マタ・ハリ』や『フランケンシュタイン』『ジャック・ザ・リッパ―』に出演するなど、韓国ミュージカルに縁が深い。第46回(2020年度)菊田一夫演劇賞受賞。
2025年10月―11月にミュージカル『マタ・ハリ』で、4年ぶりの再々演で、ラドゥー役とアルマン役の2役を初演ぶりに演じることが発表された。
6月11日にニューシングル「Chocolate」がリリースされ、6月19日仙台を皮切りに全国7か所で「Kazuki Kato Live “GIG” Tour 2025 ~STILL GO !~」が行われる。

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ミュージカル『フランケンシュタイン』

 

音楽:ブランドン・リー
脚本/歌詞:ワン・ヨンボム
潤色/演出:板垣恭一
訳詞:森雪之丞
音楽監督:島 健
音楽監督/歌唱指導:福井小百合
オリジナルプロダクション:ワン・ヨンボムプロダクション
製作:東宝/ホリプロ

出演:ビクター・フランケンシュタイン/ジャック:中川晃教/小林亮太(ダブルキャスト)
アンリ・デュプレ/怪物:加藤和樹/島太星(ダブルキャスト)
ジュリア/カトリーヌ:花乃まりあ
ルンゲ/イゴール:鈴木壮麻
ステファン/フェルナンド:松村雄基
エレン/エヴァ:朝夏まなと 

【東京】2025年 4月10日(木)~4月30日(水) 東京建物 Brillia HALL
【愛知】2025年 5月5日(月)~5月6日(火) 愛知県芸術劇場 大ホール  
【茨城】2025年 5月10日(土)~5月11日(日) 水戸市民会館 グロービスホール
【兵庫】2025年 5月17日(土)~5月21日(水) 神戸国際会館 こくさいホール

公演公式サイトはこちら

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