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【映画】#6『劇映画 孤独のグルメ』▷独りで生きることは孤独ではない。

雑貨の輸入を個人で手掛ける井之頭五郎が取引の帰り道、「腹が…減った!」と独りで飛び込んだ店でおいしい料理に舌鼓を打つ。それだけのシンプルな内容が逆に人気を呼び、シリーズが12年も続くテレビ東京系ドラマがついに映画になった。

主演俳優の松重豊にとって映画化は、シリーズの今後を占う試金石の意味もあり、自らが監督、共同脚本、キャスティングなどを買って出た。「思ったような成績を残せなかったら、これを限りに五郎の役を降りる」と意気込むが、映画自体は、すばらしい出来栄えといっていい。

今回、五郎は仏パリに、かつての恋人の娘(杏)を訪ね、彼女の祖父(塩見三省)からあるスープを探すよう頼まれる。パリを振り出しに五島列島、韓国、そして東京と五郎のグルメな冒険が始まる。

©2025「劇映画 孤独のグルメ」製作委員会

松重は映画で、ドラマとはまた違った世界観を構築したいと考えた。五郎は行く先々で、それぞれ事情を抱えた人々と出会う。そして、独りではなく、誰かに見守られて食事をする。ドラマシリーズとは大きく違う点だろう。

あるときはなぞの島で暮らす女性(内田有紀)たちの視線を浴びながら。

©2025「劇映画 孤独のグルメ」製作委員会

また、あるときは韓国の役人(ユ・ジェミョン)ににらまれながら。
ジェミョンは、日本でも大ヒットした韓国ドラマ「梨泰院クラス」で憎らしい悪役を演じた俳優だが、今回は愛すべきキャラクターとして登場し、五郎とユーモラスに絡む。

©2025「劇映画 孤独のグルメ」製作委員会

このへんは、アジアでの公開も視野に入れた松重のアイデアだろう。
そして五郎は、東京のとあるラーメン店のスープへとたどり着く。ここでも五郎は、店主(オダギリ・ジョー)が作るラーメンを常連客の青年(磯村勇斗)と一緒にたぐる。

©2025「劇映画 孤独のグルメ」製作委員会

松重監督は、五郎の〝孤独ではないグルメ〟を、手に汗握る場面も交え、にぎやかに、ユーモラスに描き、映画ならではのスケール感で観客を十二分に楽しませる。
そして、パリから始まる大きな「円環」も最後は小さな「点」に返る。その点とはすなわち、ドラマ同様おいしい食事を求め東京の路地を独りさまよう五郎の「背中」だ。

©2025「劇映画 孤独のグルメ」製作委員会

映画が大団円を迎えた後、松重は、歩み去っていく五郎の背中を、4分半にわたるワンカットで見せるのだ。もしかしたら、ここが、この映画のクライマックスといっていい。

「五郎は自覚的に孤独な人ではない。独りでいることをネガティブには受け止めていない」と松重監督。
独りで生きることは孤独ではない。そのことを力強く描いたのが、この映画なのかもしれない。

「劇映画 孤独のグルメ」は、全国の映画館で上映中。1時間50分。バリアフリー上映対応。
 

文/石井 健(産経新聞社)

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Information

『劇映画 孤独のグルメ』

2025年1月10日(金)より
全国公開

原作:『孤独のグルメ』 作/久住昌之・画/谷口ジロー(週刊SPA!)
監督:松重 豊
脚本:松重 豊 田口佳宏(「孤独のグルメ」シリーズ)
出演:松重 豊
   内田有紀 磯村勇斗 村田雄浩 ユ・ジェミョン(特別出演) 塩見三省 / 杏 オダギリジョー
制作:共同テレビジョン FILM
主題歌:ザ・クロマニヨンズ「空腹と俺」

©2025「劇映画 孤独のグルメ」製作委員会

公式サイトはこちら

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